【セミナーレポート】成長を続ける“北欧暮らしの道具店”の秘密 〜クラシコム社の社員・組織はどんなことを大切にしているか?〜

「北欧、暮らしの道具店」の事業概要と特徴

高山さん

クラシコムは2006年9月に創業し、来年で20周年を迎える会社です。事業はD2Cとブランドソリューションの2つを柱としております。

創業当初は北欧のヴィンテージ雑貨の仕入れから始まりましたが、現在は国内外からの仕入れ商品と、オリジナル商品を取り扱っており、雑貨、アパレル、コスメ、家具、インナー、スキンケアなど、お客様の暮らしに関わる様々なカテゴリーへ展開しています。

「北欧、暮らしの道具店」の特徴的な点として、商品ページで写真とテキストで説明を尽くして商品を深く紹介することで、顧客がその商品を取り入れると暮らしがどう変わるのかを想像できたり、買わなくても、ウィンドウショッピングのようにコンテンツとして楽しんでもらえることを意識しています。

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西井

創業当初から、こだわった商品ページを作られていますよね。最初出た時から実はすごく注目していました。
商品機能などの必要なことだけを書くことが多く、自分もECサイトはそうしていたので、それと比べると時間もとてもかかっていると思いますし、このコンテンツ量をどうやって生み出してるんだろうというのはいつも気になり、注目していましたね。このスタイルが本当に人気ですよね。

高山さん

ありがとうございます。このスタイルは変わらず、ずっと続けているので嬉しいです。

また、その他にもこだわりのコンテンツ(Web記事、YouTube番組、ポッドキャスト、映画など)を配信していまして、それらがお客様と自然に出会い、関係性を深めていく役割を果たしています。

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コンテンツとプロダクト(商品)の関係性については、コンテンツをプロダクトのマーケティング手法として位置付けているわけではなく、「コンテンツがプロダクトであり、プロダクトがコンテンツである」という考え方で循環させていく、融和していると考えています。

  • プロダクトとしてのコンテンツ:
    コンテンツ自体に独立した価値があり、視聴者が「いいコンテンツを見れた」と満足した時点で価値を提供できている(例:60分のトークドキュメンタリー番組を見て共感したり気持ちが満たされたりすること)。
  • コンテンツとしてのプロダクト:
    お客様は、商品を買うという行為だけでなく、コンテンツで見た世界観や流れている時間を自宅や食卓で再現したい、体験したいという動機でお買い物をする。これはある種「コンテンツ的にプロダクト体験を楽しんでいただいている」という考え方。

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西井

本来、お買い物ってすごく楽しいものであるから、物を買う時のドキドキ感とかをうまくコンテンツにされているんだろうなと思います。それをやりきるというのがなかなか難しい中で、本当に考えてやりきっているというのがすごいと思います。普通の会社じゃできないことだと思うので、それを実際にどのような組織づくりをして実現しているのかというお話もこのあと聞かせていただければと思います。

高山さん

はい。クラシコムが実践する、ブランドを成長させる組織運営の考え方を3つ紹介させていただきます。

  1. アタマとカラダとココロをつなげる
  2. 動機からはじめる
  3. ブランドが育つ組織のつくりかた

1. アタマとカラダとココロをつなげる

高山さん

仕事に取り組む姿勢として、「アタマ(理性や思考、データ、ロジック)」「カラダ(体験、感覚)」「ココロ(感情、動機)」の3つを統合して向き合うことを大切にしています。

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多くの企業では「頭だけを会社に持ってきてしまう」傾向があり、調査や戦略策定に時間がかかりがちですが、クラシコムでは、「小さく試して学んでいくサイクル」を重視し、「事前制御ではなく事後制御」にパワーをかけています。

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西井

クラシコムさんは、この素晴らしい世界観の中でやってるから、数字的なコミットがなさそうに見えるけれど、実際には、めちゃくちゃロジカルにやられてますよね。クラシコム代表の青木さんとお話をしていても、トラフィックやコンバージョンなどもとても見ていると伺いますし、売上もとても見られていますよね。だから、やっぱり世界観も数字面もバランスを取っているということですよね。

