デジタルマーケティングの「旗振り役」を務めるDXビジネス推進本部
―― まずはお二人の簡単な自己紹介をお願いします。
米蒸さん:私は新卒入社後、10数年にわたってエンタープライズ向けのシステムインテグレーションを担当するエンジニアをしていました。その後2018年からNECへ出向し、デジタルマーケティング、新規事業の立ち上げといった経験を積みました。
そして2020年にこちらに戻ってきて、現在はDXビジネス推進本部のインサイドセールス&カスタマーサクセスグループに所属しています。グループとしては、Webサイトを通じたお客様との接点構築からナーチャリング、eコマースの販売までを見ており、担当領域はかなり幅広いです。
石井さん:私は前職のデザイン制作エージェンシーで人事を10年経験し、その中で社内報や採用広報ツールのディレクションも担当していました。
その後2020年4月に当社に入社し、前職で得たスキルを活かすような形で、DXビジネス推進本部のリードジェネレーションチームで主にWeb制作を担当しています。また、採用や教育の知見を持っていることもあって、グロースXの運用も担当しています。
―― お二人が所属していらっしゃるDXビジネス推進本部は、どのような組織なのでしょうか?
米蒸さん:当社の各事業に対して横串に展開している組織で、いわばデジタルマーケティングの旗振り役のようなポジションです。従来の営業主体のアプローチに留まらない、デジタルの力を活用した顧客接点の創出を担っています。
もともと弊社は電気通信工事会社としてをスタートしており、現在でも企業、通信事業者、官公庁・社会インフラ事業者等、幅広いお客さまに対してサービスをご提供しています。従って、もともとアカウントベースでお客様の課題と向き合って最後までやりきる、というスタンスが強かったのですが、時代の変化に伴って、我々も変わっていく必要が出てきたんですね。
サーバーやネットワークインフラが物理的なものからクラウドサービスへと変わったり、SaaSのビジネスがどんどん出てきたり。こうした市場の変化に伴って、我々も3、4年前からビジネスを変化させてきました。
例えばZoomなど様々なクラウドサービスを組み合わせたビジネスを展開する、SMBのお客様との接点を構築する、といったことです。これまでの延長ではない、新しいやり方でビジネスを展開するトライを始めています。
―― 組織全体として新しいフェーズに移行されている…ということですね。
米蒸さん:そうですね。実は当社はサーモンの陸上養殖事業を手がけるなど、従来の事業領域を超えて、新たなビジネスモデルに挑戦していこうという社風があると思います。
サービス・お客様の変化に伴い、デジタル領域の知識整合を図る必要が
―― お聞かせいただいたようなビジネスの変化が、グロースX導入の背景のひとつでもあったのでしょうか。
米蒸さん:はい。もともと当社は個別のお客様の課題に対して、オーダーメイドでのシステムインテグレーションを中心に対応してきました。
ですが新しいブランド「Symphonict」においては、提供サービスもお客様の層も広がり、過去の積み上げではなく、お客様の課題に寄り添って同じ価値観を持って動いてくことが大切です。その点で、デジタルマーケティングの観点を取り入れ、これまでの考え方を変化させる必要がありました。
実際に数年前からWebマーケティングやインサイドセールスの立ち上げ、eコマースの立ち上げ、広告運用やカスタマーサクセスなど、具体的な取り組みも拡大してきました。
石井さん:私が2020年の12月にチームにジョインした時には、とは言えマーケティング周りがまだ整っておらず、新しいお客様との接点作りが急務という状態でした。
当社でリリースするサービスのすべてのサイト制作を担当者2名で担っているような状態だったので、サイトをマーケティング的に作り込む体制もできていなかったんですね。
そこから3ヵ月ほどの間で、体制づくりということで外部・内部ともに関係先を広げていきました。ですがそこで課題に感じたのが、メンバー間でのデジタルマーケティングに対する知識の差です。知識整合に時間がかかり、もったいなく感じていました。
またチームで動いていく中で、制作部隊をただの制作マンにせず、マーケティング視点を持ってもらうため仕組み作りの必要性も感じていました。
知識整合を行った上で、目標に向かってお互いのジョブをやり切る。そのためにはチームの中での共通言語やフレームワークが必要だろうと感じ、グロースXの導入に至りました。
―― 今回はまず10名の方でスタートされましたが、どのような職責の方が中心なのでしょうか?
石井さん:コア業務としてデジタルマーケティングを実行しているリードジェネレーションチームの4名に加えて、インサイドセールスを担当する部門の本部長等、上位役職層にも参加いただきました。これは施策の相談や決裁の際のコミュニケーションのレベルを上げるためです。
また、先ほどお話したようにプロダクトアウトから視点を変化させてほしいという意図で、開発部門からも2名受講してもらっています。
「グロースX会議」で実際のキャンペーンのKPI設計を実施
―― グロースXを導入されて、まだ1ヵ月と少しではありますが、具体的な運用についてはいかがですか?
