【大好評セミナーレポート】大好評セミナー「受注率と単価の高いマーケティング支援会社がしていること」レポート全文

事業会社と支援会社、両者の立場からポイントを解説

山口 本日は「受注率と単価の高いマーケティング支援会社がしていること」というテーマで、西井さんに話を聞いていきます。それでは、西井さん、自己紹介をお願いします。

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山口 義宏

西井 西井と申します。グロースXの取締役CMOをしながら、オイシックス・ラ・大地の専門役員とNTTドコモのコンシューママーケティング部のシニアマーケティングディレクター、それからシンクロという支援会社の代表取締役などを務めています。

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西井 敏恭

山口 事業会社としてNTTドコモやオイシックス・ラ・大地でマーケティングを見ながら、支援会社としてシンクロとグロースXを経営しているという立場ですね。

まずは、西井さんに事業会社として「提案を受ける立場」から、こういう相手だったら一緒に仕事をしたいというエッセンスを紹介してもらいます。

西井 はい、私はこの20年ほど、事業会社のマーケティング責任者などをしながら、多くのマーケティングをパートナー企業様と一緒に進めてきました。その中で、事業会社側から見たときに「結果的に長くお付き合いをすることになった」や「コンペで提案いただいた時に、こういう会社を選んできた」というポイントを6つピックアップしました。

受注率と単価の高いマーケティング支援会社になる6つのポイント

①ビジョンや世界観に紐づけた提案
②勝ち筋が見えてから大きく広げる提案
③透明性のある提案
④施策の評価から得られた知見から提案
⑤自分で気づけなかった視点を教えてくれる
⑥その会社にしかない独自性のある便益

 

①ビジョンや世界観に紐づけた提案

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西井 1つ目は、「ブランド固有のビジョン、実現したい世界観、目指すゴールに紐づいた具体的施策(HOW)を提案をする」です。

この20年でマーケティングが大きく変わりました。例えば、私が化粧品会社にいた時代は、支援会社から「競合他社がこういう施策をやっていました」や「このメディアでこういうことしたら、うまくいきました」という施策単体の提案をよくいただきました。

ただ、今の時代は「(クライアント企業が)どういうビジョンを持っているのか」や「どういう世界観を実現したいのか」など、目指すべきゴールに紐づいた具体的施策(HOW)の提案であるべきです。

皆さんご存じの通り、アドテクノロジーの進化で広告配信が自動化され、広告効果に差が生まれづらい状況になっています。さらに、Google広告などデジタル広告の値段もオープンで、コストにも差別性がありません。

その結果、マーケティング施策においては、目指すべきゴールに関連する「WHO(誰を顧客として捉えるか)」と「WHAT(どんな価値を提供するべきか)」が1番の差別化ポイントになっています。この重要性については、後半でもお話します。

 

②勝ち筋が見えてから大きく広げる提案

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西井 2つ目のポイントは「大きな予算がある案件でも、スモールスタートに留めて検証して、勝ち筋が見えてから大きく広げようと提案をする」です。事業会社にいると、支援会社の方から「今回のプロモーション予算は、いくらですか?」とよく聞かれるのですが、内心では「そういう時代ではないよな」と思っています。

例えば、数億円を上回るような大きな予算があったとしても、デジタルの時代は小さな規模でスタートして、検証して、勝ち筋が見えてから投下予算を大きくするほうが、成功確率が高まります。そして支援会社の方から、そういう提案をもらうと、事業会社としては断る理由がほぼありません。

こういう提案をする会社とは、長く付き合うことになって、結果的に大きな発注になっていきます。

 

③透明性のある提案

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西井 3つ目は「企画内容や内訳が明瞭で、中身が伴っている提案をする」です。現在のオープンな世の中では、「見積もりの段階では高くして、後から値引いてくる手法」をしてくる時点で、信用できないなと思ってしまいます。

当然ですが、発注金額は信頼関係の上で成り立っています。「事業会社はわかっていないだろう」と思って、見積もりの金額を上げてくる会社とは、おそらく付き合うことがないと思います。残念ですが、まだまだこういう企業があるのが実態です。

