左から
・インサイトフォース 代表取締役社長 山口義宏
・Office K 代表取締役 田岡敬
・グロース X 代表取締役社長 津下本耕太郎
・シンクロ 代表取締役社長 /オイシックス・ラ・大地 専門役員 CMT/GROOVE X 取締役CMO 西井敏恭
・レノボジャパンCMO マーケティング統括本部 統括本 部長/NECパーソナルコンピュータ コンシューマ事業本部 マーケティング部長 劉西喬(リュウ シーチャウ)
※ ICCサミット KYOTO 2021 公式写真使用
左から
・インサイトフォース 代表取締役社長 山口義宏
・Office K 代表取締役 田岡敬
・グロース X 代表取締役社長 津下本耕太郎
・シンクロ 代表取締役社長 /オイシックス・ラ・大地 専門役員 CMT/GROOVE X 取締役CMO 西井敏恭
・レノボジャパンCMO マーケティング統括本部 統括本 部長/NECパーソナルコンピュータ コンシューマ事業本部 マーケティング部長 劉西喬(リュウ シーチャウ)
※ ICCサミット KYOTO 2021 公式写真使用
9月6日〜9日、京都で開催されたカンファレンス「Industry Co-Creation (ICC) サミット KYOTO 2021」にて、「トップマーケター直伝、マーケティングで事業をドライブする組織・人づくり」をテーマにしたセッションが行われた。
スピーカーとして、Office Kの田岡敬氏、グロース Xの津下本耕太郎氏、レノボジャパン/NECパーソナルコンピュータの劉西喬(リュウ シーチャウ)氏、インサイトフォースの山口義宏氏、モデレーターとしてシンクロ/オイシックス・ラ・大地/GROOVE Xの西井敏恭氏が登壇。
外資・内資経営者、ブランド経営支援、BtoB&マーケ支援と、それぞれが違う立場からマーケティング領域の組織・人材育成についてディスカッションを交わした。
西井 新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、DX推進の動きが活発になっていますが、その一方でDXを進める上で欠かせないデジタル人材やマーケティング人材不足が起きていますよね。企業がそうした人材を獲得するハードルもかなり上がっていると感じています。
人材獲得だけに関わらず、組織構築や人材育成で困っている企業も結構多い。いま自分が複数社で働いているので実感しているのですが、企業によってデジタルの立ち位置やマーケティングの定義などが異なるため、各社が色々な問題や悩みを抱えています。
そこで今日は、マーケティングや経営、ブランド戦略、BtoBのマーケ支援など、様々な業界で異なる経験を持つ方々をお呼びして、アドバイスをもらおうと思っています。
まずは議論を進めるにあたって、マーケターのキャリアについての共通認識をつくるために、スピーカーの山口さんにご著書『マーケティングの仕事と年収のリアル』に書かれている「マーケターの6つの成長ステージ」を紹介してもらいます。
山口 はい、マーケティングの業務というのは多岐にわたるため、私はマーケターの成長に合わせて6つのレイヤーに分けています。
レイヤーの一番下にあるステージ1は「基礎習得の見習い」。これはマーケティングに関わるのが1年目で、まだ基礎概念や用語もわからない段階のことです。
ステージ2は「担当業務の実行者(ワーカー)」で、商品企画やPRなど何らかの業務を上位者の指示を受けて担っている人。ステージ3は「特定領域の施策の専門家(スペシャリスト)」で、プロダクトやPR、店頭の仕掛け、デジタルなど、ある領域のスペシャリストです。
ステージ4「マーケティング施策の統合者」は、ブランドマネージャーを指します。いわゆる4Pの中で限られた予算をどこに充てるのか、商品のモデルチェンジなのか、広告費なのか、またはパッケージの改革なのかなどを判断して、全体最適を行います。
ステージ5は「ブランド・マーケティング全体の責任者(CMO)」。複数ブランドを抱えていて、それぞれのブランドに対して適切に人や予算を配分して、会社としてのリターンを最大化させることが役割の人です。最後となるステージ6が「マーケティングに強い経営者」ですね。
ステージを上るほど、役割がスペシャリストからマネジメントに寄っていき、結果で評価されていきます。この6つはそれぞれ視界が違うため、議論を進める上では、どこのステージの話なのか、すり合わせる必要があると思います。
西井 解説ありがとうございます。マーケティングのキャリアをつくっていく上で、よく議論になるのは、ステージ3「特定領域の施策の専門家」のキャリアの後に、どこを目指せばいいのか、という問題ですよね。
山口 はい。そもそもステージ4・5に当たるブランドマネージャーやCMOという役職が社内に存在しないケースが大半です。例えば、CMOがいなくても、経営企画部門が各ブランドの収益性を見ながら、どこに投資すべきか経営者に相談していたりします。
また、事業会社では4、5、6のような仕事があるのですが、支援会社では通常1、2、3を支援する仕事ばかりで、4以上のステージに触れられる機会が少ないという構造的な話もあります。
西井 これらによって、どんな問題が起きていますか?
