【セミナーレポート】ネットで売れるための評判戦略〜人間理解とトリプルメディアで紐解く顧客発信の威力〜

取材記事

2023-11-10

※本記事は2023年9月に開催されたセミナーのレポートです

デジタル時代における「評判」の重要性は言うまでもありません。会社や商品に関する評判は、消費者が信頼性や価値を判断する上で決定的な要素となるからです。例えば、消費者はデジタルデバイスを巧みに使いこなし、購買前に評判や口コミを確認し、自身のニーズに合致するかどうかを判断するケースが増えました。したがって、優れた評判はブランドの魅力を高めるだけでなく、競争優位を築く助けにもなります。

しかし、評判の形成は容易ではありません。顧客の心理やニーズを深く理解し、適切なコンテンツやコミュニケーションを通じて、顧客の共感を生む必要があります。そこで、本セミナーでは、書籍『SNSマーケティング7つの鉄則』などの著者として知られ、デジタルマーケティングに詳しいスノードームの室谷良平氏が評判戦略の要諦を解き明かし、顧客との強固な結びつきを築く方法を詳細に紹介します。

 

 

評判は「流入数」と「CVR」に好影響を与える

スノードームの室谷と申します。本日は「ネットで売れるための評判戦略」をテーマにお話します。最近はUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)とも呼ばれるインターネット上の評判や口コミが、消費者が商品を知るきっかけになったり、購買時の決め手になったりしています。本日は、この評判をうまく活用する方法や日々の実践のヒントについてお話ししようと思います。

株式会社スノードーム 代表取締役 室谷 良平 氏
1988年北海道生まれ。マーケティング戦略立案から、SEOやソーシャルメディアのデジタルを駆使したコミュニケーション設計に豊富な知見を持つ。関心領域はデジタルテクノロジーと人間理解。
人材ベンチャーのウェルクスでは、10以上の求人メディアの会員獲得に向けSEOやコンバージョン改善のWebマーケティングをリードし、急成長に貢献。その後、ホットリンクではマーケティング本部長を務め、BtoBマーケティング・PR・インサイドセールスの部門を統括。ブランドマネジメントやマーケ人材育成などの仕組みを構築。2023年に株式会社スノードームを設立。
主な著書に『SNSマーケティング7つの鉄則』(共著、日本経済新聞出版社)『現場のプロが教える! BtoBマーケティングの基礎知識』(共著、マイナビ出版)がある。X(Twitter)アカウント:@rmuroya

 

消費者は当たり前の消費行動として、評判を頼りにしています。まずは、この大原則を確認し、その上で話を進めていきましょう。

デジタルマーケティングでよく使用される数式として、「CV数 = 流入数 × CVR」があります。Webサイトへの流入数と CVR(コンバージョン率)を掛け合わせることで、CV数(コンバージョン数)を算出するというシンプルな式です。

評判がこの数式にどのように影響を与えるかと言うと、SNS上で「この商品は良いよ」「これを買ってみた」などのポジティブな声が広がることにより、Webサイトなどへの訪問者数が増加し、流入数が増えます。

さらに、評判に触れることで、商品への欲求が増強されたり、不安が解消されたりすることで、CVR(コンバージョン率)も上昇します。

つまり、評判は流入数とCVRの両方にプラスの影響を与えると言えるでしょう。

また、AmazonのようなECプラットフォームでは、商品レビューの数が多いほど、検索結果の上位に表示されやすくなる仕組みがあります。

加えて、UGCを通じて、企業は顧客がどのような点で商品やサービスを評価しているのか、自社が気づいていなかった便益を発見することがあります。「こんな使い方ができる」「この機能が意外と便利」といった顧客の声は、他の消費者にとって参考になるため、自社のコミュニケーションを改善したり、それを知ることで購買層が広がる可能性があるのです。

評判で思わず「高価格帯」のほうを買ってしまった経験

ここで私が評判の価値を実感した具体的な例として、最近購入したランニングシューズの体験をお話したいと思います。

私は趣味でランニングを楽しんでおり、これまでナイキのランニングシューズを使っていました。約3年前に購入したシューズは、かかと部分がすり減ってきたため、今履いているナイキを第1候補に、近隣店舗で情報探索を始めました。

