滋賀県庁がDX推進に向けてAI学習を強化、「AIをつくる人材」から「使いこなす人材」へ
【グロースX AI・DX人材 導入インタビュー】

2022-06-06

多くの自治体や企業がDXを推進する中、滋賀県も今年3月に「滋賀県DX推進戦略」を策定し、その実行段階に移っています。一方で、DXプロジェクトの1つとしてAI活用の議論を進めようとするものの、メンバーの知識レベルがバラバラであることから、なかなか話がまとまらない、という課題がありました。

そこで2021年11月、AIについて体系的に学習し知識レベルを揃えるため、自治体として初めてチャット型AI学習アプリ「グロース X AI編」を導入しました。その結果、メンバー内でAIの共通言語ができ、通常業務の中でもAI活用の話題がのぼるようになりました。今回は、DX推進に向けてどのようにAI学習を進めたのか、そして今後どのような展開を考えているのか、滋賀県のDXを担う滋賀県 総合企画部 DX推進課の中森大和氏に詳しく話を聞きました。

滋賀県 総合企画部 DX推進課 中森大和氏

AI導入検討も、議論が進まない…

―― 近年、様々な自治体のDX推進が話題にのぼり、その中で「AIの活用」にも注目が集まっています。滋賀県でもDX推進において「AIを活用したい」という問題意識があったのでしょうか。

はい、滋賀県は今年3月に「滋賀県DX推進戦略」を策定し、今年度からそれをもとにDXを進めていくという段階に入っています。その中でAIについても、たとえば、デジタルツールを活用した全庁的な業務改革の推進や、AIチャットボットを活用した被災者支援の情報提供などが検討されています。

現在、滋賀県庁におけるAIの活用状況は、OCRツールや音声の文字起こしツールなどの導入で、一般事務の効率化を図っているという段階です。私の所属しているDX推進課が庁内のDX促進を担い、全庁に対してそういったシステムを導入しています。

ただ、もう少し幅広くAIを活用していきたいと思っていたのですが、そういった検討を課内で進めようとしても、なかなか思ったようにいかないという状況がありました。というのも、課内のメンバーの知識がまちまちで、みんなが思い思いのAIイメージを口にするので、話がまとまらなかったんです。

たとえば、チャットボットの話一つとっても、各社の様々なサービスがある中で、処理できる範囲が少ないサービスを思い浮かべて話をする人もいました。私自身もAIについてうまく説明できるほどの体系的な知識がない状態だったので、そもそも導入する前にメンバーで勉強する必要があると考えたんです。

導入の決め手は、「共通言語」の獲得だった

―― AI学習にはさまざまな手段があるかと思いますが、どのような観点から検討し、「グロース X AI編」を導入したのでしょうか。

そのポイントは、大きく4点あります。1点目は、AIについて書かれた書籍などは「AIをつくる」ところに主眼を置いているものが多いですが、「グロース X AI編」はAIを「使いこなす人材になる」ことに主眼が置かれている点です。私たち一般の行政職員はエンジニアではないため、基本的には「AIをつくる」よりも、外部のパートナーと連携しながら「AIを使いこなす」という視点が重要なのです。

2点目は、学習する人たちの想定に「文系出身の人材」も含まれていたことです。職員は理系出身者ばかりではないので、そういった人たちもハードルなく受講できることが重要でした。

そして3点目は、体系的な知識習得ができることです。書籍を個別に選んで読んでも体系的な知識の習得はなかなか難しいと感じていましたが、「グロース X AI編」ではある程度の内容がまとまった状態で学習できることに魅力を感じました。その中でも、やはりAIの「企画力」や「プロジェクト推進」、「AIサービスの選び方」など、AIを実務で使う人にとって重要な知識がしっかりとカバーされている点が良いと思います。

最後の4点目、これが一番の決め手でした。先ほどAIを学習しようと思った背景でもお話ししましたが、チームでの学習を通して「共通言語」が獲得できることです。アプリで一緒に学びながら議論ができるという仕組みで、メンバー間の知識レベルの差という課題が解決できると感じました。

「AIを作る人材」だけでなく、「AIを活用する人材」の育成が大事になっている。

上司からも高い評価、予測系AIの活用に期待

―― 実際にAI学習によって、どのような効果が得られましたか。

まずチームで共通言語を獲得するという、そもそもの導入目的が達成できたと思っています。受講メンバーは、DX推進課から私と同じように庁内のDX推進を担当する8人に加えて、データサイエンティスト職のメンバーや、AIのチャットボットシステムの導入を検討している防災担当者にも声を掛けて、参加してもらいました。

