マーケティングの人材育成の組織向けSaaSを運営するコラーニングに、書籍『マーケティングの仕事と年収のリアル』の著者としても知られ、ブランドコンサルティング会社インサイトフォース株式会社 代表取締役の山口義宏氏が株主・戦略アドバイザーとして参画します。
それを記念し、山口氏とコラーニング 代表取締役社長の津下本耕太郎氏が特別対談を実施。山口氏のブランドコンサルティング論や、著書『マーケティングの仕事と年収のリアル』を書いた裏側などを聞きながら、これからのマーケティング教育とマーケターのキャリアについて意見を交わしました。
*参考:「マーケターの年収を上げたい」山口義宏氏がコラーニングへの参画を決めた理由とは?
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津下本 山口さんが代表を務めるインサイトフォースは、ブランドコンサルティングを中心に幅広い業務をしているという印象です。実際には、どのような業務をしているのでしょうか。
山口 当社のカテゴリーはブランドコンサルティングとしているのですが、実は既存のブランドコンサルティングに対するアンチテーゼという思いがありました。
一般的に「ブランドコンサルティング」と検索して出てくる会社は、企業のロゴや名前を変えるといったCI(コーポレートアイデンティティ)が軸足のコンサルティング会社が大半です。当社もクリエイティブの一環としてCIを手掛けることはありますが、それだけをしたところで、果たして企業の売上や収益の向上に寄与するのかという根本的な疑問がありました。
ブランドコンサルティングの世界では、少し乱暴に言えば「素敵な世界観やデザイン、クリエイティブをつくれば、物が売れるだろう」という考えも多いのですが、それは化粧品で言えば、百貨店チャネルに展開するようなプレミアムブランドやラグジュアリーブランドなど、本当に限られたマーケットでは売上に一定の影響がある程度の話に留まります。現代ではどのブランドもある程度デザインは整っていますし、クリエイティブの良さでモノが売れることを牽引できる市場はむしろ少ないです。ドラッグストアに並ぶような化粧品なら、パッケージのデザインを過度に素敵にしたところで、「中身にお金を掛けないで、パッケージにお金を掛けている」と言われてしまうなど、ビジネスにおけるクリエイティブの位置づけや表現というのは非常に繊細なものがあります。
つまり、消費者から見て買いたくなる商品の要件は、業種業態や価格帯、ブランドの固有の個性や価値によって大きく異なるということです。それをよく見極めて、売上増加するためにブランドの名称・ロゴ・デザインの変更が必要であれば、変更すればいいし、必要がなければやらなくていいと考えています。実際に弊社の案件で、売上拡大に向けてロゴやデザインが問題と見定めて変更するのは、せいぜい2割程度で、残りの8割はその他のアプローチで市場競争力を高めます。
津下本 ブランドというよりも、もはやビジネス、マーケティングのコンサルティング領域ですね。
山口 ビジネス視点から、ブランド・マーケティングを支援するという考えですね。支援する側の立場で言うと、ブランドというテーマが便利なのはすべての顧客体験に結びついているため、ブランドのコンサルティングから入ると、横断的な関わり方がしやすいんです。市場・顧客のブランドに対する知覚認識を変えて、商品やサービスが売れるようにするには、広告宣伝だけというお付き合いではなく、そもそもの商品・サービスの企画や、経営陣から人やお金のリソースを更に多く投資してもらう意思決定など、部門横断でのプロジェクトにしていくことが必要ですから。
津下本 コーポレートブランドよりも、プロダクトブランドに関わることが多いのでしょうか。
山口 インサイトフォースの業務をざっくりと分ければ、プロダクトブランドを売るための仕組みづくりが半分、もう半分が経営視点に近い事業ポートフォリオの組み替えや中期テーマ策定になります。
津下本 組織づくりにも携わっていらっしゃるのですか。
山口 そうですね。マーケティング能力を高めるという視点から、組織設計とスキル育成プログラムにも関わっていますね。組織づくりには、振り子の考え方が必要だと思っています。たとえば、巨大なメーカーでは、事業部側や製造側が力を持ちすぎていて造り手目線が強すぎれば、よりチャネルや顧客との接触が多くて理解が深い販売側にも力を持たせるように組織や意思決定フローを変えるような支援もありますし、その逆もあります。