高山さん

はい。もちろん、売上や予算に対するコミットメントはしっかりとおさえた上での話です。売上は毎日15分ごとに通知が来て、見れるようになっていますね。その他に、MDにもフォーカスしています。どう予算を立てて、在庫をどう管理して、立てた予算に対してどう売っていくかみたいなところはかなり注力しています。

また、「一生活者である自分」を会社に持ち込むことも推奨しています。生活者はココロとカラダも使ってお買い物をしているので、論理やKPIのみで意思決定するアタマだけの状態ではなく、アタマとカラダとココロの3つをつなげることで、仕事の質を高めています。

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西井

このアタマのところで言うと、「論理やKPIでこう意思決定する」とか「ロジカルシンキング」とかは、多くの企業がこう陥ってる状態なのかなと思います。管理する側としても結構使いやすくて、こうしがちですけど。ある方に聞いた話ですが、論理的思考やロジカルシンキングで物が売れるんだったら、みんなもっと売れるようになっている、けれど、それだとみんな同じ答えになっちゃうから、それじゃ売れないということを言われて、なるほどなと思ったんです。そこに近い話がありそうですね。

アタマとカラダとココロを繋げるための「振り返り」文化

高山さん

そうですね。アタマとカラダとココロをつなげるというのは、コミュニケーションコストや社内連携もそれなりに必要だったりしますが、それ以上に重要なことだと思うので、大切にしています。

このアタマとカラダとココロ3つの要素を繋げるためにどうするかということですが、クラシコムでは「振り返りの機会を多く持つ」ことを非常に重視しています。PDCAサイクルを回すための業務的な振り返りだけでなく、「クラシコム型の振り返り」に時間を割いています。

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クラシコム型の振り返りの特徴をあげると、個人の「カラダとココロ」の部分、すなわちこの体験をしてどう感じたのかなども振り返っていく機会があります。例えば、半年に1回行う全体会議があるのですが、その場では、グループワークがあり、「半年間で自分的にどんなエピソードがあったか」「その時自分はどう感じて何に迷っていたか」といった自分の物語を共有し、他のメンバーから感想のフィードバックを受けます。全体会議では、温泉に入った後のホクホクして帰る気持ちになるということをテーマにしています。

西井

「カラダとココロ」の振り返りと言うと、お客さんから見た時の「カラダとココロ」の振り返りを行なっているのかと思ったら、それは元々普通にやっているんですね。そのうえで、半年間の中での自分の業務そのものとか、ワークそのものに対する振り返りをしているようなイメージなんですね。面白いですね。

振り返りと言うと、多くの会社では、暗い顔をしてボソボソ喋るとか、叱責される感じのイメージがありますが、クラシコムさんの全体会議での様子を見ると、みなさんとてもニコニコしてますね。振り返りの文化って、自分のことを喋ったうえで、それに対してフィードバックしてもらうことが自分のためになるということで楽しい状態になれるということなんですかね。

高山さん

そうなんです。みんな自分の話をして、他メンバーの話を聞いて、フィードバックして、すごく楽しんでいます。自分だけじゃなかったって思うこともありますし、シンプルに自分の話を聞いてもらえるのが嬉しい気持ちにもなるということもあります。

他の企業さんの話を聞くと、業務がすごいスピードで進んでいく忙しい中で、一度立ち止まって自分の気持ちを、考えてシェアしてみるということは、なかなか時間を作れないという話も聞きます。

クラシコム型の振り返りを行う目的の話をすると、個人と組織、個人と会社のベクトルのすり合わせや、「意味の再発見」があります。モヤモヤしていたことに意味があったと気づくことや、自分の話を聞いてもらい共感されることで、「自分だけではなかった」と感じ、ポジティブな気持ちになれるので、この取り組みは重要視しています。

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西井

僕は多分一般的な振り返りしかしていなかったので、常に険しい顔をした振り返りのイメージが強かったんですね。クラシコムさんでは、業務自体も振り返りを中心にしているし、それだけじゃなく、組織としての振り返りにも時間かけている。多くの企業では、みんな忙しいと言って振り返りを疎かにしがちなこともあると思いますが、クラシコムさんでは、この振り返りが徹底できているからこそ、当たりやすい企画とか業務に結びついてるということなんですね。

