コロナ禍で見えたメンバーの危機感から、マーケティングの教育機会を導入
ーまずは貴社のサービスについて教えてください。
山崎さん
アパレルを中心としたセレクトショップを運営しています。
ブランドとしては「UNITED ARROWS」「BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS」「UNITED ARROWS green label relaxing」を始め、マーケットやチャネルに合わせて約30のブランドを展開しています。
社員は全体で約3,600名、お客様とリアルに関わる店舗に所属しているメンバーが全体の約7割という組織構造です。
ーマーケティング研修を導入しようと思われた背景を教えて下さい。
山崎さん
人材育成や研修について、当社では従前から内容を充実させてきましたが、この2~3年は特に注力しています。その背景をご説明しますね。
コロナ禍に入って数ヶ月ほど店舗営業ができない状況になって、アパレル業界はどうなるのか、自分たちの会社はどうなるのかと将来を不安に感じる社員が増えた時期がありました。その不安の影響か、社員のエンゲージメントが下がってしまい、さらに退職者が相次ぎました。
ユナイテッドアローズでは社員のエンゲージメントを毎年計測していまして、「eNPS」という指標を活用しています。そして、eNPS指標との関連性の強い課題を抽出し、優先順位をつけて対策を講じています。
コロナ禍を経た2022年の計測では、教育機会を求める声が一番多くの指標を集めていたんです。二番目は経営方針でした。そこで、グロースXをはじめとした教育機会の提供に、より注力するようになりました。
「教育機会を求める」と回答したメンバーの声に耳を傾けると、業界や会社が大変な状況の中、自分がなんとかしないといけない、何か変革の手伝いをしたい、という強く熱い想いが聞こえてきたんです。
教育機会を求める声の中でも、最も需要が高かったのは「マーケティング」でした。今は店長をやっているけどその前後のサプライチェーンを勉強したいとか、お客様とのコミュニケーションの一つの施策であるデジタルマーケティングを勉強したい、という声が多かったですね。店舗でお客様に接する業務をしている中で、その周辺領域として注目が集まりやすかったのかもしれません。
ー「マーケティング」をもっと知りたい、仕事に活かしたい、という熱い想いを持たれていたのですね。
山崎さん
リアル店舗や、ECサイト・SNSを起点にしたオンラインの発信、これらが密接に結びついた環境になった今、マーケティングの素地を知っておくことは、とても重要なファクターだと考えています。
お客様が店舗にお見えになる際、すでにECサイトで商品を比較検討されてから来店されることも多いです。そして、店舗でご購入いただくこともあれば、その場では購入されなくても、また改めてECサイトで検索されてご購入いただくこともあります。
だからこそ、店舗とECサイトでのメッセージの統一性はもちろん、それぞれに関わるメンバーが周辺領域をしっかりと理解しておくことが必要です。これを効率的に学習できるのがマーケティングなのだと思います。
ーそうした背景もあって、グロースXを見つけて下さったのですね。
山崎さん
グロースXの受講メンバーは立候補制で募ったのですが、非常に多くのメンバーが手を挙げてくれました。店長や店舗スタッフまで、幅広いメンバーがマーケティングの教育を受けたい、と志望してくれたんです。
志望者には志望動機を提出してもらいましたが、皆とても熱い想いを持ってくれていたことが印象的でした。会社を変えたい、そのために自分のスキルを上げていきたい、そのためのチャンスを活かしたいという熱意をしっかり受け取りました。
実は、今回のグロースXに限らず、研修や教育機会があった際には頻繁に手を挙げるメンバーが一定層いるんです。チャンスを掴む、機会があれば飛び込む、そういった変革を好み波を起こしてくれそうなメンバーは、次のユナイテッドアローズを支えてくれるメンバーなのでは、と期待し注目しています。
マーケティングチーム内の言語・認識が共通化され、必要な議論や思考に時間が使えるように
ーマーケティングが学べるサービスはいろいろありますが、なぜグロースXを選ばれたのでしょうか?
松橋さん
マーケティングのスキル差を問わず、共通言語・共通認識を身につけられる点です。
グロースXを導入して、今年で3年目になります。初年度はマーケティング部のメンバーを中心に、立候補者を追加する形で受講者を募りました。
マーケティング部のメンバーは、外部からの中途採用でマーケティングについてある程度の知見がある者もいれば、店舗など社内の別部署から異動してあまりマーケティングを知らない者もいました。そういったスキル差があるメンバーが、一緒に学習することで共通の言語の定義を持ち認識を揃えることができたのが非常に良かったですね。
また、毎日少しずつ積み重ねて学習していくことができる点も良かったです。1日10分という短い時間でも、毎日コツコツ積み重ねていけば、学びが蓄積されていきますよね。受講者の多くは店舗で日々お客様対応をしているので忙しいのですが、少しの時間にスマホで気軽に受講できる、というスタイルはとても馴染んだようです。
ーグロースXを導入して、どんな効果がありましたか?