最初に目を付けたのは、定価1万8000円の商品がセールで9000円になっているものでした。もう1つの候補は、1万8000円で販売されている新しい商品です。色々と比較していく中で、最初はセールの9000円の商品で十分だと思っていました。

しかし、商品の評判を調べていくうちに、結局1万8000円の商品を買いました。スポーツショップで該当のシューズの横にQRコードが貼られており、スマホで読み込むと、店舗スタッフさんのレビューが書いてありました。

そのレビューの中に、1万8000円のシューズには「怪我をしにくい」と記されていたのです。最初に店内で試着した際には、履き心地やデザイン、価格を重視して選んでいましたが、このレビューを読むことで「怪我のしにくさ」という新しい便益に気付かされたのです。

私は週に1回程度ランニングをしており、時々くるぶしや膝に痛みを感じることがありました。そうした経験を持っていたため、「怪我をしにくい」という便益が私にとって魅力的に映りました。

先ほどの「CV数=流入数×CVR」という数式で言えば、レビューがCVRに効いたわけです。ナイキという同じブランド内での比較検討でしたが、評判という外部からの情報によって高価格帯の商品を選ばされました。

また、最近私は骨伝導イヤホンを購入しました。以前使っていたイヤホンではランニング中に周囲の車や風の音が気になり、快適に音楽を楽しむことができませんでした。そんなある日、電気店で骨伝導イヤホンを試して見たところ、音質がとても良く、興味を持ちました。

私が候補として考えたのは、約1万円の商品です。当初は、シューズを選ぶ際と同様に低価格のラインで十分だと考えていましたが、帰宅後にYouTube上のレビューを見た結果、結局はもっと高価格帯の商品をAmazonで購入してしまいました。

そのレビューでは、ランニング中は汗をかき、イヤホンが常に水に触れる状態になるため、防水性の高い商品を選ぶべきだと説明していました。このレビューを参考にして、私は最初の予算を超える防水性の高いほうを買いました。

このように、店舗スタッフやインフルエンサーのレビューを参考にすることで、購買の際に背中を押してもらったのです。

評判形成をマーケティングにどう活かす?

それでは、マーケティング担当者が評判やUGCをどのように活かして、購買行動へと繋げていくかについてお話しましょう。

デジタル上の評判は、大きく2つに分類できます。「UGCの生成」と「(Webサイト内で)掲載されたレビュー」です。

前者は、SNSやYouTubeなどのプラットフォームを通じて拡散されるコンテンツを指し、これにより特にリーチを拡大する効果が期待できます(CVRにも好影響を与えます)。これは、マーケティング上でのアテンション(注意喚起)に貢献し、商品・サービスの認知度を高める役割を果たします。

一方で、後者はAmazonなどのECプラットフォーム内のレビューで、ECサイトや商品詳細ページを訪問したユーザーにのみ表示される情報です。これはCVRに影響を与え、ユーザーを購買へと導く役割を果たします。

トリプルメディア(メディアを3つの形態に分ける考え方)に基づいて、評判形成の施策を分類していくと、次のようになります。

オウンドメディアにおいては、Instagramに投稿されたお客様の声をWebサイトに埋め込む方法が考えられます。例えば、H&Mグループのファッションブランド「COS」は、ハッシュタグ 「#OK COS」を付けた投稿を自社のECサイトに掲載しています。

ユーザーはこれらの投稿を見ることで「こんな着こなしもあるんだ」「私も身長が同じぐらいだから、こんな見た目かな」といったイメージが湧くので、結果として商品ページのCVRを向上させる効果があります。

一方で、アーンドメディアでは主にSNS投稿を促進する施策が取られます。これはUGCの生成を刺激し、その拡散を促すことを目的としています。

私自身も新刊のプロモーションとして、書籍のあとがきなどで読者に対してX(旧:Twitter)で「# SNS黒本」のハッシュタグを付けて感想を投稿するように呼びかけています。ハッシュタグが付いていない投稿であっても、私がそれを付け直してリポストすることで拡散を促しています。

この表を見て、まだ試していない施策があれば、ぜひ検討してみてください。

ラーメンを例に考える「言及在庫メソッド」

トリプルメディアの中で、特にアーンドメディアにおけるUGCの増加に焦点を当て、その方法について詳しくお話します。UGCを増やすために役立つ考え方として「言及在庫メソッド」を取り上げ、具体的な事例を交えて説明します。