 

④施策の評価から得られた知見から提案

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西井 4つ目のポイントは「既に実施した施策の評価から得られた知見に基づいて、改善した提案をする」です。これもよくある話だと思うんですが、「こういう施策が流行っているからやりましょう」と、新しいソリューションをひたすら提案してくる会社があります。

もちろん新しい取り組みも大事ですが、事業会社としては、すでに実施した施策の評価から得られた知見を踏まえた提案のほうが意思決定しやすいです。

デジタルの時代、施策の結果が可視化されるので、その知見を持っていることこそ、パートナーとして不可欠な条件だと感じます。いろんなソリューションを持っていること自体には、そこまで価値はないかなと思っています。

 

⑤自分で気づけなかった視点を教えてくれる

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西井 5つ目のポイントは、「事業会社側では、気づいていなかった視点や知らないことを教える」です。事業会社と支援会社は、一緒に成長できる関係が重要になります。私自身、そういう方とのお付き合いの中で、すごく成長させてもらいました。

時代はどんどん変わりますし、消費者も変化していく中で、新しい情報を入手して、常に知識やスキルをアップデートしなければいけません。そうした中で、その会社が強みを持つ領域について新しい視点を教えてくれる人は、長く付き合い続けるパートナーになっていくと思います。

山口 社内外を問わず、気づきを与えてくれる方の存在は貴重ですよね。

西井 そうですね。今の時代、マーケティング支援領域も成熟され、支援会社と理由もなく「なんとなく付き合う」ことは、減ってきていると思います。だからこそ、支援会社は、事業会社が付き合い続けたくなる価値を作らなければいけません。私も支援会社の立場としては、この価値をしっかり作っていくことを常に気にしています。

 

⑥その会社にしかない独自性のある便益

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西井 最後の6つ目のポイントです。ToC(消費者向け)のマーケティングと同じですが、「その会社にしかない独自性のある便益が明確であること」です。

よくある話ですが、「ラーメンもカレーも焼き肉もあります」というレストランが良くない理由は、マーケティングをしている人なら誰でもわかると思います。

同じように、「うちはGoogle広告をやります」「うちはYouTube広告をやります」「うちはテレビCMをやります」と、どの会社でもできるようなソリューションを並べるだけでは、事業会社が選ぶ決め手に欠けます。

冒頭でお話した通り、具体的施策(HOW)は差別化しづらく、独自の便益につながりづらいと思います。

 

受注率と単価の高いマーケ支援会社になるために

山口 ありがとうございます。では、次にマーケティング支援会社がそうなるためには、どうすればよいかを聞いていきたいと思います。

まずは、一つ目です。さきほどの話で言うと、WHOが「誰に?(顧客理解)」で、WHATが「何を?(顧客価値)」で、HOWが「どのように?(4P施策)」ですね。

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西井 はい、最初にお話したポイントと関連する話です。ひと昔前のマーケティングでは、1番下の「どのように?(4P施策)」ばかりがフォーカスされて、「うちはここができます」みたいな提案が多かったと思います。

ただ、どういう支援会社が長期的なパートナーになっていくかを考えると、やはり「誰に?(顧客理解)」「何を?(顧客価値)」が大事になります。「誰に?」とは、ターゲットとなる顧客層のニーズやインサイトへの理解を深めることです。「何を?」は、どのような価値を顧客に提供すると選ばれるのかということです。これらをどう理解していくかが、支援会社にとって1番必要なスキルになります。

実は、これは支援会社だけの話ではありません。先日、あるメーカー企業の社長とお話しした時、「マーケティングにおいて、社内外を問わず、どういう人が重要ですか?」と聞くと、「うちのお客様と何度もお会いしていて、うちの商品を使っているお客さんはこういう方だよね、と解像度が高く話ができる人」と回答されていました。事業会社側でも、顧客に対する解像度の高い人の価値が高いのです。