特にAIを機能別に分類して、それぞれのタイプごとの導入に伴って必要となるデータの用意や構築方法などがセットで理解できた点が大きいです。AIを企画するときに、その分類ができれば、導入の準備から構築までの一連のイメージをみんなで共有できます。

AI編の中で出てくるAIの機能別分類。AIの分類ごとの事例や構築方法を学ぶ事ができる。

学習後には、私の上司に学習内容の報告会を行いましたが、「共通言語の獲得」が達成できたことを評価してもらい、「良い研修でした」という評価をもらいました。これから実際のプロジェクトにつなげる段階ですが、それができる素地ができたので、第一段階として上出来だったと思っています。

―― 一緒に受講したメンバーからは、どのような声を聞いていますか。

日常の業務を進める中で「こういうAIを活用することで、県民に良いサービスが提供できるのではないか」という会話が出るようになったと聞いています。あとは、やはり共通言語を獲得したので、AIの話がお互いに通じやすくなったと感じられますね。

印象深かったのは、「予測系AI」の構築ですね。予測系AIは、ほかのAIに比べると用意するデータ自体がそこまで難しいものではなく、データ量が少ない段階から始められるので、着手しやすそうだと思いました。また、ノーコードツールでも作成でき、私でも扱えるという点もかなりハードルが低いと感じています。

予測系AIを業務に取り入れるには、データに基づいて意思決定していくという習慣が必要になりますが、その意思決定の参考に使ってみるのがいいのかなと思っています。予測系AIを意思決定に使うならどのようなデータがいるのかを検討すること自体もデータの重要性が学べる良い機会になりますし、参考にするだけなら導入のハードルが低いので、AIに慣れる第一歩として最適だと思っています。

グロース X AI編のコース設計。6カ月間を通じて、AIを「使いこなす人材」になるための知識がバランスよく配置されている。

AI企画を考えるワークショップに挑戦

―― みなさんで「AI企画」にチャレンジしたという話も伺いました。

はい。毎月学習の区切りがありますが、その度に全員でAIが何に使えるのかを考える「AI企画」にチャレンジしていました。最初のうちはそれぞれの担当業務に対してAIを適用するような企画が多かったです。

ただ、3〜4カ月が経過すると、アイデアが尽きてきたので(笑)、業務から離れたテーマを設定して企画しようといった形で、積極的に企画を出せるような工夫も行いました。

―― グロース XのAI戦略アドバイザーである野口竜司氏による講評も行われたんですよね。

はい、参加メンバーの企画書を見てもらい、コメントをいただきました。個人的には、自分で立案した企画が最優秀賞に選ばれたことが非常に嬉しかったです(笑)。

過去に納税の窓口を担当していたことがあったのですが、皆様の状況は様々ですので、窓口対応に難しさを感じていました。そういった状況に人の感情を読み取る識別系AIカメラがあれば、相手の様子の変化を捉えて、周りの職員が助けに入るといった手が打てるのではないかと考えました。

この企画に対して、野口さんからは「現場のペイン(課題)をよく理解して企画できている」というコメントをいただきました。

「グロース X AI編」では、100を超えるAI事例を学び、自社にどのようなAIが必要なのか考えることができる。

広い視点からAIのサービス導入を検討することが大事

―― 今後、どのようにAIの活用を推進していこうと考えていますか。

今後は、業務を担当する部署ごとにDXやAI活用の検討ができるようになる必要があると考えています。そこで、まずは庁内全体で共通言語が獲得できるよう、私たちDX推進課が情報提供や各部署の相談に乗るといったことを行っていければと思っています。

AIに精通している人と、その業務に詳しい人が協働するのが一つのやり方だとは思いますが、協働するにもある程度の共通言語を持っていた方が絶対にスムーズだと思います。当面は、庁内の共通言語の獲得が一つのテーマになると思いますね。

AIに慣れるという点で、予測系のノーコードツールの導入に関心があるので、検討していきたいと考えています。

―― 最後に、全国の自治体にアドバイスがあれば、お願いします。

自治体に限った話ではないですが、知らないことはしっかりと勉強した方がいいと思います。企業からDXに活用できるというサービスを紹介されたときに、一つのサービスだけを見て適用を考えるのではなく、自分たちに本当に適したサービスを広い視点から検討できるようになることが重要だと考えています。

(インタビューご協力:滋賀県庁)

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