高山さん

ありがとうございます。クラシコムは残業を推奨せず、基本的には定時で帰る働き方を前提としています。業務としてはタイトですが、それでもこの振り返りにはしっかりと一定の時間を割くということが、結果的に生産性につながっている部分もあると思いますね。

このパートのまとめとしては、アタマだけで仕事をせず、カラダとココロも使うということが、お客さんから共感いただける企画にもつながるということと、あとは、その振り返りを通して、アタマとカラダとココロがつながる感覚を研ぎ澄ますということですね。

振り返りのなかで、ココロを出したりとか、カラダで感じたことを振り返って喋るので、その時に、「あ、うまく喋れないな」という時は、ちゃんと意識できていなかったんだと自覚できます。それを繰り返していくことで、通常の業務の中でも、アタマとカラダとココロをつなげて、業務でも使えるようになっていくと思います。

西井

ありがとうございます。めちゃくちゃ面白かったです。クラシコムさんの組織づくりのエッセンスがまとまっていて、すごく学びになりました。

2.動機から始める

高山さん

アタマとカラダとココロをつなげて仕事をする大きなメリットは、「動機」にアプローチしやすくなることです。動機は「企画の源泉」になると考えています。動機から企画へのプロセスについても紹介します。

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動機から企画へのプロセス

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社内の企画会議では、企画担当者は競合調査や市場トレンドといった要素はほぼ入れず、「なぜ自分はこれをやりたいと思ったのか、その裏側にある自分の物語や体験」をかなりのボリュームでプレゼンします。暮らしから入っているというイメージが近いと思います。

西井

なるほど。これも一般の企業で言うと、ほとんどの場合が、自社のアセットを使ったり、競合調査や機能的な差別化とかを考えてプロダクトを生み出すことが多いですよね。それをマーケティング担当が言語化してお客さんに伝えるみたいな。よく言われるプロダクトアウトみたいな話です。

クラシコムさんは、プロダクトアウトでもマーケットインでもなくて、どちらかというと社員の動機からスタートして、それをちゃんと深掘りすることでお客さんの共感を得るというところまで広げて、商品を生み出すということなんですね。

クラシコムさんを見て、真似したがってる会社は多くあると思うんですけど、根本的に、ここの動機の深堀りから始めない限りはヒットする企画にならないし、お客さんの共感も得られないってことですよね。

高山さん

スタイルは一定の再現性があると思いますが、スタイルとして見えていないところにあるカルチャーは、クラシコムですごく大事にしているところですね。


このように動機からできあがった企画の事例をいくつかお持ちしているので、ご紹介します。

 

事例1:「ハレの日フォーマル」

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  • 個人的動機
    1年に数回、突然訪れるドレスを着る場面では「何を着ていこう……」と心が焦る。手持ちのドレスだとしっくりこない、でも新しいものを探してみると、いいなと思うデザインが手頃ではなかったり。予定は数ヶ月前に決まっているのに、その間ずっと悩んで、結局1週間前くらいにバタバタと買ったり……。

  • なぜの深掘り
    どこか楽しい買い物じゃない気持ちがあったのかも。めったに着ないものだから探し慣れてもいないし、うまく見つけられる自信もなくて不安だらけ。

  • 整合性
    『これを着れば大丈夫。自分らしくいられる』というささやかな安心感を感じてもらえる服作りを行っている。暮らしのなかの様々なシーンに貢献したいと考えるなかで、フォーマルを着る日もそれに整合する。

  • 合埋性
    安くはないが高すぎない価格とあると嬉しい機能性を担保できる。

  • お客様と共有したいテーマ
    喜びの場の「不安」を少しでも無くす服。そして朗らかな気持ちで、おめでたい日を「心から楽しむ」ための服。

上記のようなプロセスを経て考え、お客様と共有したいテーマ(企画)を定めました。実際に作り販売したところ、大ヒット商品になりました。

 