今日のセミナーを聞いていただいている方で、この上の2つ「誰に?(顧客理解)」「何を?(顧客価値)」を提供できていないとしたら、まずはそのスキルをしっかり磨く必要があると思います。

山口 「顧客を理解するための活動は、調査会社がやるもの」と、思考停止している人が意外と多いなと思います。

また、西井さんが一貫して主張しているのは、デジタル広告が出始めた頃は、それを運用する知識・スキルを持っていることが優位性や差別化要素になっていましたが、現在はAIによる自動化が進み、そこでの差別化が難しくなっているということですよね。

西井 そうです。支援会社にとって難しいのは、「どのように?(4P施策)」が自分たちの売り物として決まっていることです。たとえ「誰に」「何を」を理解できても、結局は「いつもの提案」になってしまうと、難しくなると思います。

本来は、「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」を議論するなかで、「どのように?(4P施策)」が変わっていきます。

そこで、自分たちが提案する商品の価値を改めて見直すのも手です。例えば、SNS広告も、新規のお客様を獲得するためだけの手法ではないはずです。リピーターに対して改めて価値を再認識してもらうためにも使えるでしょう。

 

「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」を磨く方法

山口 一般的に支援会社は、「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」を見落としがちなことが多いと感じています。事業会社側も支援会社に対して、どのぐらいパートナーとして認めるかで、ターゲットや商品などの情報の出し方をコントロールしていますよね。

私が支援会社で部下30人程度抱えていた時に苦労したのは、経験の浅い若手に「最適な提案をするためにも、営業時は課題をヒアリングしてほしい」と伝えたところ、クライアント側も右も左もわからないような頼りない人から「あなたの課題は何ですか?」と聞かれても、「なぜ、あなたにそんな話をしなければいけないの」と思われ、たいした情報は開示されないままになってしまうことでした。

この壁を乗り越える方法は、最初は違ってもかまわないので「仮説を提示すること」に尽きると考えています。事業会社の方は、どうしても自社の商品について客観的に判断することが難しいものです。だからこそ、支援会社側が「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」について新たな視点を示すと、初めて出会った相手でも「この人には相談する価値がある」と信頼して情報を共有してくれるのです。良い仮説の提示がないと、課題開示の扉が開きません。

西井 確かにそうですね。今、話を聞きながら、マーケティングの業務の中で「どのように?(4P施策)」のほうがプロフェッショナルな仕事と思われがちな気がします。実は「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」のほうがそうだと、あまり世の中に理解されていませんよね。

山口 たしかに、「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」を設定できる能力の差は非常に大きいんですよね。

私の理解では、これらはすべて掛け算のように相互に影響し合っていて、「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」のズレが大きいと、お金をどれだけ使っても成果が出ないという悲惨な結果になります。

西井 一方で、昔と比べてやりやすい時代だなと思うのは、運用型の広告を出して「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」がズレていないか、仮説を検証できるんですよね。

そうやって、きちんとトレーニングをすれば、顧客に対する解像度の高いマーケターになれる気がします。

山口 そうですね。デジタルの特徴は、毎日データを確認できるので、仮説検証のフィードバックのサイクルが速いことだと思います。なので、西井さんの言うように、例えば、今日バナー広告を出したら、翌日にはその成果を確認して「良かったのか、ダメだったのか」がわかります。

能力の高い人は、そのサイクルを細かく回して過去にはない速度で成長しています。実際に、若くして顧客や価値の解像度が高い人に出会った時には、「この人は常に成果を確認しているのだろうな」と感じます。

西井 本当にそう思います。先日、広告会社からすごく面白い広告の提案をもらい、実際にうまくいったので、 その担当者に「この顧客価値がすごく面白いのですが、どうやって気付いたのですか?」と聞いてみました。すると、商品に関連するキーワードをSNSで追いかけて、興味のありそうな人のTwitterリストを作り、投稿前後の文脈をタイムライン上でずっと見ていったら「普段からこういう生活をしていたので、こう言うと刺さるんじゃないか」が分かったと言っていました。

