多種多様な課題への最適な提案にマーケティング知識が必要
―― グロースXの受講を検討するに至った問題意識についてお聞かせください。
鈴木さん
最初に、弊社のビジネスモデルの変遷や組織状態について、お話しさせてください。ビーワークスは200名規模の総合デザイン会社です。2001年の創業当初は紙媒体のDTPをメインの事業としていたのですが、時代の変化とクライアントのニーズに対応しながら提供サービスを拡大してきました。現在は、出版社向けに出版物や広告宣伝ツールの制作などを行う出版サービス事業部、「なめこ栽培キット」シリーズをはじめとする自社ゲーム開発を行なうゲーム事業部、そしてマーケティングデザイン事業部の3つの事業部から成り立っています。
私と三浦が所属しているマーケティングデザイン事業部では、ブランディング・UI/UX設計からWeb等のアウトプットの制作まで、工程・媒体を問わないデザインを通してクライアントの課題解決をサポートしています。ここ数年は、決まった仕様に基づいた制作案件に留まらず、Webサービスやアプリケーションの要件定義支援、制作物の形態を問わないブランディングや発信するメッセージング、社員向けのインナーブランディングといったお仕事の割合も増えてきました。
マーケティングデザイン事業部は営業、ディレクター、デザイナー、エンジニア等の各職種が所属している部門から成り立っており、私と三浦は営業部のマネジャーをしています。
営業部の人員は10名ほどおり、創業以来のベテランから新卒入社1年目のメンバーまで、年次もキャリアも多様です。これまでは担当するお客様の規模感や課題に対するアプローチ方法や提案方法に統一したものがなく、千差万別と言いますか、メンバーごとに属人化する傾向にありました。
もっとも、私どもの会社は一度お付き合いが始まると、長くご一緒させていただく傾向があります。創業して24年ほどの会社ですが、創業からのお付き合いになるお客様もいらっしゃいます。クライアントに最適なチームを組成のうえ密にコミュニケーションを取り、顧客のニーズに応じて最適化されたサービスを提供していることが、顧客満足度が高い理由のひとつかと考えています。
クライアントごとに提供しているコアとなるサービスは大規模サイト運用、アプリのUI/UX設計、企業ブランディングなどといった形で異なり、チームの得意分野も異なります。ただ、より多様化・複雑化するクライアントからのニーズに応えていくためには、各チームが提供し慣れた分野でのサービス提供に留まらず、ビジネス課題をある程度チャネルごとに俯瞰してとらえた上で、より最適な提案やサービスのチューニングを行っていく必要があると感じていました。
ようやくご質問への回答になりますが、多種多様になっているお客様の課題に対して、最適な提案をしたいと考えた時に、マーケティングの知識を体系的に身につけていくことが必要だと考えたのです。
―― なぜグロースXだったのでしょうか。
鈴木さん
正直にお話をすると、他社は検討しませんでした。色々なところでグロースXさんの社名やサービスについての話は聞いていたので、いつか弊社でマーケティングを学ぶことがあればグロースXさんでと考えていました。
個々がそれぞれ学ぶだけではなく、月に一度振り返りのミーティングがあるらしいとも聞いていて、そういう場があれば、受講者のケアや目線合わせができるかなと思っていました。担当の倉橋さんには相当お世話になりましたが、このミーティングの場は本当にありがたかったですね。
―― 部門を横断した受講者で学びを開始されたのはなぜでしょうか。
鈴木さん
営業部だけですと10数名なので、せっかくならディレクター・プランナーなど制作部門に所属するメンバーも一緒に学ぶことができれば、より効果的なのではないかと考えました。そこで制作部のマネジャーに声をかけたところ、グロースXさんの存在を知っていて「やろう」ということになりました。営業部だけでなく制作部も一緒に学べたことは、職種を問わず共通言語を持って顧客課題に相対することができるという意味でも非常に良かったと思います。
グロースXでは1人ひとりが自分の言葉で語れていた
―― おふたりは受講者でもあったそうですね。印象に残っている課題やディスカッションテーマはありますか?