UGCが生まれる原理原則として、消費者の頭の中に商品やサービスに関するネタがないと口コミは生じません。脳内にネタがなければ、話す理由も内容もないわけです。つまり、消費者の記憶にブランドや商品・サービスの体験や情報が刻まれていない限り、口コミは発生しないのです。

この頭の中にある話題のネタを「言及在庫」と呼び、UGC活用を促進するメソッドとして体系化しています。その際、重要なのは「トピック」「ハードル」「拡散ネットワーク」の3つの要素です。

例として、ラーメンを考えてみましょう。ラーメンはUGCが広まりやすいという特徴を持っています。まず「トピック」の量に関しては、ラーメンには味噌、塩、醤油、とんこつなど多くの種類があり、大盛りや中盛りなどサイズの話題も豊富です。

「トピック」の質についても、ラーメンは老若男女問わず多くの人が好きで、対象となる人数がとても多いです。また、一過性の流行ではなく、時を経ても変わらない普遍的な話題です。明日も1年後も10年後も、きっとラーメンは人気でしょう。

続いて、「ハードル」という投稿を阻む要因について見ていきましょう。「ハードル」は、投稿への精神的な障害であるメンタルハードルと、実際の行動に関わるフィジカルハードルに分けられます。

ラーメンに関しては、「この内容の投稿をしても大丈夫だろうか」と心配する必要がないため、メンタルハードルは低いでしょう。逆にメンタルハードルが高い例としては、口臭ケアなどコンプレックス商品が挙げられます。「私はこの口臭ケア商品を使っています」と公言したくないですよね。人知れず使いたい商品やサービスのメンタルハードルは高くなります。

また、ラーメンは写真を撮って「美味しい」と一言書けばいいので、フィジカルハードルも低いです。対象的にフィジカルハードルが高い例として、映画のレビューがあります。単純に「面白かった」と投稿すると、やや単純すぎる印象を与えてしまうかもしれません。「このシーンに感動した」など、少し工夫を凝らしたレビューが求められます。

最後に「拡散ネットワーク」には、3つの要素があります。1つ目がソーシャルネットワークです。これはフォローとフォロワーという人間関係を通じて情報が広がる経路を指します。

2つ目がTikTok、Instagramの発見タブなど、プラットフォームのレコメンデーションによるネットワークです。アルゴリズムによって制御されながら情報が拡散される経路です。

3つ目がSNS上の検索です。例えば、ハッシュタグ検索を通じた経路があります。

ラーメンに関しては、ソーシャルネットワークとして「ラーメンアカウント」や「ラーメン専門家」のような、ラーメン好きが集まるコミュニティが存在します。従って、これらのコミュニティに情報が広がれば、一気に拡散される可能性があります。

食器用洗剤とBtoB製品にUGC施策は有効か?

次に、食器用洗剤を例に取り上げてみましょう。 結論から言うと、食器用洗剤のUGCを生成・拡散させるのは、ラーメンに比べると難しいと言えます。まず食器用洗剤は、基本的に種類が1つです。メーカーは商品の違いをアピールしていますが、消費者の多くはラーメンほど多様な選択肢があると思っていません。

「ハードル」に関しては、食器用洗剤は低いです。「私はこの洗剤で食器を洗っています」と投稿しても問題ないでしょうし、写真1枚で済むでしょう。

しかし、いくらハードルが低くても、洗剤について語る理由や動機がなければUGCは生まれません。食器用洗剤の場合、この点が最大の課題と言えるでしょう。

さらに、「トピック」の数が少ないため、話題の在庫がすぐに尽きてしまいます。多くの食器用洗剤メーカーがSNSキャンペーンを実施していますが、ほとんどの場合、テレビCMで起用したタレントを使った企画に頼っているのが実情です。

次は、BtoB(法人向け)製品について考えてみましょう。

具体例として、私の前職のホットリンクが提供するSNS分析ツールを挙げてみます。結論から言うと、この分野でもUGCを生み出す難易度は高いと言えます。

まず、ハードルが高いことが挙げられます。特に、情報を共有することへのメンタルハードルが高いです。当たり前ですが、競合企業に「私たちの会社は、この分析ツールを使って成果を出しています」と勧めたりしないですよね。