また、BtoBマーケティングの世界も大きく盛り上がっていますが、結局のところ案件を最後にクロージングするのは営業なので、マーケティングはその後方支援になります。その連携を良くするためには、基本的には分けすぎず細かく連携して施策をチューニングできるように、同じ組織にした方がいいと思っています。
私はマーケティングの知識がある程度ある大手企業におけるマーケティング問題の半分は、「組織の問題」だと考えています。優秀な人材がいる組織であれば、「全員が市場理解が的外れで、誰も解決策を持っていない」ということはあり得ません。
だから、私たちが外部から画期的な解決策を持ち込まずとも、顧客視点という目線から課題認識を揃え、有効な解決施策を洗い出して合意形成を支援すれば、実行にうまくこぎつけることができます。オーナー経営企業の場合は、経営陣と議論して決めたことを現場に落とすアプローチは有効ですが、オーナー経営ではない合議制で決める大手企業の支援の場合は、事業や顧客に近い現場レベルで部門横断で合意形成したものを経営陣に説明し、合意形成を得て、投資リソースを獲得するまでが私たちの仕事ですね。
津下本 業態はBtoCが多いのでしょうか。
山口 昔はすべてBtoCでしたが、数年前からBtoBが自然と増えています。年にもよりますが、少ない年で3割、多い年は5割程度がBtoB企業の案件です。一般的にBtoB企業のほうがマーケティングが手つかずな場合が多いですし、一件あたりの取引単価が高いので、新規顧客を獲得できればすぐにコンサルティング費用を回収できます。また、上場が視野に入ったBtoB企業であれば、ブランド力によって株価や企業価値が大きく左右されます。そのため我われのような会社にコンサルティングを依頼する企業が増えているのだと思います。
BtoB企業をクライアントとするコンサルティング会社の多くは、デジタルを中心とした施策や、ソフトウェア活用が支援の中心の会社が多いのですが、当社はブランドの強みを洗い出したうえで、訴求すべき価値を定義し、日々の営業やセミナーの施策に反映するといった、リアルな接点の戦略支援の比重が高めなのが特徴です。もちろんデジタル上のコンテンツにも強みを反映するのですが、メディア露出のPR~ホワイトペーパー~セミナー~営業という一連の流れのコンテンツで、効果的な訴求内容を実現することが一番重要です。効果のでない訴求内容では、デジタルを含めて接触の接点を増やしたところで成果は出ません。
顧客視点から社員の課題認識を揃え、
解決策を洗い出して合意形成できれば、うまく実行にこぎつけられる
津下本 山口さんは、個人でもいろいろ活動されていますよね。
山口 そうですね。インサイトフォースには、ある種、職人的にコンサルティングをしたい人が集まっているので、それ以外の活動をするのは難しいんですよ。クリエイティブの施策を提供したい人や、SaaSを提供したい人が社内にいなく、良くも悪くもコンサバなコンサルタント職人集団なので。
そこで、インサイトフォースのドメインは創業から変わらない一方で、アドバイザリーや投資先の支援などは個人でしています。今はコラーニングのほか、クラフトチョコレートを提供するMinimal、住居のサブスクリプションサービスを提供するADDressの3社に関わっています。
津下本 そうした支援先は、どのように決めているのですか。
山口 基本的には、提供しているサービスや価値のニーズが、メガトレンドとして拡大するかどうかを見ています。コラーニングについては、マーケターの需要が拡大してマーケターの数が増えれば、それに伴って教育問題も拡大します。そのうえ、教育には終わりがないので、そのニーズがなくなることはありません。
また、成長の見込みがある市場だから経営が必ずうまくいくわけではないため、誰が経営しているかも大切にしています。ニーズが拡大していること、そこに対してすばやくPDCAを回して、最適なアクションを起こせる人が経営を担っていること。この2つが揃って、かつ自分が手伝えそうであれば、できる範囲で投資したり、相談相手になったりしているという感じです。
津下本 なるほど。僕は山口さんの著書『マーケティングの仕事と年収のリアル』を読んだときに、ちょうどコラーニングのPOC(概念実証)をしており、共感することばかりだったので、絶対に山口さんを巻き込もうと決めていました。この本を書かれた背景についても、お聞きしたいのですが。
コラーニング代表 津下本(つかもと)
山口 マーケターのキャリアについて、各所から同じ内容の相談を受ける機会が多かったので、困っている人が多いのであれば書こうと思ったんです。
そこで、マーケティングという仕事のステージを1~6に分けて見える化し、自分ができる仕事や、やりたい仕事を選びやすくしました。