山口 よくあるのが採用側のリテラシーが低いために、ステージ3の何らかに特化したスペシャリストを4、5の立場で迎え入れ、「あれっ? お願いできると思っていた範囲とだいぶ違う」といったミスマッチが起こりがちです。
西井 ちなみにステージによって、年収はどのぐらい違うんですか?
山口 一般的にですが、マーケティングの世界では、何らかのスペシャリストが得られるのは1千万円前後なことが多いですね。ただ、広告業界のトップクラスや独立されたクリエイターの方は数千万円から億を超える方もいるので、必ずしもステージ3が4よりも年収が低いということではありません。
これは田岡さんのほうがよくご存知だと思うのですが、需要と供給のバランスで、供給が足りていない領域は値段がどんどん上がっていく関係になっていると思います。
西井 ここで言うと、田岡さんがステージ6なので、一番年収が高いと思うんですけど(笑)。
田岡 全然、そんなことありません(笑)。ただ1つ言えるとすれば、ステージ4以上はPL(損益計算書)を見ているかがキーワードになっていて、最後数字を合わせられるかどうかが全てだと思います。
山口 おっしゃる通りですね。結局のところ、収益が出せるかどうかにかかっています。
西井 劉さんは、いかがですか?
劉 これを見ると、私は3を飛ばして4にいっちゃったなと思いました。P&Gでステージ1と2、レキッドベンザージャパンで4、ジョンソン&ジョンソン(以下J&J)で5と6、その後、スタートアップのFOLIOと現職のレノボジャパンでステージ5の位置にいました。振り返ると、ステージ4になったあと、必死に3を理解できるよう時間を使っていたように思います。
西井 たしかに、事業会社で3でいう特定領域の施策だけを多く担当することは、あまりないかもしれないですね。
西井 さてここからは、この6つのステージそれぞれについて、どんな問題が起きていて、それにどう対処すべきかについて考えていきましょう。まずステージ1の「基礎習得の見習い」から聞いていきます。
このステージに関して「マーケティングについて社内でどのように基礎を習得させていますか?」と質問をしたところ、津下本さんが問題に感じていることがあると回答をくれましたよね。
津下本 はい。ステージ1、特にその人の潜在能力を重視して選考するポテンシャル採用をした会社は、マーケティングというフィールドに対して真剣にオンボーディングしていない、と感じています。
大体が入社後にいくつか座学を設けて、その後は先輩社員にくっついてOJTを受けさせる流れかと思うのですが、教える側の先輩社員が「きちんとマーケティングを学んだことがないから教えられない」「目の前の仕事に暗中模索で取り組んでいる」という状態の会社が多く、この辺りは大きな課題だろうと考えています。
西井 田岡さんは、いろいろな会社を経験されていますが、ステージ1の人たちに対しマーケティングの基礎スキルを教えている会社はありましたか。
田岡 ないです。
西井 そうですよね。私自身も数社経験しましたが、いきなり現場に放り込まれて「あとは本を読んで勉強しておいて」みたいな世界ですよね。
劉 私の場合は、社内での教育体制が整っていましたね。ファーストキャリアがP&Gだったのですが、そこはマーケティングのトレーニングとOJTのバランスが非常に優れていました。
例えば、新卒1年目にアジアのマーケターが香港に1週間集められたことがあるのですが、それは「エージェンシーマネジメント」として、広告会社とどのように関係性を作っていくべきかを体系的に学ぶ場でした。
そこで教わったのはシンプルで、広告会社にリスペクトを持って接することの大切さです。広告会社にお金を払って仕事を依頼しているのは、自分たち以上のクリエイティビティを相手が持っていることなんだから、いかにコミュニケーションによって良い関係性を築き、それを引き出していくかといった内容を1、2週間に渡って教わりました。
田岡 外資はすごいですよね。私もマッキンゼーに入ったときは、最初の1ヵ月間を研修だけに費やしました。それとは別に、MBAを持っていない人を世界中から集めてホテルに3週間缶詰にして、ミニMBA研修をしてくれるんです。
津下本 OJTに頼ると、どうしてもアンバランスな人材に育つリスクが高くなりますので、企業として社員がマーケティングスキルを身に着ける取り組みを行うことは大切ですよね。
