チーム1「AIによる受注金額予測。過去5年のデータの品目別予測で誤差を検証」
チーム1が発表したAI「フォーキャストマスター(ForecactMaster)『予測の達人』」は、受注金額の予測を目的としたツールです。日常業務で、受注金額から損益を出しているメンバーの「この数年、業務内容に変化がない」という一言から、今回の企画が発案されました。受注金額予測が立てられることにより、経営方針の決定や投資計画の立案、人材投資計画、適切な在庫管理によるキャッシュフロー改善ができるといった効果を目指しました。
「フォーキャストマスター(ForecactMaster)『予測の達人』」には、高度な予測分析を自動的に実行できる「Prediction One」(提供:ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)を使用。2016〜2021年度の受注・出荷実績データから、2022年度の受注金額の予測データを出し、実際の数値とどれだけ差異があるかを調査しました。
また、チーム1は「受注金額」「受注数」「出荷数」「平均株価」などの変数を組み合わせて、予測値の精度がどのように変化するかも検証。今後用いるデータや有識者の意見も参照することで、属人的な予測作業による機会損失を解消できるとしました。
チーム2「AI自動電話応対で、業務効率化と顧客満足度向上」
チーム2が発表した企画は、「NTTドコモAI電話サービス」(提供:NTTコミュニケーションズ株式会社)を用いた「AI電話自動応対」です。チーム2は、社内の共通業務である電話応対に多くの時間が割かれていることに着目しました。
そこでAIツールを用いて、お客様からの電話に応対し、内容を理解して担当者への取次する他、会話内容を文字起こしして担当者に伝達するという方法を考えました。これにより、従業員の業務効率化につながるだけでなく、AIの電話応対で従業員―顧客間のコミュニケーションがスムーズになり、顧客満足度向上も期待できます。
具体的なシステム全体像として、顧客からの電話に対して、AIが音声で回答しつつ、内容識別・音声文字起こしをして各担当者に転送。電話履歴を記録する他、得意先情報などと紐づけてマーケティング施策につなげることができます。
AIを導入することで起こりうる、回答内容や転送先を誤るなどのリスクに対しても、対応策を提示。「担当者の転送の自動化」「顧客からの問い合わせへの自動回答」など、各種目標に対する効果測定の方法や成功基準などもまとめられました。
チーム3「高機能チャットボットで工数削減+技術伝承」
チーム3は、問い合わせに対する回答の時間短縮・精度向上・工数短縮を目的とした「高機能チャットボット」についての企画を発表しました。入江工研の技術グループのもとには、日々多くの問い合わせが寄せられています。とある従業員の業務実態を調べたところ、業務時間全体の約3割が、問い合わせ対応に費やされていました。
チーム3はこうした現状を改善するため、チャットボットの導入による業務効率化を提案。
ツールには、多機能でサポート体制も厚いAIアシスタント チャットボット「ASBOT」(提供:アルプス システム インテグレーション株式会社)を選択しました。
チャットボットを用いることで、一貫性のある回答を顧客に提供し、技術者の回答のばらつきをなくすことができます。チャットボットの利用は、回答率・正答率が低く、管理が大変という懸念点もありますが、「ASBOT」には集計分析機能が備わっています。これにより、チャットボットが解決できなかった問い合わせを把握し、修正・メンテナンスを重ねることで、正答率の高いチャットボットが実現できます。
またチーム3は、チャットボットの学習のために社内の知見を集約させることで、熟練者の技術を社内に浸透・伝承にも貢献できると考えました。それにより、高機能チャットボットが入江工研にとっての「辞書」「教育者」「熟練者」「窓口」といった役割を併せ持つことができると説明しました。
チーム4「3Dモデル、2D図面から製品の見積もり価格を計算」
チーム4が考えた「見積AI:これイクラ?」は、見積書の精度向上と見積時間の短縮による利益確保とコストダウンを目的としたAIです。入江工研では、顧客から依頼された製品仕様を基に3Dモデルと2D図面を作成しています。製品の材料や加工費を計算したり、類似品の実績から原価を予測し、見積書を作成するというのが、現在の業務の流れです。