もし競合企業がその投稿を見て、同じようにツールを使い始めると、自社の優位性が損なわれてしまうかもしれません。ビジネスは戦場でもあるため、基本的には情報を出しづらいという特徴があります。

それでもUGCを生み出すためには、例えば、SalesforceやHubSpotのようなメジャーな存在にならないと難しいでしょう。また、導入していること自体がステータスになり、発信したくなるような工夫が必要です。

このようにして、「言及在庫メソッド」から評判やUGCを増やし、それを拡散させていくプロセスを解明することができます。

UGCを生み出すための具体的な打ち手

こちらは、UGCを生み出すための具体的な打ち手をまとめた表です。先程の「トピック」「ハードル」「拡散ネットワーク」という3つの要素を用いて、具体的な施策を考えていきましょう。

「トピック」に関しては、食品や飲食店の場合、超大盛や超少なめなど特別なメニューを追加したり、他のブランドとのコラボレーション商品を作ることが考えられます。この施策の目的は「言及在庫」が尽きないようにすること、つまり話題に事欠かないブランドを築くことです。お客様の頭の中に、新しいトピックをどんどん入れていくようなイメージです。

「ハードル」に関しては、基本的にハードルを下げる方法を探るべきです。例えば、商品名を短くして覚えやすくすることも1つの手です。また、まだ誰もその商品について語っていない段階で、自分が初めてそのネタを投稿するのは、勇気が要ります。だからこそ、UGCが常に出ている状態をつくっておくことが重要です。

「拡散ネットワーク」に関しても、注意深く考える必要があります。多くのマーケティング担当者はバズりやすいコンテンツの制作に目が行きがちですが、それだけでは不十分です。バズりやすいコンテンツをスーパーカーに例えるなら、拡散ネットワークはそのスーパーカーが走るための高速道路です。その「道路」を構築しておかないと、どんなに素晴らしいコンテンツでも広まりません。

例えば、美容系企業であれば、美容の専門家との関係を築いておくと良いでしょう。そうすることで、自社が発信したい話題を優先的に発信してくれる可能性が高まります。この拡散ネットワークは、意外と見落としがちなポイントなので注意しましょう。

日本語で考えると施策アイデアが生まれやすい

おまけとして、評判を増やして広げる戦術を紹介します。私は意識的にカタカナ用語を避けて、馴染みのある日本語で考えるように心がけています。

「マーケティング」という概念は、米国をはじめとする海外から日本に導入されたため、英語の専門用語が数多く使用されています。しかしながら、日常的に使っている日本語で考えるほうが、私はアイデアが浮かびやすいです。

評判を広げるアイデアを考える上で、「口」を含む日本語の表現をもとに発想を広げると、新しいアプローチが見えてきます。

例えば、評判が「出ない系」であれば、「口を結ぶ」「口を閉ざす」などの言葉が挙げられます。一方で、評判が「出ちゃう系」であれば、「口ずさむ」「口外する」「口を挟む」といった表現が考えられます。さらに「やっと出た系」には、「口をひらく」「口火を切る」があります。

「どうやって口火を切るか」、「どうやってお客様の口をほぐすか」という視点で考えると、お客様の姿がよりクリアに見えてきます。マーケティングでは、ひとりの顧客を徹底的に観察することの重要性を示す「N=1」という考え方がありますが、日本語を使うことでお客様のリアルな姿を想像しやすくなり、口コミを促す企画も思いつきやすくなるのです。

このアプローチを元にChatGPTを利用して、様々なアイデアを出してみました。例えば、「口出しチャレンジ」や「口裏を合わせるキャンペーン」など、言葉から具体的なアイデアが次々と浮かんできました。

一目見てブランドが分かることが大事

もう一つ、おまけとして、「言及在庫メソッド」のポイントを紹介しましょう。先ほどお話した通り、「言及在庫から拡散ネットワークへ投稿を促す」という流れだけではなく、次の図のように「拡散ネットワークから言及在庫メソッド側へ」という図の左側の流れも重要です。

これは、あるユーザーAさんが発信したUGCが、別のユーザーBさんにもポジティブな影響を与えるようにする工夫です。言い換えれば、ユーザー同士で良い情報が効果的に拡散されるための基本原則と言えます。

