携帯電話事業に続く、AI・ビッグデータを活用したビジネスを推進
―― 本日はよろしくお願いいたします。まずはお二人の簡単な自己紹介をお願いできますか。
桜井さん:私は、当社のスマートライフ事業の人材育成を担当して、約2年になります。これまでは国際事業部など他部署での経験が長く、人材育成に関わるのは現在の部署が初めてです。
実はスマートライフ事業における育成チーム自体もわりと新しく、私が来る1年ほど前にできたチームになります。
國分さん:私は現在、ポータルサイト「dマーケット」の企画運営や戦略を担当しています。加えて、もともとマーケティング人材の育成にも興味があったこともあり、現在はダブルワーク的に人材育成の業務にも携わっています。その中で今回は、グロースXの運用部分を担当させていただきました。
―― 貴社のスマートライフ事業では、5GやVR、AI、IoTなどの先端技術を活用したサービス開発をされていらっしゃるんですよね。
桜井さん:これまで当社は、いわゆる「もしもし」「はいはい」の携帯電話を主軸に事業を展開してきました。しかし、市場の飽和と、ビジネスの伸びが限定的であることから、いまは新しい事業をどんどん立ち上げていきましょうというフェーズに入っています。
その新しいビジネスを担っているのが、スマートライフ事業です。組織はスマートライフビジネス本部とマーケティングプラットフォーム本部に分かれており、2つの本部で合計1,600人ほどの社員が在籍しているのですが、彼らの育成を担当しているのが私が所属するチームです。
実践に直結するスキルを学べる「グロースX」。全部署から70名超が参加
―― スマートライフ事業では新しいビジネスを担っているということで、そこで働く方にも多くのインプットが求められる…という印象があります。
桜井さん:おっしゃるとおりです。ですが、当社はこれまでジェネラリストの育成が中心で、比較的短期間でのジョブローテーションが通常でした。そのため、専門スキルや知識が個人に形成されづらいという課題がありました。
しかし今後、新しい領域でビジネスを拡大していく上では、従来とは異なる、よりプロフェッショナルな専門スキルをもった人材が必要になってくるだろうと。そういった人材を育成する取り組みのひとつとして、今回、グロースXを導入したという背景があります。
國分さん:私は育成担当であり、かつプログラムを受講する事業部側の立場でもあります。今回、事前に学習コンテンツを拝見した際に、「今日から使える具体的な手法」がふんだんに盛り込まれているな、という印象をもったんですね。
実際、マーケティング関連の書籍を使って学んでも、「理論はわかったけれど業務に落とし込めない」ということがよくあると思います。
ですがグロースXは、具体的な実践法までしっかりフォローされているので、受講者の皆さんも「実践できた」という感触が得られるのではないかと。そうした期待を持って、実際の運用をスタートさせました。
―― 今回、当初は30名の想定のところ、70名超の方に受講をいただき非常に驚きました。
桜井さん:私たちも驚きました。受講者は希望制で、フラットにデジタルマーケティングの基礎を学びたい人に手を挙げてもらったんです。今回、初めての取り組みということもあり、まずは意欲的な方に受講いただきたいという背景がありました。
スマートライフビジネス本部とマーケティングプラットフォーム本部には4つずつ部署がありますが、結果的に、その8部署すべてから受講者が集まる形となりました。
デジタルマーケティングに直結した業務を行っている人から、開発担当者、法人営業など担当業務も多岐に渡り、また全体の1割ほどが管理職でしたね。
今後の事業展開においてデジタルマーケティングが重要だと認識しているものの、どこから学んで良いかわからない…という社員の危機感もあらわれていたのだと推測しています。
中間報告会にて、「グロースX」での学習を通じて実践したいことを「宣言」
―― 実際に運用が始まって、國分さんは、どのように受講者の方とコミュニケーションをとられていましたか。
國分さん:最初に、Slack(社内コミュニケーションツール)に、部署別で10人程度のグループを作りました。コミュニケーションを活発にして、チームで進めていく雰囲気を作ることが狙いだったのですが、実は最初はあまりうまくいかなくて。学習進捗も、あまり思わしくなかったです。
そこで、学習プログラムの折返し地点で、Slackのグループ別に中間報告会を実施し、グロースXでの学習を通じて実践したいことを宣言してもらいました。
例えば、顧客調査を控えていた受講者からの「グロースXで学んだ定性調査の手法を使ってみたい」といった宣言や、「自分の追うべき目標KPIを見直したい」といった宣言がありましたね。