顧客理解の方法は様々ありますが、彼なりの勝ちパターンの中で「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」を把握し、それをクリエイティブに活用していることがわかって、本当に素晴らしいなと思いました。

 

「どのように?」の施策概要までは知っておこう

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山口 次のスライドです。今の話と関連して、「誰に?(顧客理解)」「何を?(顧客価値)」への理解に加えて、「どのように?(4P施策)」の入口にある「施策概要」までは、自分の担当以外も理解しておきましょうということですね。

西井 はい、その通りです。私自身、自分の所属する事業会社でも、「どのように?(4P施策)」は支援会社にお任せする領域が多く、社内スタッフのスキルとしてはそれほど求めていません。

ただし、「どのように?(4P施策)」を進めるうえで、概要レベルは知っておいてほしいなと思っています。また、一緒に施策を進める支援会社にも、共通の理解を持ってもらいたいですね。

山口 支援会社側で良い提案をする人は、SNSやマス広告などを提案しながらも、その周辺の取り組みとの連携もきちんと配慮していますよね。

例えば、SNSの専門会社だからSNSの知識だけを知っていればいいのでなく、他の施策との連携も重要です。それこそ現在では、SNSは他の施策との組み合わせで活用されることがほとんどですよね。

自分の専門外の施策を高いレベルで実行するスキルを持っていなくても構いませんが、ある程度の知識や経験を持っていることは重要だと感じています。

西井 非常に重要な話ですよね。SNSに関する話題が出た途端に、フォロワー数を増やす方法やキャラクターの設定についての議論が主になってしまいます。他の施策含めて、全てが繋がっていることを忘れがちになってしまうんですよね。

山口 もうひとつの観点としては、最近、特にデジタル領域でいろいろな費用が高騰していることもあって、単体でROIが合う施策が減ってきていますよね。施策全体を見たとき、即効的で費用対効果が合うものと、長期的にリターンが期待できるものが存在します。

例えば、化粧品のダイレクトマーケティングのお手伝いをしていると、レスポンスが低い広告でもブランドイメージの変化には効果があるものがあります。その広告を停止してしまうと、今までレスポンスが良かったほうの広告の効果まで低下してしまうのです。

支援会社の立場からすると、全体の繋がりを見なければ、施策のROIが判断できないということも非常に重要です。

西井 本当にその通りで、自社の専門外の施策についても概要を理解しておくことの重要性が高まっていますね。マーケティングを行う中で、すべての領域で100点を取ることは非常に難しいと思います。私自身も100点は取れていないのですが、自分の得意な領域を持ちながら、他の領域の知識も得られるように意識しています。

例えば、さきほどのSNSで例を言うと、Twitterで話題になると、自然と指名検索が増えて、それによってサイトへの流入が増えます。その影響がどれくらいなのかを事業会社と信頼関係を築いて、しっかりと把握することも重要です。

また、競合他社が実施している施策を見た瞬間に、それを自社に置き換えたときに、どのような影響を与えるのかを試算し、同様の施策を考えることも大切です。総合的に考えて、しっかりと対応することが重要ですね。

 

事業会社からの修正指示を少なくする

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山口 次のスライドでは、マーケティング業務推進の実態として「良い推進」と「悪い推進」を紹介しています。これは「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」のすり合わせができていると、事業会社からの手戻りが少なくて成果が出やすくなり、支援会社側のワークライフバランスが保てますという話ですね。

西井 そうですね。先ほどの話に戻りますが、事業会社にとって本当に重要なのは「誰に?(顧客理解)」「何を?(顧客価値)」です。それがないと、なんの脈絡もなく消費者に商品を売ればいいという短絡的な話になってしまい、結果的に商品を継続的に買ってもらうことができません。

私が支援会社のシンクロで事業会社にコンサルティングする際は、戦略のフレームワークを提供したりもしますが、それだけでなく、会社内に入って「誰に?(顧客理解)」「何を?(顧客価値)」をチーム全体で理解できるように教えるケースが多いです。実はコンサルティング先のメンバーに、お客様のことやその会社の価値について質問しても、きちんと返事をもらえることのほうが少なかったりします。

