―― まずは、鎌倉商工会議所のお取り組みや事業について教えてください。
波多辺さん:
我々は個々の会社やお店を支援する「個社支援」と、地域経済全体を活性化させる「面的支援」の2つを軸に、サービスを展開しています。
「個社支援」とは、鎌倉市内の中小企業・小規模事業者に対して売上・利益向上と資金繰りなどの経営支援を行うことです。これには、これから創業される方のご相談対応も含まれます。こういった「個社支援」を重ねることで、地域経済全体の活性化にも繋げています。
津下本:
様々な活動をされていらっしゃるんですね。お取り組みにおける具体的な事例をご紹介頂けますか?
波多辺さん:
実際に行った取り組みの一つが、「キャッシュレス決済の導入」です。
2022年に、鎌倉市内の小売店にキャッシュレス決済の端末を無償で提供しました。インバウンド対策を含めて、観光を中心事業とする鎌倉にとっては重要な施策だと認識していたためです。約1,000店舗に端末を提供し、QRやクレジットカードなど、あらゆるキャッシュレス決済に対応できる環境を作りました。
それと同時に、期間限定のキャンペーンとしてキャッシュレス決済(QRコード決済)を利用してくださったお客様には、平日で最大20%、休日は最大10%をその場で割引する施策も実施しました。これは鎌倉市の補助金を活用した施策です。10億円程度の経済効果を見込んでいたところ、なんと13億円を超える予想を上回る効果を出すことができました。観光地ですので、ポイント還元ではなくその場で割引できることにこだわったという点も大きかったのかもしれません。これだけの利用があると、事業者の方々もキャッシュレス決済に馴染みやすかったようで、施策が形骸化せずにしっかりと運用に載せることができた良い事例にもなりました。
津下本:
かなりの経済インパクトですね。鎌倉はたくさんのお店があると思いますが、今回端末を導入したのは商工会議所の会員企業の方々だったのでしょうか。
波多辺さん:
端末は、会員企業に限らず鎌倉の中心部である商店街の店舗を中心に配布しました。まずはお客様がたくさん来てくださる場所での効果を検証したかったのと、こういった施策をきっかけにまだ商工会議所に加入されていない企業の加入を促進したかったという狙いもあります。
津下本:
そうなんですね。まさにコロナが一段落した最近の環境ですと、鎌倉にも再びたくさんのお客様がいらしていますよね。そうなると、キャッシュレス決済端末の浸透は、より一層”効いてくる”状況なのでしょうか。
波多辺さん:
はい、まさに大きな効果を期待できる状況だと考えています。鎌倉に多くの国内外のお客様がお見えになられています。2022年に行ったこの施策が、ここからまた鎌倉の一層の発展を牽引していくのではないかと期待しています。
そして、このような事業者のみなさまを支援できるような施策を次々と打ち出していくのが我々の役割であると考えております。
―― 続いて、波多辺さんがお考えになる鎌倉商工会議所のあるべき姿について教えてください。
波多辺さん:
まずは、『地元企業を支援する』姿勢です。
商工会議所に相談する価値を感じて頂き、企業としての成果を挙げていただくことが大事です。さらには商工会議所に入会いただけるよう、寄り添った支援をご提供しています。
もう一つは、「鎌倉発で日本全国に届ける」ことです。
我々が関わる鎌倉を起点に、新たな価値を届けることで、地域に閉じずに日本全国に波を起こしていきたいと考えています。後述するグロースXとの業務連携も、その一つになると考えています。
津下本:
鎌倉を起点に、日本全国を見据えた取り組みをされていらっしゃるんですね。その中で、マーケティング人材の育成に取り組まれたのには、何かきっかけがあるのでしょうか。
波多辺さん:
きっかけは、主に経営支援にあたる経営指導員のマーケティングスキルを引き上げ、業績向上支援をするためのスキル向上が課題になっていたためです。
平成26(2014)年の小規模事業者支援法の一部改正で、商工会議所が小規模事業者の経営戦略に踏み込んだ支援を実施する「経営発達支援計画」を推進することになりました。これをきっかけに、商工会議所による「業績向上支援」に対する国からの期待は年々高まっておりました。
その中で、新型コロナの影響で、鎌倉においても多くの中小企業・小規模事業者が経営に大きな打撃を受ける結果となり、「売上・利益を回復させたい、伸ばしたい」というご相談が非常に多くなりました。
商工会議所においても、以前から経営支援の一環として業績向上支援は行って参りましたが、お悩みを抱えた事業者の方々により良いアドバイスを差し上げることで業績向上に貢献したいと考えて、当所内のマーケティング人材育成の取り組みを強化することになりました。
取り組みにより、特に実際の経営支援にあたる経営指導員がメンタル・スキルの両面で自信をもって「業績向上支援」をし、事業者さんに助言できる環境を整えることができました。これが、鎌倉で業績向上に悩みを持つ事業者さんを、できるだけ多く救うことにも繋がっていくと考えています。
今回取り組んだマーケティング人材育成こそが、当所にとっての大きな一歩だったと感じています。
―― グロースXを選定した理由について教えてください
津下本:
このタイミングだからこそ、貴所のみなさんがマーケティングを学ぶ必要性があったんですね。様々な研修がある中、グロースXを選定頂いた理由について教えて頂けますか?