事例2:メイクボックス

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  • 個人的動機
    メイク道具の収納。道具の形がさまざまで、ごちゃつきがちだし、置き場所にも困る。正解がわからない。

  • なぜの深掘り
    メイクやお肌のお手入れは毎日のこと。その時間が、幼い頃に憧れたような、ちょっぴりワクワクする、楽しい時間にしたいかも。

  • 整合性
    家のなかにスペース的な制約があっても自分らしくいられる場所や時間をつくるような提案は、「北欧」暮らしの道具店」として大切にしていること。

  • 合理性
    これからメイクアップアイテムへの展開も進めたいと考えるなかで、メイクボックスからアプローチするのは良さそう。

  • お客様と共有したいテーマ
    収納力もバッチリで特別な空間をつくってくれる“小さなドレッサー”のようなメイクボックス

同様のプロセスで、お客様と共有したいテーマ(企画)を定めました。こちらも、とてもヒットした商品でした。

 

西井

ちなみに、深掘りする時は、1人で深掘りしていく感じなんですか?先ほどお客さんの共感のところにちょっとずつ広げるという話がありましたが、どういうプロセスで深掘りしていくんですか?

高山さん

企画担当者がいて、伴走していく役割のマネージャーがもう1人ついて、壁打ちしながら、なんでそう思うんだろうね、と一緒に考えていきます。

例えば、その中で買い物がなんか楽しくないって気持ちがあるかもとなると、その仮説を社員に色々聞いていきます。

分からないものは本当に分からないという風に社員も率直に言うので、そういったことを繰り返していく中で、やっぱりこれって一定の普遍的な気持ちにミートできてるんじゃないかというところに着地するというようなイメージですね。

西井

なるほど。社員全体でこの企画の考え方が統一されていて、まず動機から始めるということを徹底して向き合ってやられているんですね。面白いですね。

ちなみに、動機から始めたとしても、合理性をちゃんと入れてるというのも、クラシコムさんの強さの秘訣ですね。単純に動機だけで動くのではなく、なぜを深掘りして、整合性を取って合理性をちゃんと持つというところまでしっかりフレームワークとして落としてるんですね。

高山さん

そうですね。前提として、クラシコムは営利企業だよということを、本当に強く言っています。この前提を忘れちゃうと、自分たちの動機が強い社員なので、こういうものもやりたい、ああいうものもやりたいとか出てくると思います。そのため、この枠組みを徹底することは、経営やマネジメント層が強く持つということをしていますね。

自分が顧客でない場合の動機へのアプローチ

高山さん

一方で、自分が顧客じゃない、自分がその企画担当者じゃない場合も全然あります。その場合はどういう風に考えてるのかも、お伝えできればと思います。それは、距離感がヒントになると考えています。

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自分が企画担当者じゃないから、自分はその想定しているお客さんの層とは違うから、そう思ったまま分からないでいること、分かったつもりになることは、NG行為になっています。やっぱりそれは、分かるまで企画担当者に聞こうということをカルチャーとして重要視しています。

仮に、分からないなとか、すごく距離感あるなとか、そういう場合には、「なんでそこに距離を感じてるのか」「なんで関心を持てていないのか」を深掘りします。実は、そうすること自体が動機に繋がってくるので、重要なポイントだと考えています。

西井

これも面白いですね。あるあるな気がしていて、僕も、自分自身が過去に化粧品の通販やってて、どうしても自分が分かる内容になっていないことが多かったのですが、これを分からないままにしないということは徹底していました。

分からないなら、なぜ関心を持てないのか、ここを深掘りすることは全然あるし、分かってる人にひたすらちゃんと聞いていくこともできるので、それを大事にしているということですね。

高山さん

そうですね。クラシコムでは、社員自身が自立し、仕事に責任を持てることが大前提として求められていますね。

3.ブランドが育つ組織のつくりかた

西井

十数年、ブランドがブレずに、時代に合わせて、そしてお客さんが広がってもずっと育ち続けている。これは本当に皆さん、すごく気になるところだと思うので、それを実現する組織のつくりかたについても、お話をお願いします。