山口 支援会社側の立場に立つと、よくあるのが事業会社の社内で認識がすり合ってないというケースです。担当者と部長、課長、社長のディレクションがズレるので、修正の工数がかかるケースがあります。

支援会社側も振り回されて、工数が膨らむことがわかっている。それが、西井さんが最初に指摘した不透明な見積もりが増える一因にもなるんですよね。

西井 それは、ありますね。

山口 全員がアンハッピーだと思います。「どのように?(4P施策)」だけでなく、「誰に?(顧客理解)」「何を?(顧客価値)」についても確認しておくことで、修正の手間を減らすことができます。

私は事業会社側に立ち、広告会社からのプレゼンテーションに同席することがあります。そうすると「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」の共通認識を確認する前に施策の内容をプレゼンテーションしてしまい、 良い企画にも関わらず、不当に「駄目な企画扱い」をされてしまうことがあります。事業会社の社長や部長が、自分が現場にいたときの10年前の顧客理解を引きずっていて、しっくりこないというシーンもあります。

「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」の目線合わせは、急がば回れで、これが擦りあえば、後工程の判断と工数はすごく楽になります。

西井 もったいない話ですね。さきほどの話につながりますが、支援会社が得意とするべきは、スモールでスタートして、具体的なファクトを出して説明することです。

健全な会社であれば、社長の言葉よりも、お客様の声のほうが正しいと受け止められます。そのため、お客様のインサイトを理解して価値を示唆できるスキルは、 支援会社にとって重要だと考えています。

 

事業フェーズで判断基準が変わる

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山口 事業フェーズ別の判断基準も、個人的には重要だと考えています。私は、もともと若い頃にソニーグループ内の会社でコンサルティングを始めて、その後、より幅広く中小規模の企業をクライアントにしている企業でコンサルティングに携わりました。その時に感じたのは、大企業とスタートアップでは、マーケティングとひとことで言っても、事業フェーズが異なり、違うスキルが必要になるということです。

さらに言えば、大きな会社の中には、例えば、現在のNTTドコモであれば大規模で成熟したモバイルキャリア事業と、0→1(ゼロイチ)を生み出すような新規事業が社内で混在していますよね。このように、さまざまなフェーズの事業が存在している場合、同じ会社でもディレクションの判断基準が変わるはずです。

西井 はい、全く違いますね。例えば、「Phase1」の0→1は、PMF(Product-Market Fit)が必要で、イノベーター層に焦点を当てたコミュニケーションが必要です。次に「Phase2」の1→10に移ると、イノベーター層以外が参入するので、これまでの勝ちパターンが通用せず、コミュニケーションを変える必要があります。

さらに、「Phase3」の10→100では、事業が成長して「市場を開拓し尽くしたのでは」と不安が生じ、全く異なる事業に取り組みたくなることがあります。

ただし、実はこのフェーズを乗り越えてこそ、初めて大きな事業になります。そのため、この段階でもコミュニケーションの設計を変化させることが大事です。

山口 たしかに、支援会社がクライアントに対して「いまは1→10のフェーズで売上が10億円規模なので、マス広告への予算投下によって100億円に近づきます」という提案をよくします。

しかし、リーチを広げるだけでは、新しい顧客を獲得できないことが大半です。リーチを広げることにより顧客層が変わるため、そこで顧客が惹かれる理由も変わるのです。「どのように?(4P施策)」だけではなく、「誰に?(顧客理解)」「何を?(顧客価値)」も変化させなければいけません。

支援会社としては、リーチを広げることで顧客層が変わることを考慮し、「皆さんの商材の訴求する価値を3つのバリエーションに分け、小規模なテストをして、成功したもので拡大しましょう」と提案することで、事業会社側も意思決定しやすいと思います。