三浦さん
営業部としては、クライアントを大きく3つのタイプに分けて、それぞれにどんなニーズがあり、自分たちとしてはどんな価値を発揮できるのかを言語化できたことが大きかったです。例えば、「大手のSIerさんであれば開発が得意である一方、UIデザインやフロント実装はできなかったり苦手だったりするケースも多い。自分たちはその流れの全体を理解した上で、先方が苦手なところを得意としている」とか。実際はもっと細かいです。様々な顧客との取引開始の傾向からなんとなくはみんなが感じていたことですが、言語化することで微細なブレがなくなり、議論のスピードが上がりました。
鈴木さん
マネジャー視点かもしれませんが、グロースXアプリの各章末のアンケートで、若手からベテランなどさまざまなメンバーが混在していても、1人ひとりが自分の言葉で語れていたことが大きな収穫でした。綺麗な言葉とか先輩に合わせた言葉ではない、メンバー自身の言葉で「こういうことを考えているのか」と知ることができたことは、嬉しくもありました。
コロナもありましたし、飲み会で語るという時代でもなくなって、本音で話すような場が少なくなったかもしれない中で、それぞれがそれぞれの言葉で書いている。対面のコミュニケーションも当然重要ですが、どうしても発言量が多いメンバーは固定化されてしまいます。アンケートでは平等にというか、言いたいことを言いたいだけ書けていた印象です。
―― 1人ひとりが思ったことを発信できる場になった秘訣はありますか?
三浦さん
新卒・中途を問わず在籍年数が長い人が多いからなのか、単純に人のよいメンバーが多いからなのか、もともと仲がいいというのは前提としてあるかなぁと思います。
鈴木さん
100%ではないとしても、心理的安全性が高い場だと思います。そのうえで、グロースXの章末アンケートではとにかく色んな意見が出ましたし、その中にはなかなか尖った表現や率直な吐露もありました。これは、仲のよさだけではなかなか実現できないことで、グロースXさんが関わってくださった大きな価値だと考えています。
”知る人ぞ知る会社”からの脱却、ブランディングの挑戦
―― 学びを経て、目に見えて生まれた変化があれば教えてください。
鈴木さん
グロースXを導入するタイミングで、三浦くんが事業部のブランディングに対して課題感を持って、ちょうど取り組み始めたところだったんです。ブランディングや広報活動というのは、必要・重要だとは思いながらも後回しになりがちなことだと思います。ただ、それらの意義についても学ぶことができて、全員が「意味のあること」と心底理解したことは良かったですね。
三浦さん
ビーワークスは、受託制作事業においては広報活動をあまりすることなく、ここまで成長してきました。”名より実を取る会社”が良いと思っている人が多かったのかもしれませんが、つまり、広報活動については何か取り組めば全てプラスになるという状況でした。
2024年には、お話できるような事例がすぐできました。73社がエントリーした、第12回Webグランプリ(主催:公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構)の企業グランプリ部門で、ビーワークスが制作を担当した2つのWebサイト(採用情報サイト・コーポレートサイト)が合計3賞を受賞するという、光栄な出来事がありました。そういうアワードにも今までエントリーしてこなかったので、実際に表彰されたことで、目に見えない手応えだけではなく、「私たちは業界においても評価されうるんだ」というみんなの自信につながったのではないかと思います。
―― 三浦さんが広報の必要性を感じていた理由を聞かせてください。
三浦さん
小さくお取引が始まって、お付き合いをする中でよさを知っていただいて、お取引が拡大していくパターンが、今までのビーワークスの基本でした。ですが、そのパターンに囚われすぎず、お付き合いする前から「ここにお願いしてみたい」「すごいな」と思ってもらえたらいいのに、と考えるようになりました。
私は新卒で入社して12年目なのですが、入社当時はテレアポやメルアポをして、まず会社紹介にうかがって、バナーやランディングページを受注して、といった営業スタイルでした。ですが今は小規模な制作案件を経ずに、取引初期から難易度が高い課題に一緒に挑戦するようなご相談が増えています。それなのに、最初はやはりテレアポからというのも、違うような気がしていました。
