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グロースXの学びをプロジェクトで実践したら、 目標予算は100%を軽く超えて、メンバーのモチベーションは高まり、社長賞も受賞した話

作成者: 管理者|2023.5.23

勘と経験の世界から、言語化とデータ化の世界へ

―― プレジャーキャストに出向してから今まで、グロースXでの学びを実践して来られたとお聞きしました。現場にはどんな問題があったのでしょうか?

「言語化」と「データ化」です。例えば「言語化」ですが、自分たちの提供するサービスの価値を正確に伝えることが必要だと思ったのです。というのも、社内のメンバーに自社の強みを聞いてまわると、一人ひとりが自分なりの思いを伝えてくれるものの、共通言語化された言葉はありませんでした。

キャラクターを心底大事に思うメンバーが多くいまして、この大事なキャラクターをどんな風に届けたいか、それぞれが思い描いています。その強い気持ちが自然とひとつになって、今までやってくることができた。以心伝心なんです。ただ、新しい業態を作って周知するとなると、明確に言語化が出来ていなければ、魅力を正確に伝えることは出来ません。まずはこの「言語化」に取り組む必要があると感じました。

「データ化」については、デジタル活用が後手に回っていました。プロモーションは打ってはいるものの、実際にどういう効果を及ぼしたのかを把握していない状況だったので、ここも間違いなくテコ入れが必要だと考えました。

―― 実際にどんなことを実践したのか教えてください。

プレジャーキャストは「親子のしあわせな時間を、最高の未来へつなぐ。」をミッションとして、親子が一緒に楽しめるエンターテインメントを追求している会社です。一般の方々にはゲームセンター運営の印象が強く、親会社であるバンダイナムコアミューズメントとの違いが分かりにくかったと思います。

しかし、「親子一緒に」というキーワードにより、両社は明らかに別の会社になりました。この「親子一緒に」を中心に据えて新たな業態を立ち上げる中で、グロースXの学びを存分に活かせたと思うので、それをお話ししたいと思います。

プレジャーキャストは、きかんしゃトーマスの屋内型テーマパーク「トーマスタウン」や、クレヨンしんちゃんのインドアプレイグランド施設「オラのあそべるゆめぱ〜く」など、ショッピングセンター内にあるエンターテインメント施設を企画・運営しています。2022年11月には、0〜2歳児向けのベストセラーかつロングセラー絵本「しましまぐるぐる」をモチーフにした遊び場「しまぐるランド」をオープンしたのですが、学びのステップをそのまま実例に当てはめていくような感覚でした。

まず、しまぐるランドに来て楽しんでくれる人は誰か。全員で、ターゲット像をとことん明確にすることから始めました。具体的には、どんな大学を出ていて、収入は幾らか、休日はどんな風に過ごしているのか。かなり細かくイメージしましたが、施設に来てくれるかどうかの意思決定者は、30歳のお母さんとしました。

しましまぐるぐるの絵本に親しみがあり、あの世界の中に飛び込めるなら飛び込んでみたいと考えている。そして、安心安全な環境で子どもを遊ばせるだけでなく、自分自身もリラックスしたいだろうと想定しました。ちなみに、実際にオープンして分かったことは、メインのお客様は31歳のお母さんだったのです。事前のターゲット像設定は、ほぼ当たっていました。

プレジャーキャスト 事業企画部 プロデューサー 市川さん

ちなみに、「親子のしあわせな時間を、最高の未来へつなぐ。」をミッションとする自分たちにとって、「しまぐるランドを何歳まで利用可能な施設にするか?」は、かなりの大激論になりました。

「0〜2歳では対象が狭すぎて、成立しない。3歳までを対象としたい」という意見もかなりありましたが、2歳までと3歳では活動レベルがあまりに違い、3歳児が居る環境に対してお母さんたちは間違いなく警戒します。「安心安全な環境で子どもを遊ばせながら、自分自身もリラックスしたい」と考えているお母さんをターゲットとしたのだから、忠実にいこうということで、対象は2歳児までと決着した経緯もありました。

更に、サービスインする5ヶ月ほど前にターゲットユーザー1600名に、しまぐるランドのコンセプトなどをお見せして「利用したいと思うか?」というアンケートを実施しました。その結果、非常に高い関心と期待があることが分かりました。

その上で「どこのポイントを押さえれば、お客様が安心してお店に来てくれるのかを考えるのに大事だ」という説明をした上で、カスタマージャーニーマップを作りました。しまぐるランドを認知して、興味を覚え、他施設との違いを検討し、利用決定の上来店し体験して、評価をした上でリピートにつながるという一連の流れですね。

ファシリテーションさえすれば活発な議論が交わされる会社なので、私がファシリテーターを担当して、良いカスタマージャーニーマップが完成しました。

このタイミングで、どこに課題がありそうかも同時に整理しました。「プロモーション」が課題になりそうだという意見で一致し、集中的に課題に取り組もうという機運が作れたことも良かったです。

チームで作成した「しまぐるランド」のカスタマージャーニーマップ(※画像は加工しています)

―― 2つの課題のうちの「データ化」ともつながりそうですが、プロモーションに関わることではどんな施策を行ったのですか?

