サンフロンティアは、プライム市場に上場しながらも、これまで広告や宣伝をしなくても成長し続けてきたという稀有な企業です。ただ、次のステージへと進むためにブランディングに力を入れることを決断。「マーケティングは経営」「全員がマーケター」を合言葉に、社長自ら「グロースX マーケティング」に参加しマーケティングを学ぶなど、成長の仕方・学びの姿勢にもその企業風土が垣間見えるようです。執行役員の金子みどりさんに取り組みの実態をお聞きしました。
サンフロンティアは、プライム市場に上場しながらも、これまで広告や宣伝をしなくても成長し続けてきたという稀有な企業です。ただ、次のステージへと進むためにブランディングに力を入れることを決断。「マーケティングは経営」「全員がマーケター」を合言葉に、社長自ら「グロースX マーケティング」に参加しマーケティングを学ぶなど、成長の仕方・学びの姿勢にもその企業風土が垣間見えるようです。執行役員の金子みどりさんに取り組みの実態をお聞きしました。
金子 みどりさん
サンフロンティアグループ 執行役員 グループマーケティング本部 本部長
16歳で単身渡米し、約11年米国在住し州立ミシガン大学で学位取得後に帰国。
ブランドエージェンシーの老舗オグルヴィ・アンド・メイザーで多様なクライエント企業のアカウント責任者を経て、ネスレ日本に初の女性日本人役員として入社。ネスカフェやキットカットなどのグローバルブランドの広告・広報を統括する。
シティバンク、GE、Amazonなどで要職を担った後、サンフロンティアでグループマーケティングを新設するために入社。複数のNPOを立ち上げ理事を務めるなど社外活動を20年以上続けており、「あらゆる人が自分らしく生きやすい、偏見のない世界」の実現を目指している。
―― 設立25年、プライム市場に上場しておられますが、ブランディングやマーケティングとは無縁だったと聞きました。
サンフロンティアは、プライムに上場しており今年で25期目になりますが、これまで広告宣伝をしてこなかった会社です。お客様主体の事業だから、自分たちのことを宣伝することにパワーを割くのは違うんじゃないかと、敢えて取り組んでこなかったのです。ここまでの成長は現場力、お客様に寄り添ってきた人間力が創ってきたといえます。
ただ、オフィス事業に加え、急速に成長しているホテル事業を含め、事業領域が広がり多角化している中で、グループ全体として包括的に認知いただいていないことが課題でした。経営陣は、会社として次のステージに進むためには、いよいよブランディングが必要だと考えたわけです。
本格的にブランド価値を高めていくということでお声が掛かり、2022年1月に転職してマーケティング部門を立ち上げることになりました。同年4月には正式に本部として承認され、以来、グループ全体のマーケティングやブランディングを統括しています。
入社してから本部として承認されるまでの3ヶ月間は、会社のことを理解しようと、現場の声を聞いて回りました。それで明らかになったのは、現場の人間力です。とにかくみんな魅力的なんですよ。しかもお客様がお客様をご紹介してくださる、リファーラルが確立されていました。これは本当にすごいことです。
「うちのお客さんがここから2軒先のビルなんだけど、代替わりする予定なんだって。でも息子さんは都心のビル経営には興味がないらしい。親父さんが作った思い入れのあるビルだからねぇ…ちょっと話聞いてやってくれる?」みたいな相談が一番に入ってくる。これはお客様と密な関係を築けている証拠です。「ブランディングなんて要らないんじゃないですか?」と冗談半分で社長に伝えたくらいでした。
―― すでにエンゲージメントが確立しているにも関わらず、なぜマーケティングが必要だと思われたのですか?
ユニークで強い基盤が既に確立されていることは分かった上で、更に進化していきたいと思いました。変革の必要はなく、進化です。変革と言うと今あるものを壊して (disruptive) 次なる価値を創造しようとする、そうではないことを明確にするためにも、進化という言葉を選びました。
進化するための施策の一つが共創マーケティングです。実際、社長自らが「全員でマーケティングをやろう」と働きかけています。これは概念的な話ではなく、例えばコンテンツマーケティングに取り組むとして、コンテンツは現場の中に眠っています。だからこそ、コンテンツは皆さんからいただかなければいけない。そのコンテンツが、ブログのようなオウンドやソーシャルメディアを通して広がっていくわけです。仲間の協力が必要で、「このエピソードどうですか?」と積極的に声を寄せてもらう状態を作る必要があると思いました。
これまでマーケティングとは無縁だったので、理解し実践するためには、やはり学びが必要です。マーケティングを語る上での共通言語も必要です。人財に支えられた現場力、そこにマーケティングを掛け算していくことが成長に向けた大きなステップです。そこで「グロースX マーケティング」を取り入れました。
―― ありがとうございます。なぜグロースXを選んで頂けたのでしょうか?