グロースXでデジタルマーケティングを体系的に学んだことで、周囲のメンバーも、広報ブランディングの必要性を感じてくれて、より活動しやすくなったと感じています。デジタルマーケティングを活用する方法の重要性・必要性と、その知識が共通で持てたことは、かなり大きかったです。
振り返りのミーティングで実施したワークショップ例
グロースXから派生した3つの班活動が実を結ぶ
―― 共通知識を持った上で、具体的な活動にもつながったとお聞きしました。
三浦さん
デジタルマーケティング班・リアル接点班・広報班という3つの班に営業部のメンバーを分けて、通常業務と班活動を8:2くらいのバランスでやってみようと決めて、1年ほどになります。
鈴木さん
広報班のリーダーが三浦くんで、他の2班にもそれぞれリーダーがいます。
三浦さん
例えばデジタルマーケティング班であれば、弊社のコーポレートサイトにホワイトペーパーを作って載せてみたり、ランディングページのキーワードを変えてみたり、サイトの訪問者のアクセス解析したデータを基に分析してみたり。リアル接点班は様々な展示会に足を運んで、将来的にクライアントになりうる各社の広報の方と接点を持つようにしています。
鈴木さん
広報班は、先ほど三浦くんがお話しましたようにアワードへの応募や、クライアントワークのサイト掲載、イベント登壇、番組出演など、意識的に露出するようになりました。本業と8:2での活動ではありますが、この活動が結局本業にも還ってくるので。
三浦さん
営業部の中でも明らかにコミュニケーションの量が増えていると感じます。もともと雑談は盛んで仲もよかったのですが、営業という職種の特性もあってか、これまではメンター指導をのぞいて先輩・後輩がひとつのプロジェクトにおいて協働する機会はそこまで多くなく、個人プレー気味なところもありました。ただ、共通言語MTGや3つの班活動を通してコミュニケーション量が増えたことにより、営業部内で業務でも協力しあう風土が生まれました。ベテラン・若手を問わず互いにナレッジを共有し合ったり、提案内容についてのレビューを行ったりといったことが増えました。コミュニケーションの量だけではなく質も上がったように思います。
―― 通常業務のチーム編成とは異なるチーム編成で、実業にも還元されるような活動をされているとのこと。事業成長として変化はありましたか?
鈴木さん
今期は特に大きな成果が出ています。マーケティングデザイン事業部のお取引額上位5社からの売上が1.2倍増になったという定量的な効果も出ています。今回は、その中の1社を担当するチームについてお話ができればと思います。
営業も制作もグロースXを受講したことに後押しされ、顧客に更に深く広くアプローチするために月一回のペースで戦略会議を開くようになりました。営業が「まだお取引のない○○︎事業部にアプローチしたい」と議題に上げると、制作ディレクターが「◯○事業部にはこのような課題がありそうだから、このようなやり方がいいんじゃないか」と意見しながら会議を進めた結果、前期よりも売上規模は大きく成長しました。
営業側からすれば、クライアントと関係を築くことや、クライアントのニーズや予算を適切に把握することは、当たり前だと思います。ただ制作側、特に制作側の若手メンバーからすると、営業が受注してきた仕事を請け負うという感覚もあったと思うのです。ただ、この月1回の戦略会議で制作側から「こういうアプローチはどうか」「○○事業部にアプローチしたいなら、その前に△△事業部に話をしてみるのはどうか」といった意見が出ているのは、営業の動きを、制作ディレクターが解像度高く理解できているからなのだと思います。
三浦さん
広報活動が実を結んだケースもあります。最初は、コンペに参加してもらえないかというような打診だったところが、第12回Webグランプリの受賞実績を知ってくださったことにより、やはりコンペなしで発注していただける機会がありました。目に見える事例があることで、社内を説得しやすかったのではないかと思いました。
この一件は私自身もとても嬉しかったですし、こういった事例が一人ひとりの受講者に生まれつつあると思うと、これもまた嬉しい。自分たちで考えて動いた結果が、実際の売上数字につながっている事実は大きな励みになります。私自身は、ビーワークスがもっと知られてもっと頼られる会社になるように尽力したいと考えています。
―― 今回は貴重なお話をありがとうございました!