石井さん:基本的には各自で自走し、私がSlackでフォローをしています。ただやはり進捗に個人差があり、テレワークということもあって日常会話でフォローする機会も少なくて。
そこで現在は「きのこチーム」と「たけのこチーム」の2チーム制を導入して運用しています。互いに競い合うと言いますか、切磋琢磨できると良いかなと思っています。
―― 「きのこ・たけのこ」面白いですね(笑)早速「グロースX会議」(ワークショップ)も実施されたそうですが、どのような内容だったのですか?
石井さん:ちょうど良いタイミングで当社が注力しているキャンペーンがあったので、そのKPI設定を会議のテーマにしました。
キャンペーンの対象プロダクトは、AIによる自動電話取次サービス「クラウドコミュニケーションサービス」です。内容は、3ヶ月間は無料でトライアルでき、トライアル期間中の正式契約で1年間は基本料金が無料でお使いいただける、というものです。
以前はこうしたキャンペーン設計の際にも、「予算がいくらあるからどう使うか」といったことが話の中心になっていて。そこでグロースX会議では、アプリで学んだフレームワークを活用して、キャンペーンの本来の目的から整理して目標を設計していきました。
▼実際にグロースX会議で使われた資料
石井さん:グロースXの学びを振り返りながらディスカッションを行い、必要な指標を整理した上で「いつ・誰が・どのタイミングで」その数値を把握・共有し、施策を検討するのかを決めていきました。
結果、担当者しか把握できていない数字や情報が意外とある…という課題もわかってきました。受講者が各自で取り組んでいたら、社内から必要な数字や情報を集めきるのは難しかったので、グロースX会議の形をとって良かったと思いましたね。
―― グロースX会議で決定された各KPIを、いま実際に追いかけていらっしゃるのですか?
石井さん:そうです。KPIから分解した流入やCPAなどの目標数値を担当ごとに割り振って、デイリーで入力できるフォーマットに毎日記入してモニタリングしています。
―― 導入1ヵ月でここまで実務に落とし込みができているのは、本当にすごいですね!
米蒸さん:LTVやF2転換といった、学びのキーワードをチーム内で共通言語化でき、実際の数字に落とせたことで成果につながっていると感じています。
キャンペーン開始直後から大手企業の問い合わせも相次ぎ、いま獲得後顧客のフォローや、新しく設計したタッチポイントで様々な施策を試しているところです。
石井さん:個人的に感慨深いのは、若手メンバーの変化です。
具体的な施策をブレストしている中で、今回のキャンペーンの申込書を当社からお客様へ郵送する義務があるとの話がでました。そのときに、そのメンバーが「せっかく郵送するなら、そこにサービスの利用が楽しみになるようなポストカードを添えたい」と提案してくれたんです。
「おー、めちゃめちゃマインドが育ってるやん!」と思いましたね(笑)
社内外にデジタルマーケティングのノウハウを伝える推進役を担っていく
―― 現状、とても順調に学習を実務に活かされていて素晴らしいですね。今後のチャレンジとしては、どのようなことが挙げられますか?
米蒸さん:今回のキャンペーンだけではなく、今後も定量的な結果を出し、社内に具体的な成功事例として発信していくことが大切だと思っています。いまは「Symphonict」ブランドとしてのデジタルマーケティングの進め方を作っていくような、組織文化の醸成に向けたスタートを切った…というところです。
まだ社内では、「デジタルマーケティングって本当に効果があるの?」と懐疑的な人もいます。だからこそ、今回のような具体性のある成功事例を発信していくことで、「デジタルマーケティングに投資をすればリターンがある」ということを社内に伝えていきたいですね。
グロースXに関しても、社内の口コミから、実務へ活かすことを目指して別の部署でも20名ほどの追加導入が決まりました。
石井さん:もうひとつ、個人的には社内に向けて「Symphonict」の価値を上げていきたいですね。いまちょうどサイトの大改修を行っているのですが、メッセージ等を見直して従業員自らが憧れるようなブランドになっていくことで、お客様への提供価値も高めていけると思っています。
米蒸さん:現在は自社内にデジタルマーケティングのノウハウを蓄積するフェーズですが、将来的にはお客様に対してもそれを提供していきたいと考えています。
当社の自社実践の取り組みがお客様のデジタルシフトを実現するサービス提供となるように、私たちが学んだノウハウをご提供して、お手伝いしていくことが次の挑戦ですね。
―― 米蒸さん、石井さん、ありがとうございました!
(インタビューご協力:NECネッツエスアイ株式会社 様)