西井 特に10→100の成長フェーズは、大きなお金が動きやすいところなので、 ここに対して、しっかりと提案できると良いですね。事業会社も支援会社も、フェーズの特徴を意識していないことが多いので、ここを理解するだけで、大きな差になると思います。

 

「一人だけ優秀」では失敗する

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山口 人材開発についてです。育成によって社員の行動が変容することで、戦略が実行できたり、市場に対する解像度が高まるということですね。

西井 そうです。大事なのは、自分一人ができたとしても、結局その状態だと戦略の実行ができないということです。

コンサルティング会社がすごく良い戦略を立てても、ほとんどの会社が実行できない理由は、ここにあると思っています。どんなに優れた戦略があっても、社員が適切な行動を取らなければ、売上や利益を生み出すことができません。

私が支援会社を起業した当初から信念を持って真剣に取り組んできたのは、社員の育成です。人材育成によってスキルを身に付けた社員は行動が変わり、もっとできるようになりたいと、さらにスキルを高めて成果につなげていきます。

私がコンサルティングをするとき、業種の違う企業でも、毎回自分が同じようなことを言っていることに気づきました。私一人ができる範囲は、せいぜい5社や10社に限られるため、それを克服するためにグロースXを立ち上げたのです。

山口 私自身もこれまでの失敗を振り返ると、その原因は基本の欠如にあることがほとんどなんですよね。新しいテクノロジーを知らなくて失敗したという記憶はなくて、基礎が抜けていたことで失敗することのほうが圧倒的に多いです。

西井 ほんと、そうなんですよ。だから、 私自身も常に100%できてるわけではないのですが、どの会社に行っても、必ず同じ基本動作をしているんですよ。

シンクロという支援会社のコンサルティング先もそうだし、オイシックス・ラ・大地やNTTドコモなどの事業会社もそうです。結局、人がビジネスを作っているので、そこのスキルをどう上げていくかが、 どんな事業をしていても1番大事だと思います。

 

グロースXでなぜ成果が生まれるのか

山口 そうした西井さんの思いから、3年前に生まれたのが人材育成サービスを提供するグロースXです。最後に私から紹介させてください。

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基本設計は、「学習」「議論」「実践」という3つを組み合わせたサービス体験になっています。西井さんが過去に実施してきたマーケティング研修やコンサルティングのノウハウを一部注入しています。

具体的なフローは、まずアプリを利用して隙間時間に「学習」し、知識を得ていただきます。 次にZoomを使って月に1回、一種の集合研修を行い、学んだ内容から「次の提案にどう活かしていくのか」「クライアントの会話にどう生かせるか」を「議論」し、TO DOを明確にしていきます。

そして、実際に「実践」してみる、というフローを繰り返す設計になっています。この仕組みによって、忙しい支援会社の方でも学習できるようになっています。

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このスライドは、網羅的なカリキュラムをご紹介しています。先ほどお伝えした顧客理解や顧客価値などのOSスキルに加えて、広告やSNSなどのアプリケーションスキルについても多く扱っています。

実際の施策をきちんと実行してもらい、早期に成果をあげてもらうことを目指しています。

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12ヵ月間のコース内容と学習ゴールです。1ヵ月目が「デジタル時代のマーケティングの全体像」で、次に2ヵ月目から「誰に?(顧客理解)」「何を?(顧客価値)」に入っていき、3ヵ月目からお客様との関係構築と新規獲得になっていきます。

本日、お聞きいただいてる皆さまの中には、「もう自分はわかってるし、マーケティング歴も長いよ」という方もいると思います。ただ、そうした方にとってもマーケティング学習が重要になる視点がいくつかあります。1つ目は経営陣や中間管理職だけが理解していても、メンバーや新人がわかっていなければ、組織は機能しないという点です。メンバーのスキルを底上げするために導入するわけです。

もうひとつは、マーケティング歴が長くても、発見があるということです。私もマーケティング歴は20年ありますが、実際に取り組んでみると、意外と知らなかったことがあったり、そこで得た知識のお陰でミーティングの理解度が高まったり、社員へのフィードバックの質が上がったなと思った瞬間がありました。中堅の方々も試してみると、成長の機会になると思います。