ただ、そのときの問題として、企業が全体でどういうスキルを身につけなきゃいけないかを定義できていなくて、スキルをパラパラと身につけていく人材育成になりがちな点があると思っています。特にポテンシャル採用や異動で人を受け入れたとき、その傾向が強く出てきます。
田岡 OJTを一生懸命やっていると、「あれ?これ毎回同じこと教えてるな」と思ったりしませんか? 例えば中途採用するたびに、新しく入ってきた人たちにいつも同じ内容を伝えていることに気づいたら、自然と研修化しようと考えるようになるのではないでしょうか。それをやりつくした企業が、OFF-JTを考えるようになるのかなと。
山口 同感ですね。私が『マーケティングの仕事と年収のリアル』という本を書いたのも、キャリア相談を受けるたびに毎回同じことを話しているなと思ったからなんです。
津下本 議論を聞いていると、結局のところ、マーケター教育の環境が整っていない会社が多いというのが日本の現状かなと思っています。
我われは人事やマーケターの人材要件の整理を依頼されることがあるのですが、これが結構大変なんです。各社の市場理解、チームプレイの方法などをまとめるだけでも苦労ですが、顧客理解やマインド、ファイナンスなどの共通スキルを前提にしないと理解が深まりません。このあたりを外側からまかなうものと、自分たちでつくるものを切り分けて整理していくことが重要です。
それから、5年経つとスキルが古くなるのに、社内のおじさんが間違っていることを延々と教えているという問題に陥っている企業も多いんですよ。
西井 田岡さんは、一度つくった研修内容のアップデートをどのようにされていますか?
田岡 広告代理店の最新の情報・知識をどう取り入れるかが重要だったので、発注先を選ぶときも学習機会をもらえるかどうかは意識していましたね。
広告代理店のほうが最新の情報・知識を持っているので、情報は非対称なのですが、だからといって広告代理店のいいなりになるわけにはいきません。それでも広告主側でコントロールするスキルが、実は一番重要のように思えるんです。
西井 社内で身につけるスキルと、外に出しやすいスキルを見分けるってことですよね。
田岡 まさにそうです。例えば、Googleのアルゴリズムをクライアント側でキャッチアップし続けるのは、リアリティがないんですよね。広告代理店やメディアが話している内容をロジカルに理解して、議論できる、判断できるスキルのほうが大事だと思います。
西井 続いて、ステージ2の「担当業務の実行者」に移ります。ここの課題について、劉さんいかがでしょうか。
劉 当社のマーケティングチームの業務を見てみると、オフラインに対してのウェイトが高いんです。もちろんそれも大切ですが、今はコロナの影響でオンラインで買い物をする人が急増しているので、時間の多くを「新しいカタログをどうするか」に割くのではなく、より売上貢献が見込めるECを伸ばすことに時間を使った方がビジネス的にはいいはずです。ただ、そのことに指摘されるまで気づかなかったりするものです。
「与えられた仕事をきちんとこなす」という教育をされてきた面があるかもしれませんが、そのあたりのマインドセットを変えることの必要性を感じました。あとは、細かいKPIをだけを追ってしまうというのもあります。
山口 目の前の数字だけを見て、全体を捉えられていない人は多いですよね。結局、仕事ができて評価される人は、ステージ2や3の頃からPLを意識して、きちんと売上と収益を伸ばすために自分の仕事を見直せる人なんですよね。
それが自分の部門だけで改善できなければ、近接の部門や担当者に話して、リソースの組み換えをお願いしようと考えられる。このマインドセットがあるかないかが本質かなと思います。
田岡 メーカーの組織はあまり変わらないので、リソースもあまり変わりません。ですがデジタル領域で言えば、リスティングを強化したり、SNSを頑張ったり、常に変化していくものです。リソースは常に張り直すものであるという定義がされていないように思います。
津下本 支援会社側だと、自分たちがSEOに特化していたら、SEOの伸びしろがなくなったとしても、他の策がないので「別のことをやりましょう」とは言えない面もあると思います。本当の意味で総合的に支援できる会社は少ないですよね。