高山さん

ブランドが育つためには、まず一つ、一貫性が非常に重要だと考えています。その一貫性をどう担保していくかというと、アタマとカラダとココロを使いながら、まずお客様である自分を仕事でも使うという行動指針を持つことです。

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その行動指針を持ちながら、迷った時に立ち戻るものとして、2017年に「編集読本」というものを作成しました。これは、「北欧、暮らしの道具店」というブランドがどのような人のためのどのような場であるか、そのために大切にすべきこと、自分以外の社員が何を大切にしているのかといった、根源的で普遍的なことが書かれています。

これは今も新入社員に配布し、新入社員がマネージャーに解釈を尋ねたり、マネージャーとの1on1の中で「編集読本に書いてあることと一緒だよ」と認識を浸透させたり、今もずっと活用しています。

さらに、全社員向けではありませんが、マネジメント層に対しては、「マネジメントプレイブック」というものが渡されています。これは代表の青木が書いたもので、不確実性の高い人を扱うマネジメント領域で、どういう観点を大切にすべきかを拠り所にするものです。

この一貫性というのは、クリエイティブにおけるトーン&マナーのガイドラインを作るというよりも、本当に人の価値観、判断基準、行動指針をしっかり定義していくことを重要視しています。

西井

なるほど。プレイブックは、まさしく会社の言葉であり、人によって解釈がずれてしまうことを防ぐために重要だと、僕も事業に携わる組織を作る中でいつも思っています。

高山さん

おっしゃる通りです。定義がバラバラになると、生産性などに大きく影響します。例えば、マネジメントプレイブックには「要望」と「要求」の違いなどが書かれています。

  • 要望とは:決定権がある相手にリクエストを伝えるための情報共有。受け入れられるかは相手の権限。
  • 要求とは:こちら側に決定権があることについて、リクエストを伝えるための情報共有。命令ではなく、リクエストをするためのコミュニケーション。

西井

面白いですね。「要望」という言葉を使って、相手が動かないことに対して不平を言う、というズレに繋がってくるんですよね。だからこそ、このプレイブックは門外不出で、企業におけるプレイブックを作っていくことが大事だと思いました。

高山さん

比較的柔らかいパーソナリティの人が多いので、本当は要求すべきことを要望にしてしまっている場合もあります。ビジネスとして契約条件の中で要求すべきことの整理に役立っています。

プレイブックとは別に、行動指針もあります。行動指針は3つです。

  • センシティブ:敏感に察知する、違和感も含めて気づく力、認識力。
  • チャーミング:解釈の仕方。センシティブに捉えすぎず、どうすればより良くなるかという解釈。
  • サステナブル:続けていくこと、持続可能性があること。

これらも、センシティブとはどういうことか、チャーミングとはどういうことか、もう少し細かく書かれています。

西井

分かりやすいですね。ブランドそのものも分かりやすくないと浸透しないが、分かりやすくすればするほど曖昧な解釈が増えてくるからこそ、こうやってプレイブックなどで定義していくことが重要なんですね。

ケアが循環する組織

高山さん

ブランドが育つ組織として、一貫性の担保ともう一つ重要視しているのが、「ケアが循環する組織」です。

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ケアとは、お互いが関係性を大切にして継続させるために自然に行う活動で、例えば「家の中でゴミが落ちていたら拾うだろう、ああいうことだよ」と代表の青木も言っています。このケアが循環していくことが重要です。

  1. 経営層がマネージャーをケアする。
  2. マネージャーがスタッフをケアする。
  3. スタッフが顧客や取引先をケアする。
  4. その結果、顧客や取引先がケアされて事業全体に返ってくる。

マネージャーがケアされることは非常に重要で、それがスタッフや顧客・取引先をケアすることに繋がるからです。経営層としては、会社の中でマネージャーが一番キラキラして輝いて見える組織にしたいという気持ちがあります。不確実な領域に責任を持ってチャレンジすることが人生を豊かにするという考え方から、マネージャーをしっかりケアし、サポートできることはサポートしていきます。