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また、上司側はダッシュボードを通じて、社員の進捗状況やテスト結果が分かるので、誰がきちんと進めているのか、進めていないのかを把握できます。

よくあるのは、上司が「この本を読んでおいて」と渡して、部下が「わかりました」と言って、感想文を出してもらったら、Amazonのレビューのコピペでしたみたいな話がよくあります。

「本当に勉強しているかを疑わなくて済むようになったのが、 グロースX導入の便益です」とおっしゃる方もいます。

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山口 グロースXにはカスタマーサクセスのチームがおり、専任の担当者が付いて月に1回、学習を振り返る「共通言語ミーティング」を実施しています。これは本と同じだと思うのですが、 学習したことをすぐ実行に移せる人は、一般的には数パーセントしかいないと言われています。

共通言語ミーティングで、皆さんの業務に学習内容を当てはめて、たとえば、「提案先に対して活かせることはないですか」と聞くと、意外とアイデアが出てきて、実践する人が増えるのです。

グロースXでは、そのきっかけを作る役割を担っています。私たちはコンサルティングサービスではないため、提案資料をつくったり、修正したりすることはしません。しかし、提案内容の方向性に変化をもたらすきっかけをご支援させていただきます。

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山口 次のスライドは、「マーケティングの全体感と共通言語がもたらす変化」です。組織内の言葉の定義と理解がそろうことで、議論が空中戦にならずに噛み合うようになります。

事業会社が支援会社に対して「話したことが理解されていない」と感じると、情報を共有する意味がないと思われてしまうので、言葉の理解を確かなものにするのは非常に重要です。

また、繰り返しになりますが、施策の個別最適ではなくて、全体を理解することで、例えば、「単体の施策ではROIは合わないかもしれないが、別の視点を加えるとROIが合う」というプレゼンテーションが可能になります。他の施策との連携もスムーズに進めることができるでしょう。

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山口 次のスライドは、グロースXの人材育成支援実績になります。事業をスタートして3年弱ですが、500社、2万人以上の方々に受講いただいています。支援会社の皆様は右側のロゴ一覧になり、社員数2名から1000人を超える企業まで、様々な企業にご活用いただいています。

マーケティング支援会社側の利用目的としては、新入社員と中途社員が入社した際に、最初に受けさせてスキルを底上げさせることがあります。また、今日のテーマである付加価値の向上や取り扱いの拡大を目指して、社員のスキルを高めたいという狙いがあります。

また、ベテランが多い会社だと、デジタルに苦手意識があるので、新しい知識をインプットして、それに適応した提案ができるようになりたいというケースも多いです。

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山口 最後のスライドになります。このグラフでは、グロースXを導入している東証上場企業の業績(赤色)と、東証に上場している全企業の業績(青色)を比較しています。2019年から2022年までの売上成長率に注目すると、導入企業のほうが高い水準にあることがわかりました。

もちろん、これは学習と業績の因果関係を示すものではなく、我々の貢献だけで業績が伸びたと証明することはできません。しかし、何らかの形で貢献しているのではないかと考えています。

西井 このグラフを見ていただくとわかる通り、導入いただいた企業のほとんどが売上をしっかりと伸ばしています。そんな結果に対して、「なぜですか?」とよく聞かれますが、実は当たり前なんですよね。

たとえば、サッカーの強いチームは、日々練習を重ねて強くなります。同じように、マーケティングも練習を重ねることで、成果を出せるようになります。

でも、日本の場合、練習しない企業が圧倒的に多いのです。なので、しっかり練習を重ねて基礎力がしっかりと向上してくると、当たり前のことですが、練習を怠っている企業に勝つことができます。

山口 以上で、本日のセミナーは終了になります。マーケティング支援会社の方が受注率と単価を高めていくために、社員育成のひとつの選択肢として、グロースXをご検討いただけますと幸いです。ありがとうございました。

西井 ありがとうございました。