大前提として理解しておかなければならないのは、お客様は自由に意見を発信でき、企業はその内容をコントロールできないという点です。たとえ、企業がお客様に「ロゴを必ず掲載してください」「ブランド名を投稿文に入れてください」といったガイドラインを設けたところで、お客様がこれを守ってくれる保証はありません。

したがって、投稿内容にブランド名が含まれていない、または、何の商品か分からない写真の状態で投稿される可能性があります。そうなると、せっかく良い評判が生まれたのにも関わらず、それが他のお客様にうまく伝わらず、お客様同士での影響力が弱くなってしまう恐れがあります。ブランドが認識されていないと、言及在庫も貯まらず、もったいない状態と言えます。ブランド資産も貯まっていきません。

つまり、SNSなどでの投稿では、一目でその商品がどのブランドなのかが分かる特徴的な見た目が重要です。これを説明するために、私のお気に入りのカレーライスを紹介しましょう。

この商品の特徴は、カレーライスの中に大きな豚肉の塊が入っているという点です。ときどき、このような画像がX(旧Twitter)で流れてくることがあり、ブランド名が記載されていなくても、「あのカレーだ!」と気づくのです。そして「最近、食べていなかったから、また買ってみよう」と思うわけです。

特徴的なネーミングも重要ですが、投稿文に商品名が書かれていなくても、商品をすぐに識別できることが重要です。そのことで、このカレーを知らなかった人も「この塊は何だろう」と興味を持ってもらうことができます。そのため、「言及在庫メソッド」の左側のループをうまく回していくためには、初期設計の段階で商品の見た目を特徴的で識別しやすいようにしておくことが大事になります。

ここで別の重要な視点にも触れておきましょう。それは、「評判が購買行動にあまり影響を与えないケースも稀に存在する」ということです。

各カテゴリーのヘビーユーザーは、評判に左右されずに購入することがあります。私の例で言うと、年間に約100冊の本を買います。私が関心のある分野で新作が出た場合、たとえAmazonのレビューが1つも付いていなくても買うでしょう。他人のレビューに影響を受けず、自分の判断で購入するわけです。同様に映画についても、レビューに関係なく気になった作品は見ます。

したがって、評判を頼りにするのは、自分がどういう軸や因子で選んでいいかわからず、判断できない場合に詳しそうな人の評判を参考にするわけです。

言い換えれば、「自分はこの分野のオタクです」と自負している人は、他人の評判に関係なく、自分で探して選びます。

さらに付け加えると、ブランドの世界観によっては、ECサイトであってもカスタマーレビューを載せない場合があります。例えば、「北欧、暮らしの道具店」は、他のECサイトではよく見られるレビューが全く載っていません。

掲載されている商品は、「北欧、暮らしの道具店」という売り手側からの提案であって、顧客にはその世界観に共感して買ってもらいたいと考えているからでしょう。個々の商品に対する顧客の評価よりも、ブランド全体の世界観と提案に重きをおいているため、レビューを掲載しない方針をとっているのだと思います。

ECサイトを運営していると、つい顧客の声を掲載したくなりがちですが、自社のブランディングの方向性やブランドの価値観によっては、カスタマーレビューが無いほうが適しているケースもあるのです。

まとめ:良い評判には、良い商品・サービスの提供が大前提

評判形成はお客様の行動に委ねられており、企業が完全にコントロールできるものではありません。しかし、評判は購買意思決定に、分解するとWebサイトの流入数やCVRに影響を及ぼすため、向き合わない理由はありません。

重要なのは、評判をどのように生み出し広めるのかという視点です。「言及在庫メソッド」などで分析していくことで、現在の課題が明らかになります。その中で「ここはもっと改善していこう」「この部分は十分に力を入れているので、他分野に注力しよう」など、施策の方向性を定めることができます。

ただし、「言及在庫メソッド」の左側のループのように、初期設定が重要である点を見逃してはいけません。例えば、商品のネーミングが悪かったり、パッケージのデザインからブランドを一目で識別できなければ、口コミが広がりにくいでしょう。

最終的には、良い評判を得るためには、良い商品やサービスを提供することが大前提です。良い商品、効果的な良いプロモーションを組み合わせた価値のある提案が良い評価につながると、私は信じています。