例えば、約3ヶ月に1回行うマネージャー合宿では、座学的な研修ではなく、円になっていろんなことについて話し合います。この合宿のチェックインに前回は2時間半かかりました。

それは、自分が今どんなことを考え、どんなことに悩んでいるかを含めて発露し、同じマネージャー陣に聞いてもらうためです。それはケアであり、マネージャーが「分かるよ」と言ってくれることが循環に繋がります。チェックインがむしろメインコンテンツ化しているくらいです。

このケアの循環はビジネスにおいても有効性があり、顧客との関係性も深まります。

  • コンテンツをお届けすることで顧客がケアされる。
  • 顧客からのリアクション(お便り、感想、コメント、定量的な数字など)がダイレクトに返ってくることで、社員がケアされる。
  • その積み重ねで顧客とクラシコムの関係性が深まり、ブランドが育つ。

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ケア的な関係性でブランドが育つと、一貫性がある限り、カテゴリーを横断した事業展開でお客さんがついてきてくれます。例えば、「北欧、暮らしの道具店」が飲食店を始めたとしても、ケアという関係性で繋がっている限り、「北欧、暮らしの道具店さんがやってる飲食店だったら行ってみたいな」と思ってもらえて、カテゴリー展開していけるという、関係性が資本となる強みがあります。

まとめ

高山さん

全体のまとめとしては、以下の通りです。

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質疑応答:組織とスキルについて

西井

ありがとうございます。本当に首を縦に振りまくった1時間でした。

クラシコムさんの場合、新卒採用を始めたのは最近で、ほぼほぼ中途採用とのことですが、いろんなスキルの方が入り、部署も分かれていると思いますが、エンジニアなども含めて、組織のあり方、ブランド、行動指針といった考え方は一緒ということですよね?

一方で、スキルを磨いていくといった取り組みは、多くされているんですか?

高山さん

ケイパビリティを獲得していくという意味で、いろんなことをやっています。

例えば、アプリのダウンロード広告は、元々エージェンシーに全てお願いしていましたが、そこから学びを得て、見よう見まねでやっていく中で振り返り、ケイパビリティとして積み重ね、今は一定のボリュームをインハウスで広告を回すケイパビリティを獲得できています。アパレルやコスメでも同様のことが起きています。

例えば、動画の撮影は外部のカメラマンさんにお願いしていますが、編集してディレクションしていく比率はほぼ100%です。そこはなかなか外部化できない、一番重要な部分だと考えています。

その他にも、アプリのダウンロード広告でインハウスでもパフォーマンスが出せるのは、クリエイティブに対する理解度が全然違うからです。社内だからこそお客さんのことを分かっているため、どういうクリエイティブが良いのかを含めて回していきやすいという部分があります。

西井

なるほど、すごく勉強になりました。貴重なお話をありがとうございました。

高山さん

ありがとうございました。

 


 

このレポート記事が、皆様の組織づくりやブランド育成の一助となれば幸いです。
今回のセミナーで学んだ「振り返り」の文化を、ぜひ皆さんの組織でも実践してみてはいかがでしょうか。

強い組織を育む、チーム学習プログラム「グロースX」のご紹介

最後に、グロースXの簡単なご紹介です。今回のセミナーで語られたような、共通言語を持ち、自律的に動ける強い組織。その実現には、個人のスキルアップだけでなく「チーム全体での学びと振り返り」が不可欠です。

グロースXは、マーケティングの全体感をチームで体系的に学び、組織力を高める人材育成サービスです。

<グロースXの3つの特徴>

  1. 手軽なインプット:独自のチャット形式アプリで、スキマ時間に1日10分学習。誰もが継続しやすいよう設計しています。
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  3. 体系的なカリキュラム:部分的な施策や戦術だけでなく、顧客理解から戦略まで、マーケティングの「全体感」を網羅的・体系的に6ヶ月で習得できます。

個人の学習に留めず、チームで学ぶことで「信頼関係の構築」「共通言語の醸成」「組織ナレッジの蓄積」を促進し、個人とチームの成長を同時に実現します。

大手企業様からスタートアップまで、多くの企業様にご導入いただいています。

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