界隈では有名でしたから。それに、こちらが号令をかけて集合型で進める形式ではなく、自主的に取り組める仕組みが素晴らしいと思いました。また、メンバー一人ひとりがどれだけ進捗しているかが見える透明性も魅力でした。
進捗が見えると、「仕事が大変?(だから進んでいない?)」という声をかけることが出来ますし、そこでまた生の声を拾うことが出来ます。
ちなみに、1期生となる参加者30名は全社から募りましたが、社長や取締役も手を上げたんですよ。社長からは「僕もいいかな」と。社長自らがマーケティングを学ぶということで、「マーケティングは経営」をさらに裏付けるものになりましたし、社員にとっての大きな刺激になっていると思います。
さらに、受講者で集まる「ワイガヤマーケターの会」も開催しています。学びにおいて自主性は重要ですが、「自分の業務にどう結び付けたらいいのか」という疑問や「F2(リピート率)という概念が新鮮だ」という感想を共有する場があった方が、より学びが生きると思ったからです。ワイガヤマーケターの会は自由参加ですが、社長も参加していて、社長だからという特別扱いはなく、共に学ぶ仲間として輪に入っています。
今後は2期生が学びをつなげていくことになると思いますが、1期生の会議での発言などを耳にして志願してくれているメンバーもいますし、好循環が生まれています。こうやって継続していくことで組織の力になり、進化していけることを確信しています。
―― 「グロースX マーケティング」を通じて、御社にどのような影響がありましたか?
共通言語ができて、社内の会話が早くなりました。例えば「それってロイヤリティの問題じゃないよね」「F2で掘り下げて考えた方がいい」など、会議での議論が明らかに変わっています。
受講者が積極的に自分の思考にマーケティングの概念を取り入れて具体化していくことで、自分のものにしていく様子は頼もしいくらいです。
―― 印象に残っている受講者の方がいれば、お話を聞かせてください。
1期生の中で目覚ましい変化を遂げている人をご紹介すると、執行役員に昇格した人がいます。彼は、いつも一番質問が多く、推奨書籍も読んでいますし、学びをアウトプットしながら、驚くべきスピードで習得していったので印象に残っています。執行役員になる人でも学びに対して最も貪欲であることが、サンフロンティアらしいなと思います。
彼は事業戦略発表会などでも代表して話す立場ですが、準備段階で、パートナーリレーションシップマネジメント(ビジネスパートナー間に良好で長期的な関係を構築するためのビジネス戦略手法のこと)について意見を求めてくれたので、何度かやり取りをしました。
そういった姿勢に、周囲の仲間も刺激を受けているようです。自分一人が進化するのではなくて、組織内で渦を起こす。役職や社歴・部署の違いなど関係なく、ポジティブな渦に周囲を巻き込んでいる様子が、私にも見えています。
それから、オフィスの賃料滞納保証サービス『TRI-WINS(トライウインズ)』という新しいブランドをリリースしたのですが、マーケタープログラムのメンバーが記者発表のプレゼンテーションをしました。このプレゼンテーションにも当社らしさが溢れていました。新しいサービスブランドをローンチしました、という一般的なやり方ではありません。まだ認知度が低い会社が新サービスを発表してもインパクトはない。だからこそ、記者発表の場ではサービスリリースするに至った会社の考えや姿勢を伝えました。
資金に乏しいスタートアップ企業やまだ実績のない外資系企業など、これからという企業を、私たちもリスクをとって保証する。私たちなりのやり方で、ただの賃料保証ではなく、「日本を起業しやすい国に」という想いを理解していただけたと感じています。
―― 今後の展開・期待などはありますか?
1期生の学びの姿勢とその活躍を見ていれば、次に続く2期生も学び、組織全体が強くなっていくと思います。つまり「マーケティングは経営」「全員がマーケター」は、間違いなく実現していくでしょう。
その上で、サンフロンティアというグループをもっと広く、多くの皆さんに知っていただきたいですね。それは単に社名を覚えていただくということではなくて、現場の一人ひとりが物語を持っている、すべてのナラティブの背景には強い意思や想いがある、そんなナラティブカンパニーを目指しています。
社員もご家族も、学生さんもまだお会いしていない未来のお客様にも、より広く、より深く、サンフロンティアを知っていただける日が楽しみです。
(インタビューご協力:サンフロンティアグループ 様)
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