劉 それと、マーケティングの仕事はクリエイティビティを発揮して新しいことにトライして数字を上げるという、本来とても楽しいものなのですが、周りを観察していると、辛そうにタスクをこなしているという人も多くて…。ここは本人に原因があるというよりも、組織として改善すべき部分があるように思います。
西井 そうですね。ステージ2については、ジョブを変えてあげることも必要だと思います。新規獲得の広告を運用したら、次にCRM担当を任せてみたり。いくつかの業務を経験すると、ビジネスに対するマインドセットが生まれたり、自分の向き不向きを見つけることもできるのではと思います。
津下本 マーケティングの現場で楽しいか楽しくないかの差は、「顧客に対しての手触り感」を持てるかどうかだと思っているんです。それが掴めていれば、絶対に楽しいはずなんですよね。
西井 お客さんと直接繋がっている部署では、その声を聞きやすいので、楽しさの源泉になっているところが多いですよね。
津下本 はい。支援会社の場合、クライアントのその先のお客さまに会ったことがない人材もいたりするので、ピントのずれた提案をしてしまうこともある。それも構造的な問題だと考えています。
劉 私は今の会社に入社した直後、営業のアシスタントとして店頭に連れていってもらいました。やはり、現場の手触り感がないと何を承認するにしても不安なんですよね。
山口 根本的にはどういう需要があるか、どんなインサイトをくすぐれば物を買いたくなるかなど、顧客理解が大事です。気になる対象者がいたらすぐに声を掛けて話を聞く。そういうことを繰り返したり、好奇心を持ち続けられるかが重要のように思います。
顧客理解で言うと、本当の意味で腹落ちするのは定性調査です。でも、定性情報は発言を聞いている現場を100としたら、そのレポートで伝わるものが20ぐらいしかない。だから経営層の意思決定を変えたいときは、インタビューの現場に呼んだり、ビデオでサマライズして「今、顧客にこんな風に見られているんですよ」と強くメッセージしたりというのは、テクニックとして行っています。
津下本 ステージ3で言えば、部分最適をする専門家をつくらないことが大事だと思っています。例えば、BtoBビジネスでは、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスの3部門でコラボレーションしていきますが、それぞれの業務が理解されていないと、雑なコミュニケーションをしたり、双方に感謝しなかったりします。部門間のコンフリクトを解消できていな時点で、負けが確定していますよね。
山口 大きい会社はクロスファンクショナルチームをつくり、課題の整理から解決策を部門横断で検討する必要があると思っています。オーナー企業の場合は「右向け右」と言ったら右を向くんですが、そうではない企業はクロスファンクショナルチームで動かす以外は、全く動かないというのが私の実感です。
田岡 山口さんがおっしゃる通りで、部門間でコンフリクトが起きているときの議論の寄りどころは、お客さんになりますよね。
山口 はい、負けている会社だと、見ている顧客像は声の大きな上司が現役時代に触れていた10年前や20年前のお客さんということがありますよね。顧客調査もしているのですが、調査の方法が悪かったり、調査報告会が形骸化して戦略と施策の見直しに至っていないことも多いですね。
西井 劉さんは、別の意見として、メンバーのキャリア背景がバラバラだという点を課題としてあげていますね。
劉 キャリアの背景がバラバラだと、共通言語がないんですよ。私は消費者の人生をどう変えたいのか、消費者を主語にして話して欲しいんです。それがあると腹落ちするし、実際アクションもクリアになりますが、その話を何回しても主語がずれることはあります。でも、同じ会社で同じトレーニングを受けていたらそんなことはないので、そこは諦めずに繰り返し話をしています。
田岡 以前勤めていたメーカーにいたときは、宣伝部長や課長が親会社から派遣され数年後に戻るケースもあったりで、その結果、会社の広告のことを一番分かっているのが長く独占的に発注している広告代理店という状況になっていて、これが噂に聞くメーカーあるあるかとびっくりしたこともありました。私が入って、すぐにコンペにしたんですけどね。
