株式会社パルコデジタルマーケティング様 導入事例インタビュー
【前編】メンバー一人ひとりの持ち味を活かすには、組織全体のスキルの底上げが不可欠 ☆この記事
【後編】事業領域を拡大中のデジタルマーケティング支援会社が、12カ月間のマーケティング学習で得た成果とは
―― パルコデジタルマーケティングとはどのような企業なのでしょうか。
市川さん:当社は、PARCOの販促部門発の社内ベンチャーとして2000年にスタートした企業です。PARCOのダイレクトメールやメールマガジンの配信業務から始まり、今年で22年目を迎えました。
2019年1月、商業施設(SC)運営に必要な「労務軽減」と「販促強化」の2つの機能を一体化したオリジナルCMS「PICTONA(ピクトナ)」を開発したことをきっかけに、PARCO以外のSC・専門店にも取引先が広がりました。日本国内には約3200のSCがありますが、実に400にのぼる施設に、当社のサービスを何らかの形でご利用いただいています。
「働き方を変えるデジタル」と「独自の魅力を高めるデジタル」の両面から、SCのデジタル活用をお手伝いしており、現在は営業構成比の6割以上をPARCO以外のお客さまが占めています。
さらに近年は、住宅業界や教育機関などSC・専門店以外にもビジネス領域を広げています。
―― PARCOグループに限らず、また業種業態を問わず、ソリューションを提供するデジタルマーケティング支援会社へと成長されているのですね。デジタルマーケティング支援を行っているチームの特徴を教えてください。
市川さん:当社は新卒採用を行っておらず、特に5~6年前までは即戦力メンバーを中心に中途採用を行ってきました。
その結果、プロフェッショナル集団をつくることはできたものの、一方で問題も多く抱えるようになりました。まず、社内に知識・ノウハウが蓄積されにくい。また「成果さえ出せばいい」という考えに傾倒し、個人最適・部分最適に陥りやすい。会社全体として何を目指すのかという視点が生まれにくく、長期的な成果を追いかけることに意識が向きにくい。それが常態化してしまったのです。
そこで、近年は若手のポテンシャル人材の採用を積極的に行うようになりました。
主な採用基準は2つ。1つはデジタルに抵抗がなく、新しいテクノロジーやツールにも興味・関心を持てること。もう1つは、「オンライン/オフラインを問わずショッピングをするのが好き」「SCや専門店に行くのが好き」という消費者マインドを持っていることです。
廣瀬さん:両方の要素を持っているのが一番ですが、デジタルの知識・スキルは後から身につけられるので、どちらかと言えば消費者マインドを持っていることを重視しています。
それもあってか、「SCや専門店が元気になるお手伝いがしたい」という思いを持った、小売り業界出身のメンバーが多く入社しています。
―― 組織づくりにおいて、どのようなことに力を入れていますか。
市川さん:2年ほど前から人事制度の刷新を進めています。もともとはPARCOの制度を踏襲していたのですが、担当業務の転換・拡大やキャリアアップなど、メンバーがより積極的にチャレンジしやすいように制度を見直しています。
新しい制度を通じて、部門を超えたつながりや全社視点を持てる組織をつくることを目指したいと考えています。先ほどお話しした、「個人最適・部門最適に陥っていた」という過去の反省を踏まえてのことです。
廣瀬さん:メンバー一人ひとりの「その人らしさ」を大切にしたいので、普段の組織運営においては、「指示したことを遂行してもらう」のではなく「自分で自由に考えてやってもらう」ことを重視しています。
その結果、一人ひとりのメンバーがお客さまから「またこの人と一緒に仕事がしたい」と思ってもらえるような、個が生き生きとした会社にしたいと考えているんです
―― パルコデジタルマーケティングが目指す「理想の組織像」を教えてください。
市川さん:会社と社員は、お互いが引きつけ合う、対等な関係性でありたいと思っています。今は“会社が一生面倒を見てくれる”という時代ではありません。価値観を共有し、「社員がその価値観に基づいて行動することで、事業が自然と成長していく」という関係が理想です。
人材という観点では、メンバー全員がそれぞれ自分の得意な領域を究め、自分の力を最大限に発揮できる組織でありたいと思っています。
多くの会社には、一般社員からリーダーになり、マネージャーになり…という「キャリアの階段」がありますが、もちろんすべての人がマネージャーになりたいわけではありません。マネジメントが得意な人もいれば、特定の技術に長けている人もいるし、戦略を立てるのが得意な人がいれば、お客さまと良好な関係を築くのが得意な人もいます。一人ひとりに、持ち味があるわけです。
先ほど廣瀬もお話ししたとおり、そういった多様な人たちが自分の持ち味を生かしながら組織に貢献できる状態をつくりたいと考えています。ですから、管理職を頂点としたピラミッド型の組織ではなく、一人ひとりがリーダーシップを持つ「フラット型」に近い、緩やかな階層の組織にしたいと考えています。
―― その理想と、現状の間にはどのようなギャップがありますか。
市川さん:そうした組織をつくるには、ある程度時間がかかると思っています。
というのも、自由や権限にはどうしても責任が伴いますので、メンバーは今よりももっと自分で考えて行動しなければならない範囲が大きくなります。それができるようになるには、知識・スキルのレベルを組織全体で底上げしていく必要があると考えています。
とはいえ、必要なレベルに到達するために何を身につけたらいいのかが分からない人もいると思います。自分で学ぶべきことを選び、自立して学んでいくのが望ましい姿ではありますが、言うは易しで、非常に難しいことだと思うんです。
ですから、会社として提供できる学び・スキル向上の選択肢を、もう少し整理して提示したいと考えています。
―― より高い成果をあげるチームをつくるために、必要なことは何でしょうか。
市川さん:メンバー同士、お互いの仕事が見えることが大事なのではないかと考えています。一人ひとりが何をやっているのかが分かれば、迷ったときや壁にぶつかったときに、誰に相談すればいいかがわかります。
会社から指示されたとおりにやる。自助努力だけでやる。そうではなく、組織の中で互いに助け合いながら伸びていく状態がつくれれば、仕事を通じてより一層、やりがいや自己肯定感を得ることができるのではないかと考えています。
廣瀬さん:まわりに「自分と一緒になって考えてくれる人、助けてくれる人がいる」というのはとても心強く、一人ひとりのチャレンジを後押しするために必要な環境だと思います。
市川さん:コロナ禍を経て、「ショッピングをすること」や「リアルな場を訪れること」は、人々にとってますます特別な体験になりつつあります。
リアルな場の豊かな体験づくりを支える企業として、求められる成果はより大きく、それを達成するために必要なスキルはより高度になっていくはずです。
互いに連携し、一緒になって大きな成果を目指していける人材・組織を実現していきたいと考えています。