さらに、最終月には成果報告会も実施しました。中間報告会のアンケート結果で「別部署の人たちと話してみたかった」「同じテーマに興味を持っている人同士で集まりたい」という意見をもらったので、テーマ別に、部署を横断する形でグループを作って行いました。
―― 成果報告会については、ぜひ後ほど詳しく聞かせてください。最終的にプログラムの完了率がほぼ100%という素晴らしい成果ですが、他にはどのような進捗のフォローをされたのですか。
國分さん:他には、桜井さんにもご尽力いただいて、1人ひとり丁寧にコミュニケーションを取っていきました。
桜井さん:そうですね。こちらから何もせずとも順調に進んでいた人もいましたが、進捗が芳しくない方には定期的にメールを送りました。最後の1ヵ月は、追い込みということで毎週個別メールでアプローチしましたね。
また、進捗状況のランキングが見えるのが励みになって、学習ペースをキープできたという声もありました。
98%が「知識が増え」、62%が「業務で実践」インプット・アウトプット両面で成果が
―― 成果報告会について詳しくお伺いしたいのですが、具体的にはどのような発表がありましたか。
國分さん:成果報告会では、中間報告会で宣言したアクションの実践結果を、グループワークで共有しました。
例えば、先ほどご紹介した「定性調査の手法を使ってみたい」という宣言をした受講者からは、学んだ内容を実際のユーザー調査に活かし、顧客理解が進むインタビューの実践につなげたという発表がありました。
また、インハウスの広告運用を担当しているメンバーからは、効果測定の指標について学んだことで、コスト重視だった数値管理を見直すアクションにまで落とし込めた、という話もありました。
―― 本当に実践に直結していますね!実際にグロースX上で展開しているアンケートでも、多くの方が「チームで実践できることがあるのでやっていきたい」とご回答されています。
(↑)CRMに関するアンケート結果
―― また、「継続利用率の計測に役立った」「LP改善で貢献できた」「ユーザー向けコミュニケーション施策の在り方を検討した」など、足元の業務に学びを活かされていることも伝わってきます。
國分さん:当社で実施した受講者アンケートでも、62%の方が「学習した内容を実践できた」と回答しています。また、「知識が増えた・身についた感覚がある」方は98%と、インプットという意味でも、非常に良かったのかなと思います。
実は私が想定していたよりも、知識が増えた・身に着いたという回答が多かったんです。これは率直な驚きでした。
マーケティング領域において全社員がもつべき共通スキル・共通言語をインプットしていく
―― 今回の結果を踏まえて、今後のマーケティング学習についてはどのようにお考えですか。
國分さん:今回の結果には満足していますが、一方で実務に活用できなかった受講者が38%いますので、その理由を深掘りしたいですね。
担当業務的にマーケティングが直結しなかった、実践する機会や環境の調整に課題があったとの声も聞いていますので、次回は、より実践に繋げられる環境作りにも挑戦していきたいです。
桜井さん:そうですね。実際に学んだことが業務に直結している人は良いのですが、そうではない人はすぐに忘れてしまうと思うんですね。
ですので今後は、実務との接続であったり、より多くの人に学んでもらうことで、より広くマーケティングの共通言語を形成するような展開であったりが必要になってくるかなと思います。
―― 最後に、今後の組織作りや人材育成のチャレンジについて、お聞かせください。
桜井さん:今後、社内にプロフェッショナルなスキルをもった人材を育てていく…ということは組織の大きな柱であり方針です。マーケティングに限らず、様々な職種でプロ人材を育てていく。新しい領域で事業を展開していくために、専門知識をもった人材を増やしていくということですね。
またそれに加えて、マーケティング領域において全社員がもつべき共通スキル・共通言語をインプットしていく必要があると考えています。
例えば現状、業務における社内の共通言語が定まっておらず、各サービスが手探りで仕事を進めている…といった課題があります。こうした課題に対しては、対象者を限定して専門性を磨くだけではなく、裾野を広げて幅広く、全員にベースとなるスキルをインプットする必要があると考えていて。
一定の共通言語ができて、みんなが当たり前に「マーケティングとはこういうことだ」という理解をした上で、それぞれにカスタマイズしていくことが重要です。
現状は、共通言語がなくバラバラな状態から脱する、最初の一歩を踏み出せたところだと思っています。今後は、マーケティングの中でも全員が知るべき知識をより多くの人が学べるように、機会を整えていきたいですね。
―― 桜井さん、國分さん、ありがとうございました!
(インタビューご協力:株式会社 NTTドコモ様)