あとは、現在のデジタルマーケティングはすごく複雑なので、ジョブローテーションで腰掛けで行えるものではなく、専門職だということを経営に理解してもらうことが大事ですね。
山口 ステージ4の課題としては、さきほどのクロスファンクションチームが必要な理由にも結びつくのですが、事業会社あるあるだなと思うのは、事業部や商品企画部、宣伝部門、営業部門の連携がとれていないということです。
どういうことかと言うと、事業の順番として商品開発や事業部門がコンセプトを決めた後に、宣伝部門や広告会社が「その訴求ポイントでは売れない」と言い出して、さらにその後に営業部門が「それでは棚がおさえられない」と言うんです。その結果、ターゲットも施策もバラバラでリソースが分散してしまい、売れないし、ブランドもできないという悪循環に陥っているケースは多い。
大手企業のマーケティングの問題の8割は、その組織間の連携にあると思っています。合意形成ができないまま走るのではなく、しっかりクロスファンクションチームで合意をとる。面倒ですが、これをやる以外に解決策はないと思います。
西井 たしかに、私がコンサルティングをしていても、こういう企業によく出会います。具体的に、どうやって合意形成をするんですか。
山口 情報を揃えることと、考え方のプロセスを揃えること。この2つを実施すれば多くの場合は解決します。あとは、限られているマーケティング予算を何に使うのか。一番伸びるのは何か、顧客視点から評価して見定めないと浅く広く予算をばらまくことになって結局、効果が出ないんです。俯瞰で考えられる人を育てることが大事ですね。
田岡 日本の会社だと、マーケティング部署がないことも多いので、まずは誰がリーダーシップをとるんだ、というところから握りにいかないといけないですよね。ただマーケティングの4P全体だと、議論が大きくなりすぎて進まないことがあるので、一旦は半分ぐらいを最適化させて、セカンドステップで残りに手をつけるなど、段階をつくることが大事ですね。
西井 私もマーケティング責任者をさせてもらうときは、オーナー社長と一緒に組む場合が多いのでやりやすいですね。社長と握れば、ほとんどのことはさせてもらえますし、まずはデジタル領域を見させてもらって結果出すと、もう少し広い範囲も任せてもらえます。
山口 やはり一番効果的なのはリソースの組み替えなので、その合意を社長とつくるのが一番ですよね。例年通りにリソースを配分して伸びない会社がたくさんあって、それに傾斜をつけるだけで大きく伸びることがあります。そうなると翌年は楽で、どう傾斜配分をつくればいいかの議論からスタートできます。
田岡 そこではクイックウィンが大事ですよね。あとは、専門家を中途採用で入れようというときは、給与水準も含めて変えてもらう必要があります。特にIT人材が高くなっていますよね。
山口 たしかに、契約社員のマーケティング部長も増えましたよね。
西井 最後は、マーケティングに強い経営者ですね。田岡さんいかがでしょうか。
田岡 経営層の認識を一致させることが重要です。それにはファクトが重要です。例えば、アンケートをとって「70%の人がネットで調べてから来店する」と分かると、途端にデジタルに力を入れるという経営の意思決定ができます。誰もが「きっとそうだろう」と思っても意思決定に至らないことは多く、ファクトにより「やっぱりそうなんだ」と意思決定になるまで持っていくことが大事です。
西井 経営層にデジタルリテラシーがないという問題は、この20年ぐらい言われていますよね。でも、経営者の方は、トップになるぐらいの実力者なので、きちんとユーザーデータを見せると、だいたい「ノー」とは言わないんですよね。
山口 私はマーケティングのスキルとして、CFOにわかる言語に翻訳できるかでその人の給料が倍ぐらい変わると思っています。それで合意形成ができる確率も変わるし、自分のマーケットのプライスも変わるんです。
私はよく「皆さんは株主からお金を預かったファンドマネージャーです。ファンドマネージャーとして投資してリターンを最大化するというときに、なんとなく去年と同じだからとそのままにせずに、伸びそうな株に投資額を増やしますよね」という話をします。