「見積AI:これイクラ?」は、こうした作業をAIが代替。部品の形状を識別し、必要な加工や価格を自動計算することで、見積書に反映させます。それにより、見積書作成の時間やコストを削減でき、見積書の精度を向上させることで利益確保にもつながると、チーム4は考えました。
このAIを実現するために使用するツールは、加工見積システム 「ESTIMATE for MACHINING」(提供:倉敷機械株式会社)です。AIに過去の実績図面をインプットし、形状の識別、必要な加工の予測、価格予測、見積書を作成させます。その後、実際の原価をインプットし、次回以降の見積作成の補正を行います。それにより、スピーディかつ均一的な精度の見積書作成を、再現性をもって作成できるようになるとチーム4は説明しました。
チーム5「業務の発生時期・所要時間を予測して業務計画を最適化」
チーム5が発表したAI「タスクマイスター」は、設計作業者に発生する業務を予測し、作業時間を予測することを目的としています。設計作業者は、製品の設計や図面作成、見積書作成といった業務を担当していますが、それらの業務が依頼される件数は、日によって大きなばらつきがあります。
このばらつきを予測できるようにすることで、業務時間の平準化が可能となり、残業時間の削減が可能です。それだけでなく、空いた時間で若手の育成に取り組みやすくなったり、作業依頼を出しやすい時期が営業チームにも分かりやすくなったりといった、効果も期待できます。
「タスクマイスター」には、チーム1と同じAIツール「Prediction One」が用いられました。AIを実装するに当たっては、データの収集、AIモデルの開発、システム導入を実施。予想されるリスクや課題に対しても改善策を講じ、「1日の作業時間について、実行と予測の誤差10%以下」を目標にプロジェクトを進めたいと、チーム5は発表しました。
チーム6「同時通訳AIでリアルタイムの相互理解を促進」
チーム6は、「オンライン会議における同時通訳AI」の企画について発表しました。現在、入江工研では海外の企業や関係者との打ち合わせの機会が増えています。海外とのオンライン遠隔会議では、「会議の3〜4割が通訳の時間」「会話内容を把握しづらい」「通訳者のアサインといった負担が重い」といった課題を抱えていました。
同時通訳AIを用いることで、会議出席者の相互理解を深めることができ、通訳時間の削減で会議時間の短縮を図ることができます。また、同時通訳の記録を用いることで、議事録の作成もスピーディに行えることが期待できます。同時通訳AIは学習済みAIを用いるため、データ収集の時間を必要としないのもメリットの1つです。
チーム6は、お試し機能を用いた同時通訳AIのデモンストレーションを実施。合計7種類の同時通訳AIをリストアップし、それぞれのサービス内容と機能、費用を比較しつつ、AI使用のリスク(翻訳精度、費用、セキュリティ)と対策を検討しました。また、実際に同時通訳AIを使用した場合の費用と、人件費等の削減効果も試算・発表しました。
企画を創るスキルが身についたことを実感
企画コンテストの閉会式では、各発表に対する講評が行われました。
・執行役員 西岡勝志氏
素晴らしい、ずば抜けている発表ばかりだったという印象を受けました。今日発表いただいた方は、AI活用を広めていく立役者として、さらに頑張っていただけたらと思います。
・執行役員 岡田みゆき氏
私も含め、ここにいる皆さんにとって、AI=難しいというイメージがあったと思います。AI活用で二の足を踏んでいましたが、「グロースX AI・DX人材」のおかげで、「自分たちにもAIを活用できる」という可能性を感じることができました。
今日、皆さんは自分たちの業務に適したAIツールを選び、企画を提案してくださいました。それを見て、半年間でAIのスキルがすごく向上したと実感しました。すごく嬉しい気持ちでいっぱいです。
・代表取締役社長 入江則裕氏
今回の企画を一言で総括すると、奇跡が起きたと感じています。「グロースX AI・DX人材」を導入しようと決断して、本当によかったです。特に、受講した皆さんが楽しみながら学んでいて、それが素晴らしいことだと思いました。
今回の成果は、どんどん次のステップにつなげていきたいと考えています。グロースXの皆さんにも、これからのサポートをぜひよろしくお願いいたします。