ただ、構造問題として、事業会社では出世すればブランドマネージャーやCMOのような経営レベルのマーケティングの仕事はありますが、外部からマーケティングを支援する支援会社側では、そのレベルでの支援を求められることはほぼありません。ブランドマネージャーやCMOレベルで外部から支援をしているのは、ごく一部の限られた会社と個人に留まります。
支援会社も「マーケティングの総合的な支援」と訴求しますが、事業会社が総合的な支援を期待して仕事を依頼しているケースはごくごくわずかです。支援会社にいると、「マーケティングの中の特定の施策モジュールに関わることしかできない」というのがキャリアを行き詰まらせる背景にある構造問題です。
津下本 たしかに、そうした企業の上司であれば、部下に読ませたくないと思うでしょうね。完全に不都合な真実ですね。(笑)
山口 そうですね。まさに中堅の広告会社を経営する友人に、この本の出版前に内容を説明したところ、案の定「部下には絶対に読ませたくない」と言われました。(苦笑)
でも、本来はみんながそうした現状を理解した上で、仕事を選択するほうが幸せなはずです。視界が開けないまま、成果の出にくい誤った努力をしている場合が一番不幸ですから。
みんながこの本の内容を知ったところで、結局は競争があるので、全員がうまくいくわけではありません。例えば、学校の偏差値は高くても、試行錯誤のプロセスが楽しめず、きれいな正解を見つけられなければ嫌だという人は、マーケティングに向いていません。そういった、気質の向き不向きも含めて厳しい現実も書いたつもりです。
この本が多くの人に読まれた最大の要因も、やはりキャリアのステップを1~6で見える化したこと。これを見て、SNSで「僕はステップ3だ」とつぶやいている人もいました。そこで、教育においてもこうしたステップアップに沿ったメニューを入れられるかが、大きな差別化になると考えています。
津下本 そうですね。加えて、事業会社の視点と支援会社の視点をきちんと分けて書いているところも、すごく分かりやすかったです。
山口 事業会社と支援会社では、視点が違いますからね。事業会社の人は支援会社毎の得意~不得意がわかりにくいことでのミスマッチは多いですし、支援会社の人は事業会社内のビジネスや数字のリアリティへの意識が薄い傾向があります。
津下本 支援会社は、クライアントがなぜ投資をして、どのようなリターンを気にしているかということへの配慮がない場合がすごく多いですよね。これはコラーニングの事業を始めた背景にもつながるのですが、たとえば広告の運用支援だけをしている会社だと、クライアントが全体戦略の中で広告をどう位置付けているかという視点がなく、会話が噛み合っていないという状況になりがちです。
山口 支援会社は構造的に視野が狭くなりやすいため、仕方がない面もあると思うんですよ。その代わり、短期間で同じ分野で同じ業務を繰り返す分、狭くても専門性が伸びるのは早いと思っています。
津下本 キャリアという視点では、事業会社と支援会社を両方とも経験するのがいいのでしょうか。
山口 転職する必要があるのかどうかは分かりませんが、なるべく事業に深く関わることは大事だと思います。何にどれくらい投資すれば、この数字がこれぐらい上がるといった因果関係を体感すれば、リアリティが持てますから。
私もBtoCの事業会社の経験がなかったので、Minimalの事業はすごく新鮮です。昨年、コロナ禍にもかかわらず、Minimalは売上が伸びました。それにはECの爆発的な伸びも寄与しているのですが、店舗も11月から対前年比で伸びています。
なぜ店舗まで伸びているのか、という因果関係は完全には分解できないのですが、何年も前から地道に投資して仕込んできたことや、組織の人が育ったことが積み重なって数字として表れてきたのだと感じています。そのようなビジネスの目に見えないことと数字の関係性の肌感覚を持てることは大事ですし、そのような体験を重ねていくことがリアリティにつながるのだと思います。
何にどれくらい投資すれば、数字が伸びるのか、
リアリティが持てるようになるまで、事業に深く関わることが大事。
津下本 マーケティング業界は激動の時代を迎えていると思うのですが、2021年以降は、どのようなことが起こると予想していますか。
山口 最大の変化は、人材の流動化だと考えています。すでに流動化していますし、これからもっと加速するでしょう。データはありませんが、フリーランスも間違いなく増えています。
大局的な話をすれば、より経営に近い視点でマーケティングを遂行する人と、スペシャリストとして施策を提供する人に分かれ、それぞれ先鋭化するのだと思います。