経営者に対しても「こういうふうに投資を組み換えたら、こういうリターンを得る可能性がある」と、粗くてもいいからシミュレーションすると、意欲のある経営者は目つきが変わります。やはり数字で話すことが、大事だと思います。
劉 経営会議でも、それができなくて轟沈している人がときどきいますね。
山口 そうなんです。ファイナンス側からすると、本当はもっとマーケティング部門に自分たちを説得してほしいんですよね。だから、ファイナンスの人にきちんとわかる言語で説得できると、話が通る確率がかなり上がるんです。
西井 おっしゃる通りで、ステージ6になると、ファイナンスは必須の知識として持っていなきゃいけないですね。
最後は、少し駆け足になったのですが、今日はいろんな視点からお話いただきました。こちらで、このセッションは、終了になります。ありがとうございました。
津下本 耕太郎
株式会社グロースX 代表取締役社長
2004年上智大学理工学部卒業。システムエンジニアからキャリアスタート。
2007年にアライドアーキテクツ株式会社に参画し、SNS支援事業やモニプラなど各種事業を大きく収益化する。2012年より取締役として全社の80%の売上を統括し、2013年IPO(東証マザーズ市場に株式上場)。2018年独立起業。2019年株式会社シンクロに新規事業「コラーニング」アプリの事業部長として参画。2020年8月に法人化し、代表取締役社長に就任。好奇心が溢れ出てしまっている中年の少年。これまで約10の事業立ち上げを経験。43ヵ国旅行者。フットワークは非常に軽く、この事業にコミットするかも即日で決断。社会に大きく貢献できる事業を、魅力的なお客様、仲間と、常識に囚われずにやれる今回のチャレンジをこよなく愛し、没頭中。
西井 敏恭
株式会社グロース X 取締役CMO
オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員CMT
GROOVE X株式会社 取締役CMO
株式会社シンクロ 代表取締役社長
1975年5月福井県生まれ。金沢大学大学院卒業。2001年から世界一周の旅に出る。帰国後、旅の本を出版し、ECの世界へ。2014年に二度目の世界一周の旅をしたのちシンクロを設立。大手通販・スタートアップなど多くの企業のマーケ支援やデジタル事業の協業・推進を行う。
山口 義宏
インサイトフォース株式会社 代表取締役
1978年、東京都生まれ。ソニー子会社で戦略コンサルティング事業の事業部長、リンクアンドモチベーションでブランドコンサルティングのデリバリー統括などを経て、2010年に企業のブランド・マーケティング領域特化の戦略コンサルティングファームのインサイトフォースを設立。 BtoC~BtoB問わず企業/事業/商品・サービスレベルのブランド~マーケティング戦略の策定、CI、マーケティング4P施策の実行支援、マーケティング組織開発及びマーケティングスタッフの育成を主業務とし、これまで100社を超える戦略コンサルティングに従事。
田岡 敬
株式会社 office K 代表取締役
リクルート、ポケモン法務部長&US子会社SVP、マッキンゼー、ナチュラルローソン執行役員、IMJ常務執行役員、JIMOS代表取締役社長、ニトリホールディングス上席執行役員、エトヴォス取締役COO、日立グローバルライフソリューションズ 常務取締役CDOを歴任。
現在は株式会社office K 代表取締役として、さまざまな企業のマーケティング・経営支援を行なっている。北の達人コーポレーション 社外取締役、イルグルム LTVForecast共同開発者/アンバサダー。
劉 西喬
レノボジャパン合同会社 CMO マーケティング統括本部 統括本 部長/NECパーソナルコンピュータ株式会社 コンシューマ事業本部 マーケティング部長
一橋大学卒。P&G、RBで複数消費財カテゴリーのマーケティングを経て、J&J Japanのマーケティング本部長に就任。全ブランドの売上及びその収益責任を負い、かつデジタル戦略を統括。2年間で全ブランドのマーケットシェア向上を実現した後、J&J香港の現地社長として赴任、2年間でV字回復を成功させる。FOLIOにてCMO&副社長を勤めた後、2020年7月よりレノボ・ジャパン合同会社のCMOに就任。
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