波多辺さん:
学習サービスを選定する際に一番重要視したのは、「マーケティングを体系的・網羅的に学べるか」という点です。それを叶えられるのがグロースXだと感じました。
近年は、これまでのマーケティングに加えて、SNSの活用やECなどのデジタルマーケティングの重要性が高まっています。ここまで幅広い領域をカバーするのは、なかなか大変ですよね。セミナーや書籍等によって断片的にかじった知識だけをインプットしてしまうと、経営支援におけるアドバイス等で自分が知っている分野に引き込んでしまい、支援の「部分最適化」が発生する危険も高まります。
そのため、事業者さんの悩みに対して、事業全体を俯瞰して「全体最適」となるアドバイスができるように、マーケティングを体系的・網羅的に学べるグロースXマーケティング編の導入を決めました。
津下本:
導入頂いて、実感されている効果がありましたら教えてください。
波多辺さん:
組織に、正しい「共通認識」が広がったことでしょうか。
どのような商売であっても、新規客を追い続けるだけではなくリピート頂けるお客様をどのように創出していくかを考えることが、商売の安定性を築くために非常に重要です。これまではそういった考え方について議論したり共有することもありませんでしたが、学習を通してそういった共通認識が組織内でとても強くなりました。
また、学習コンテンツは期待どおりに体系的・網羅的に整理されていたので、マーケティングの全体感を把握したうえで、個別のテーマをインプットできました。特定の分野に偏ることなく、マーケティング全体のベーススキルが身につけられた点が非常に良かったです。
あと、学習を進めていくと、管理者として「どう対応したらいいかな?」という悩みが出てくる場面もあるのですが、グロースXのカスタマーサクセス担当の方が、他社のケースの話を含めてどう対応していけばいいかについてもアドバイスをいただけたので、とても心強かったです。
津下本:
継続的な学習習慣をつけるためには、管理者の方へのサポートも大切ですよね。カスタマーサクセス(利用者に成功をしてもらうためのグロースXのサポート担当)からお伝えした情報がお役に立てたようでよかったです。
ちなみに、受講者の方からはどういったお声がありましたでしょうか。
波多辺さん:
理解しやすく、続けやすいアプリだったことがとても好評でした。
LINEのようなチャット形式で会社の先輩・後輩の会話に目を通していくと、マーケティングについて学べるようになっているので、とても理解がしやすかったそうです。アンケート、理解度を確認するテスト(クイズ)といった双方向のやり取りで学習内容を定着させやすいことに加えて、「ちょっとここは後で見返したい」という部分をクリップして復習しやすくなっているところも助かりました。
このような学習を細切れのスキマ時間を活用して気軽に学習できたので、そこも良かったと感じている点です。
津下本:
この4月に鎌倉商工会議所とグロースXとの「販売パートナー」としての業務提携を発表させて頂きました。
*参考記事:グロースX、鎌倉商工会議所と「販売パートナー制度」契約を締結し、鎌倉市の中小企業活性化の支援を開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000063830.html
今回の業務提携に対する、狙いや想いについて教えてください。
波多辺さん:
当所が経営支援を行っている現場の感覚としては、良い商品・サービスは持っているものの、マーケティングの取り組みに課題があり、いま一歩業績を伸ばしきれていない事業者さんも少なくないと感じております。
鎌倉と聞くと観光がすぐに頭に浮かぶかと思います。もちろん観光に関係する事業を営まれている方もいれば、またそうでない方もいらっしゃいます。
今回の業務提携のキャッチフレーズにもなっておりますが、「マーケティングの力で鎌倉を元気に!」が示しているとおり、鎌倉の事業者さんにグロースXさんのサービスを活用していただくことで、事業者さんの中でマーケティング人材の育成を進め、その結果として業績向上につなげていただきたい、そんな想いを持っています。
津下本:
鎌倉商工会議所をハブとして鎌倉のみなさんがグロースXを活用したマーケティング知識を身につけることで、地域全体の成長を期待されていらっしゃるんですね。
波多辺さん:
書籍・セミナー・他社のサービス等では、どうしても断片的な知識のインプットになってしまいがちです。しかし、グロースXではマーケティングの全体感把握から始まり、マーケティングの考え方や知識を網羅的に学習できるので、課題への打ち手を考えるためのベーススキルが体系的に身につきます。
グロースXのサービスを導入された事業者さんは、このようなベーススキルを獲得した人材を組織内に保有できることから、中長期的な業績向上につなげていただくことが可能になると考えております。
我々がすでにグロースXを活用することでマーケティング知識を身につける効果を実感していますので、ぜひその効果を幅広くご紹介していきたいですね。
これをきっかけに、鎌倉はもちろん、日本全国の事業成長のきっかけになることを望んでおります。
(インタビューご協力:鎌倉商工会議所 様)