LINE公式アカウントを作りました。私も経験がなかったので、グロースXさんのコンテンツを見返しながら、公式アカウントのサービスインまでは半ば強引に自力で。その後の友達登録のお礼やポイントカードについては、みんなに相談しながら進めました。

サービスインまでは自力で行ったのには理由がありました。ゲームセンター運営でLINE公式アカウントに挑戦したことがあったけれども、クーポンを獲得したらブロックされてしまうという経験が尾を引いており、その経験を踏まえて、より良いものにしたかったのです。

「リピートしたい気持ちを後押しするような設計にしよう」とみんなで知恵を絞りました。すると、あっという間にしまぐるランドの友達は4000近くになりました。会員カードの登録率は96%と、ちょっと信じられないような驚異的な数字で、ブロック数も100くらいで止まっています。

「しまぐるランド」の公式LINE

そして、これまでと違って最も大きなことは、この4000名ほどのお友達、つまりリピーター予備軍の方々といつでもコンタクトできる土台が作られたということでした。「アンケートに答えてくれたらお誕生日クーポンを差し上げます」と告知すると気持ちよく皆さんが返信してくれる。

先ほど、ターゲットを考えた結果「30歳のお母さん」になったが、実際は31歳でほぼ誤差だった…というお話をしましたが、その顧客データはこのアンケートから分かったことです。お母さんとお子さんの年齢がわかるし、しまぐるランドを知った経緯や、しまぐるランドが出店しているららぽーとにはどれくらいの頻度で来ているかなど、とにかくもの凄い量と質のデータを入手することになりました。膨大なデータを分析して整理してみんなに共有したところ、「このやり方で良かったんだ」と急にコンセンサスが取れた感覚がありました。

―― 大成功でしたね。ただ、失敗する可能性はゼロではなかったはず。挑戦する際、怖くはなかったのですか?

グロースXさんで、LINE公式アカウントは上手く活用すればプロモーションに必ず役立つと学んでいたので、そこは自信を持って先走りました(笑)。結果、成功してほっとしています。

 

成功体験で自信をつけたメンバーが、新たなチャレンジを行う

―― 「価値の言語化」「ターゲティング」「カスタマージャーニーマップ作成」「LINE公式アカウント開設」など、グロースXでの学びが存分に活かされたプロジェクトを展開されてきたことが分かりました。プレジャーキャストのメンバーの皆さんも、成功を通じて自信がついたのではないでしょうか。

勘と経験でも上手く成功したこれまでとは違って、再現性のある成功を得た、とでも言うのでしょうか。具体的には、事前に店舗のコンセプト・ターゲット・来客やサービスへの反応、事前に皆で様々な想定をして始まったことが、蓋を開けたら、その通りの店舗が出来て、実際に想定通りの反応が起きた。これはすごく大きなことです。

目標予算も100%を軽く超えて、売り上げも絶好調、LINEを通じたお客様の声も毎日のように寄せられます。例えば「安心できる施設を作ってくださってありがとうございます」とか「スタッフの方の接客が気持ちよくて心地よく過ごせました」といった声です。定量的にも定性的にも明らかに上手くいっていることが分かり、メンバー一人ひとりのモチベーションは日に日に高まって行きました。ただ、メンバーの機運が高まっても、売り上げや実績に繋がらなければ「やって良かった、やってきたことは正しかったね」とはなりませんよね。

しまぐるランドにおいては、結果も出たことで自信までついたという最高の結果になりました。更にこのプロジェクトは、2022年度のバンダイナムコグループのアミューズメントカテゴリーの会社におけるユニット表彰を受け、プレジャーキャストの社長賞も受賞しました。メンバー13名のモチベーションは益々高まっていて、「しまぐるランドだけでなく、トーマスタウンなどの他の店舗でもLINEを活用してみよう」など、良い動きが幾つも出てきています。

また、全員がその意義を実感しているからこそ、グロースXで学んで知ったF2転換率(購入頻度が2回になるユーザーの割合)が来期のKPIになりました。全員がF2転換率を高めることへ集中できる、このパワーはすごいですよ。これまでは私が主導でという場面が多かったのですが、成功体験を得たメンバーが主体となった新しい挑戦が始まることが楽しみです。

 

(インタビューご協力:株式会社プレジャーキャスト 様)