前者は資金などのリソースの調達を含めて仕事をするようになり、後者の領域は外注しやすいため、フリーランスや副業で請け負う人が増えていくでしょう。おそらく、コアの部分はしっかりと内製しながらも、スペシャリストが持つ専門的な視点は外注で賄うという企業が増えます。
働き方が柔軟になり、マーケティング業界で働く人にとっては仕事の機会も格段に増えます。しかし一方で、マーケティングができる人材の数が需要に対して大きく不足しているため、いま現場経験のない新人マーケターが増加しているんです。そこで社内教育が必要になるのですが、経営層こそがマーケター教育の能力を持っていないことが問題だと考えています。
津下本 そうですよね。経営層が考えているマーケティングと実際のマーケティングの現場には、乖離があることも多いと感じます。
山口 はい。現在マーケティングとうたっている部署でも、一部のリテラシーが高い企業以外では、使い勝手の悪い顧客調査以上のことができていない部門も沢山あります。マーケティングは、顧客理解を起点に、様々な組織を横断的に巻き込んで意思決定し、実行し、レビューして振り返るというプロセスの速度と質が大事ですが、それができている会社は多くはありません。
組織を横断的に巻き込むときに必要なのは、考え方の軸になります。それがなければ単にポジションが高い人の声が勝ってしまい、ミスジャッジを起こしやすいので、それを正すための方法論が必要だと考えています。
その際に最も重視すべきなのは、顧客視点です。短期的にはプロダクトアウトで勝つ会社も多いのですが、顧客視点からチューニングし続けることができなければ、長期的に勝ち続けることは難しい。部署や人によって意見が異なるのは仕方ありませんが、それをまとめ上げる軸として顧客視点を使うことが、組織が大きくなるためにも、限られたリソースでやるべきことにフォーカスするためにも必要だと考えています。
津下本 コラーニングでも、顧客視点というテーマは多く取り入れています。特にデジタルマーケティングでは、数字ばかりを注視してしまい、機械的になりがちですよね。
山口 そうですね。価値とはとても抽象的な概念ですが、顧客視点は価値を認識するための起点ですべての土台だと私は考えています。どれだけ派手な商品や広告を展開しても、顧客視点から価値がなければ、価値が伝わらなければ、すべての投資は空振りで終わります。
価値を届ける手段はデジタルで進化しましたが、顧客心理を理解し、その顧客心理に沿って商品・サービスの価値をどのように定義するかということは、未だにアナログな人の思考の比重が高い部分です。そこがインサイトフォースの事業ドメインですし、おもしろいところだと思っていますね。デジタルは価値を効率的に届けてマネタイズの効率を高めますが、根源的な価値を創造して定義するのは、いまだにアナログな人間が中心というのが、マーケティングの面白さと難しさです。
顧客視点からチューニングし続けることができなければ、
長期的に勝ち続けることは難しい
津下本 山口さんにはコラーニングのデモ版を触っていただきましたが、どうでしたか。
山口 ゲーム性を持たせるという方向性や隙間時間でカジュアルに学習できるという点が、既存のソリューションと根本的に違っていいですよね。
津下本 ありがとうございます。これからどのように進化させていけばいいと思われますか。
山口 私が思うのは、マーケターのキャリアも色々あるので、ある程度のパターンごとにマーケターとしてのステップアップの仕方とスキルの関係をシンプルに見える化できればいいなということです。ゴールも複数あっていいし、そこにたどり着くまでの道筋も複数あっていいのですが、たとえば、このゴールを目指すのであればこういう道筋があって、平均的にはこれくらいの時間でクリアできるというような指標があればいいと思っています。
塾の受験ビジネスでいえば、何年生で偏差値いくつの子どもが、どういうカリキュラムを経ると受験時までに偏差値がどれくらい上がるから、どの学校に何%受かる可能性があると示すことと同じです。マーケティングのキャリアの世界に置き換えれば、これをクリアすればどういう会社に転職できる確率が上がる、年収が増える、確率が上がるといった指標になります。
会社でコラーニングを利用する場合も、学習の習熟度と社員の方の評価が結果として比例すればいいですね。学習には、新しい物事を覚えるそのものの喜びもありますが、やはりビジネスのための学習である以上、コラーニングで学んだ方が、自分が関わる事業の売上・収益を伸ばせるようになるという成果が大切だと思います。その成果さえ出せれば、年収やキャリアを高める話は必ず後からついてきます。