松橋さん
マーケティング専任の部門も、そうでない部門も、共通言語・共通認識を持って話せるようになり、コミュニケーションが円滑になったと聞いています。日々の業務がとてもスムーズになり、必要な議論や思考に時間が使えるようになりました。
3回目の利用では10名受講しているのですが、実はそのときにも40名程度の立候補者がいたんです。この度の4回目の利用でもまずは10名の受講想定で応募を進めたところ、やっぱり当初の予定枠を超える40名程度が志望してくれました。この志望数の多さからも、マーケティングに関する関心が高まっていることを感じます。
もちろん予算の関係もあるので、提出してもらった志望動機を読んで受講者の選考をするんですが、みんなの熱意が素晴らしいんです。なんとか受講してもらいたい、彼らの熱意があるタイミングで機会を作りたいと思い、急遽山崎に相談して受講者枠を増やすことにしました。
受講したメンバーは、エンゲージメントが非常に高い良い状態が保てていますし、そのことでお客様に提供する価値の向上、そして会社への還元というところにも繋げられていると感じています。
我々のような現場力が重要な会社では、実は日々工夫していることがマーケティングだった、ということもあります。
経験を重ねることで学んでいくフローを、弊社内では「経験学習サイクル」と呼んでいます。この経験学習サイクルの過程にいるメンバーは、自身では実践できるけれど、やっていることを言語化し辛く、他メンバーでの再現性が乏しかったことがありました。
「経験学習サイクル」の過程にいるメンバーが、後から知識としてのマーケティングを学ぶと、知識で経験の答え合わせをすることができるようになり、自身の工夫が体系化され、言語化できるようになります。言語化できると、他の人にもその工夫と根拠を伝えられるようになります。
こういった好循環が、元々社内にあった経験学習サイクルの輪をさらに拡大していくための強力なサポートになっていると感じますね。
メンバーの学習意欲を支援するためには、マネジメントレイヤーの意識改革も重要
ー他の方にグロースXをお勧めできる点をあげるとしたら、どういった点でしょうか?
松橋さん
受講者からも多く聞く意見として、共通言語ができてデジタル領域全体がわかるようになった、体系的な知識が身に付いたなど色々ありますが、やはり、アプリでスキマ時間を使いながら気軽に継続して勉強できる点ですね。
1日に凝縮して勉強することもできますが、それだと、なかなか全部を覚えられないですよね。グロースXは毎日少しずつ学んでいく仕組みですから、知識も少しずつ着実に蓄積されていきます。
弊社は挙手制で受講者を募っているので元々学習意欲が高いメンバーが多いこともありますが、学習環境を提供する立場として、続けやすい環境の提供も、非常に重要なポイントだと感じています。
ー貴社の今後の取り組みについて、教えてください。
松橋さん
若手を始めとしたメンバークラスへの支援はもちろんですが、管理職・ボードメンバーの意識変革にも力を入れていきたいと考えています。
学ぶこと自体はとても大切ですが、その学びをどう支援していくのか、マネジメント側のマインドとして支援の思考をしっかりと持つことが重要です。ポストを用意する、人事評価に反映するだけではなく、日々の業務の中でどう評価し支援するのか、様々な取り組みも行っていきたいと考えています。
現在は部長クラスを集めて隔週で会話の機会を設けたり、来期はマネジメント層に向けた1on1研修を計画しています。
山崎さん
限られた時間ではありますが、同じレイヤー同士で現場の悩みや工夫、いわゆる「しくじり先生」のような発散と共有の機会を設けています。最初は慣れない雰囲気でしたが、回を重ねることで発散の精度も上がり、多くの意見が出るようになってきました。日々のちょっとしたやりとりの重要性に、気づけるようになったのではないかと思います。
また、時代に合わせて変わり対応していく柔軟性を身につけていきたいですね。経験や年齢を重ねているマネジメントクラスは、どうしても自分の成功パターンに当てはめてしまいます。押してみて、だめならもっと押すというスタイルですね。
ただ、お客様もメンバーも、時代に合わせて非常に柔軟な思考を持っています。その中で自身が意識的にストレッチをして、押してダメなら引いてみたり、これまでの方法に囚われないような変化を、我々マネジメント陣自身が意識していかないといけないなと感じています。
ー今回は貴重なお話をありがとうございました!