結局は結果を出すために教育しているので、結果から逆算して、自分がどの道筋のどの地点にいるというフィードバックを得られることが、会社にとっても社員にとってもコラーニングの価値につながると思います。
津下本 そうですね。コラーニングを評価に組み込む企業は増えてきていますが、このあたりはイノベーションをまだまだ起こせる気がするので、利用企業や山口さんと一緒に取り組んでいきたいと思います。
山口 それから、教育サービスの評価基準があればいいなと思っているんです。というのも、これからマーケティングを学びたいと思って教育サービスの比較サイトなどを見ても、その研修を受けた人の習熟度によって、「知っていることばかりでつまらなかった」「基礎から解説してもらえて分かりやすかった」といったように、評価が異なって分かりにくいということがあります。
自分と同じような習熟度やキャリアの指向性の近い人の評価を絞り込んで見ることができれば、非常に親切だと思います。
津下本 それもやろうと思えば、できそうですね。
山口 それと、ステージ1~2までは研修コンテンツで育成できると思うのですが、それ以上のステージの人たちを成長させるには、優れたマーケターの事業や課題の解釈や対策アクションの思考プロセスを見せて、刺激を与えることも大切だと思っています。
西口さん(※)たちのようにマーケティング起点ですばらしい事業成果を出されている方は、誰も知らない秘密の情報を持っているのではないかと誤解されがちですが、そうではなく、ひとつのニュースに触れたときに、情報を読み取る深さと角度が違うのだと、私は思っています。
そういった人を上司に持てる環境であれば、優れた人材が育つ確率が上がります。そこで、そういった人たちの解釈とアクションに触れられることにも価値があると考えているんです。
実際、西口さんの発言はすごく刺激的ですよね。コラーニングの株主で情報共有している非公開の掲示板グループは、私にとってはお金を払ってもいいと思えるくらいに価値を感じています。
津下本 近年、マーケティングとビジネスは、どんどん重なっていっていると感じています。
山口 そうですね。ただ、マーケティングの教科書的な基本や用語は知らなくとも、すごくセンスのあるオーナー社長やマーケターはたくさんいます。私はそういった人たちをとてもリスペクトしていて、彼らと話していると、一つひとつの判断が顧客視点やマーケティングの戦略論から見て正しいと感じることがたくさんあります。
その逆に、すごい量の知識を持っていても、さっぱり成果が出ない人もいます。やはり、コラーニングには成果のために道具があるという価値観を強く持って、成果のための教育であるという思想を打ち出してほしいですし、成果が出るプロダクトにするということに真摯に向き合って磨いていく姿勢を持ち続けてほしいと思っています。
その方向で進化すれば、必ずや素晴らしいブランドになります。インサイトフォースも、既存のCIプレイヤーがやっていることにクライアントがみんな不満を持っていたから、そうではないとうたったことで強い支持が生まれました。
既存の教育ビジネスでも、「1日研修をして終わり」ということに不満を持っている経営陣はたくさんいます。そこに対して真摯に向き合うと、きっと共感が得られると思っているんです。
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山口 義宏
インサイトフォース株式会社 代表取締役
1978年、東京都生まれ。ソニー子会社で戦略コンサルティング事業の事業部長、リンクアンドモチベーションでブランドコンサルティングのデリバリー統括などを経て、2010年に企業のブランド・マーケティング領域特化の戦略コンサルティングファームのインサイトフォースを設立。 BtoC~BtoB問わず企業/事業/商品・サービスレベルのブランド~マーケティング戦略の策定、CI、マーケティング4P施策の実行支援、マーケティング組織開発及びマーケティングスタッフの育成を主業務とし、これまで100社を超える戦略コンサルティングに従事。
著書:マーケティングの仕事と年収のリアル(ダイヤモンド社)
津下本 耕太郎
株式会社コラーニング 代表取締役社長
株式会社シンクロ CPO / 事業開発部 部長
2004年上智大学理工学部卒業。システムエンジニアからキャリアをスタート。
2007年にアライドアーキテクツ株式会社に参画。
SNS支援事業やモニプラなど各種事業を立ち上げる。2012年より取締役。2013年に全社の8割の売上を統括し、東証マザーズに上場。
2019年、株式会社シンクロに新規事業「コラーニング」の事業部長として参画。
2020年8月、株式会社コラーニングを設立。